191話─創命の猛威!
ローブの下から現れたのは、身体の各部が露出した白いレオタード。わざわざ露出を増やしているのに相応しい、豊満な肉体を見せ付ける……が、ユウは動じない。
「あら、てっきり顔を赤くすると思ったのだけれど。坊やにはまだ早かったかしら?」
『ふふふ、残念でしたね。そのくらいは……まあ、その……たまにブリギットお姉ちゃんが悪ノリで着るので見慣れました』
『……ああ、奴は度々やらかすな。その度にシャーロットにシバかれているのを見る。懲りない奴だ』
誘惑して動揺を誘おうとしたルネーアであったが、反応が薄かったのを見て別方向への挑発に切り替える。軽く流そうとするも、ユウは恥ずかしい過去を思い出しどこか遠い目をすることに。
「気を緩めたわね? なら一撃で仕留めてあげる。メタルローズスタンプ!」
『っと、そんなのは食らいませんよ! バレットレイン!』
一瞬の油断を突き、ルネーアは指輪の力で創り出した薔薇の槌を振るう。自身の魔力でコーティングし、金属のような頑強さを付与した一撃を放つ。
が、ユウは軽く身をひるがえし攻撃を避けてみせた。お返しとばかりに、ブレイクマガジンの魔力を満たした弾丸を文字通り雨あられと連射する。
「あらあら、とんでもない量の弾丸ねえ。お姉さん、全部避けられるかしら」
『避ける必要はありませんよ、そのままやられてください!』
「そういうわけにはいかないのよねえ。坊やの持つ指輪、回収しないといけないもの。そーれ、シープエスケープ!」
『ひ、羊!?』
『生命体を自在に創り出す……かなり厄介な能力だな。長期戦になると何を仕出かしてくるか分からん、早めにケリをつけた方がいいだろう』
膨大な魔力にものを言わせ、数十発の弾丸を降り注がせるユウ。対するルネーアの方はというと、無数の羊を創造して盾にすることで攻撃を無傷で凌いでみせた。
植物だけでなく、高度な生命体をも創り出せる。改めて創命神の指輪の持つ力の強大さと恐ろしさを痛感し、早急に戦いに決着をつけるべきだとヴィトラが進言する。
『そうですね、今みたいに動物を大量に創造して攻勢に回られたら……』
「今度はお姉さんの番よ? デスハニーシャワー!」
『考えてる暇はなし、ですか。なら、こうするまでです! チェンジ!』
【ブロックモード】
『インビジブルキューブ! まずは守りを固めさせてもらいます!』
ユウも同意し、さらに攻撃を続けようとする……が。そうはさせないとばかりに、相手が反撃をしてくる。大量のハチを創造し、けしかけてきたのだ。
いくら魔神といえど、一斉にハチに刺されればまともに身動き出来なくなってしまう。ユウはマガジンを素早く取り替え、箱型の防御壁で身を守る。
『これでハチ共の攻撃は防げるが……。全くもって厄介極まりない、奴め……完全に指輪の力を使いこなしている。連中も準備を進めてきたというわけか……』
『そのようですね、この分だとプラウダー含む残りの五人も……? あれ、こんなところにモグラ……まさか!?』
「ご明察~、そのモグラちゃんはね……坊やを吹っ飛ばすための駒よ! プチ・モールボム!」
ひとまずはこれで安心、と思ったのも束の間。唯一防御壁でブロックされていない地中を通って、一匹のモグラが顔を出す。ユウが気付いた直後。
モグラが自爆し、小規模ながらも凄まじい破壊力の爆発が発生する。ハチの群れはそちらへ意識を向けさせるためのフェイク。本命はこちらだったのだ。
ハチの攻撃から身を守るために防御壁を展開したのがアダとなり、逃げる間もなく爆風に呑まれるユウ。その様子を見て、ルネーアはしてやったりとばかりに笑う。
『う、ケホ、ゲホッ……。やってくれましたね、ボクが魔神じゃなかったら今ので死んでましたよ……』
『ユウ、大丈夫か!?』
『なんとか……。でも、これは再生に少し時間がかかりそうです』
「あら、再生なんてさせないわよ。このポータブル・アンチヴェルドコードで妨害させてもらうわ。うふふ、これでもう実質確保したようなものね~」
『チッ、ここで使ってくるか!』
