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190話─刺客、強襲

 翌日、ユウは朝早くから大地のあちこちを忙しなく飛び回っていた。チェルシーたちから寄せられた情報を元に、敵がポータルを設置しそうな場所をチェックしているのだ。


『ここは何も無し、と。一応、ポータルを設置出来ないように妨害用の結界石を埋めておきますか』


『そうしておけ、少しでも敵軍の展開を阻んでおきたいからな』


『ええ、あっちこっちにいっぺんに出てこられると大変ですからね。リンカーナイツ相手とは勝手が違いますから、パラディオンなら無双! ともいきませんし』


 ヴィトラとそんな話をしつつ、敵が部隊を展開してくるだろう要所を先んじて潰して回る。実際、闇の眷属が相手だとリンカーナイツに属する異邦人のようにはいかない。


 マジンフォンに搭載された各種アプリは、基本的に異邦人を滅ぼすのに特化している。ゆえに、闇の眷属に対しては本領を発揮することが出来ないのだ。


『……気を付けておけ。連中にはマジンフォンを用いた魂の消滅は効かぬ。ま、そこまでやる意味もないがな』


『まあ、リンカーナイツに与する人たちみたいに輪廻転生してくるってわけでもないですからね。でも、切り札が一つなくなったような気分にはなりますね……』


『仕方あるまい、闇の眷属と異邦人では加護を与えた者の(ことわり)が違う。ネイシア如きでは完全なる魂の保護を施せぬ。故に、輪廻転生で茶を濁しているのだ』


 ユウたちがこれまで用いてきた、敵対者の魂を滅ぼす力……アブソリュート、あるいはレボリューションブラッド。その力は、闇の眷属には効果がない。


 奥義の威力を底上げしてくれはするが、魂を消滅させるには至らないのだ。もっとも、輪廻の加護を持たない闇の眷属相手にはさほどの問題にはならないが。


『さて、この辺りは……あ、あのマジンランナーは……』


「よー、ここにいたかユウ! 例の助っ人さんたちが到着したぜ、パラディオンギルドに戻って出迎えしようや」


『そうですね、チェルシーお姉ちゃん。無事に応援が来てくれるようで喜ばし』


「へーぇ、そりゃあいいことを聞いちゃったわねぇ。なら、援軍にお前たちの首を届けてあげましょう。うふふふふ」


 妨害工作が一段落したところに、ユウの魔力をたどってきたチェルシーがやって来る。すでに日は天頂へと昇り、昼飯時になっていた。


 キルトたちが到着したとのことで、彼らの出迎えをするため帰還……しようとしたところに、不気味な女の声が響く。ユウたちが声のした方を見ると……。


『その黒ローブ……お前、プラウダーの仲間ですね?』


「うふふふ、その通り。わたしはルネーア、創命神の指輪を奪った者。そして、その褒美に……指輪の力をフィービリア様に与えられた大魔公。お初にお目にかかるわ、ユウくん?」


「ケッ、気安くユウの名前読んでんじゃねーよ。ノコノコ一人で出張ってくるたぁ、よっぽど腕に自信があるか……あるいは自惚れた大バカかだな」


『気を抜くな、こやつから強大な生命の力を感じる。骨の折れそうな相手だ、構えろ』


 太陽の光を遮るように、不気味な影が浮かんでいた。プラウダーと同じ装束を纏った影が、少しずつ降下してくる。刺客が現れたと理解するのに、秒もかからない。


 ヴィトラの言葉に頷くより早く、先手必勝とばかりにユウはホルスターからファルダードアサルトを引き抜く。そして、素早くブレイクマガジンを装填し弾丸を放つ。


『手脚を撃ち抜いて無力化させてもらいます! 取っ捕まえて情報を吐かしてやるから覚悟しなさい!』


「うふふふ、可愛い顔に似合わず血気盛んだこと。でも残念、どんなに撃たれても……」


「オイ、マジかよあいつ! 撃たれた傷がみるみる塞がっていきやがるぞ!」


「ほら、こんな風に元通り。創命神の指輪から手に得た力……とぉっても素晴らしいでしょう?」


 放たれた四発の弾丸が、ルネーアの四肢を寸分違わず貫く。生け捕りにしようと目論んだユウだが、早くも試みが失敗することになってしまう。


 ルネーアわざと手脚だけ見えるようローブの一部を透過させ、傷があっという間に塞がって消える様を見せつけたのだ。一部始終を見たユウは、思わず舌を巻くことに。


『あまりにも早い……! あの再生速度、ボクなら全魔力を回さないと出来ない芸当ですよ』


『それを後付けで可能にするとはな。神々の指輪の力、侮れぬものだ。とはいえ、闇寧神の指輪ではないなら付け入る隙はあるはず。そうだろう、ユウ?』


『ええ、所詮再生能力だけなら息の根を止めてしまえば……』


「くっちゃべってる場合じゃないぜ、ユウ。奴が仕掛けてきやがるぞ、気を付けろ!」


「うふふふ、今度はわたしの番。見せてあげるわ、指輪の力を! 創命の魔力よ、大地に降り注ぎ芽吹け! あの可愛い坊やたちを無力化しなさい! エンター・ライフ!」


 ユウとヴィトラが話しているなか、ルネーアが動く。右手を真っ直ぐ上に伸ばし、頭上に大きな緑色の球を創り出す。直後、球が弾け光の粒が大地