ユウの首から下がほとんどミンチになり、もはや戦闘どころではない状態になってしまう。さらに悪いことに、ルネーアはペンダント型の対魔神弱体化兵器を呼び出してきた。
「作戦本部に連れて行って指輪を回収した後はお姉さんのペットにしてあげる。永遠に可愛がってあげるから楽しみに」
「させっかよ、この破廉恥女! タイタンズアッパー!」
「ぐうっ! ああ、すっかり忘れてたわ。もう一人雑魚がいたことを」
『チェルシーお姉ちゃん!』
『ギリギリ間に合ったか、奴め』
肉塊状態のユウを闇の球で包み、そのまま本拠地へ移送しようとするルネーア。そんな彼女の背後から、勇ましい叫び声が響き鉄鎚が振るわれる。
花兵士たちを全滅させたチェルシーが、間一髪でユウの救援に間に合ったのだ。すでにマジンフォンの力を使い、化身を済ませていた。
勝利を確信し、完全に油断していたルネーアの背中に気合いの一撃を叩き込んで遠く吹き飛ばし、少年のピンチを救う。
「わりぃ、ちっと遅れ……って、なんつう状態になってやがる!? クソッ、あのアバズレ……よくもユウをこんな目に! 待ってろ、すぐ治してやっからな!」
【1・8・2・4:ヒーリングメイル】
『ありがとう、チェルシーお姉ちゃん。あいつの持ってる小型アンチヴェルドコードのせいで、再生を封じられてしまって……』
『まさに危機一髪、と……後ろだ、暴れ牛が来るぞ!』
チェルシーはジャガーの爪で闇の球を引き裂き、捕まっていたユウを助け出しつつマジンフォンを押し当てる。ヒーリングメイルによって身体が再生するなか、ルネーアの逆襲が始まる。
「よくもわたしの背中に傷を付けてくれたわね! 坊やの前で挽き肉にしてあげる、クレイジーブルトレイン!」
「ハッ、たかが牛如きでよお。怒り狂ったジャガーに勝てるわけねえだろが! タイタンズホームラン! お返しだぜ、てめぇが餌食になりやがれ!」
「ぶもおおおおお!?」
「う、打ち返した!? でも残念、指輪の力を使えばいつでも創り出した生命体を消せるのよ」
自慢の身体に傷を付けられ、怒り心頭なルネーアはまずチェルシーを排除せんと暴れ牛をけしかける。が、ハンマーの一撃で逆に牛がルネーアのいる方へ吹っ飛ばされていく。
あっさりと返り討ちにされたことに驚きながらも、牛を消失させることで直撃を免れたルネーア。が、その直後彼女は気付く。すでに、チェルシーが避けられない距離まで接近していることに。
「!? お前、いつの間にここまで!?」
「ばぁか、まんまとかかったな! ムダにデカい牛なんざ寄越してくるからよ、隠れ蓑にして走り寄るのはラクショーだったぜ! ユウをミンチにしてくれやがったオトシマエ、つけさせてもらうぜ!」
【レボリューションブラッド】
チェルシーは驚愕するルネーアの土手っ腹に掌底を叩き込みつつ、尻尾でマジンフォンを操作する。そうして、相手に杭を打ち込みトドメを刺す準備を整えた。
「ぐ、あがっ! こ、こんな杭……!」
「もう遅ぇ、セットアップに入ったアタシの攻撃からは逃れられねえのさ。誰であろうとも! こいつでトドメだ! 奥義、タイタンズハンマー!」
クイッと人差し指を上に向けると、連動して杭が上を向く。体が仰け反ったルネーアに宣言した後、チェルシーは跳躍し身体を縦に一回転させる。
そうして、その勢いでハンマーを振り下ろし……杭で敵を貫いた。
「ぐ、う……! そんな、まさか……。このわたしが、大地の民如きにぃ……かはっ!」
「ヘッ、そうやって相手を侮る奴に一流はいねえんだぜ。ユウをズタボロにしやがったこと、あの世で反省しな!」
口から血を吐いた後、ルネーアは崩れ落ち動かなくなった。ハンマーを跳ね上げて肩に担ぎ、チェルシーは空いている手で拳を握り天高く突き上げる。
『やりましたね、チェルシーお姉ちゃん! 見事な勝利でしたよ!』
「へへ、言ったろ? この三ヶ月、遊んでたわけじゃねえ。闇の眷属どもに負けねえように鍛えてたってよ!」
勝利を喜ぶユウの方へ振り返り、ニカッと笑みを浮かべるのであった。




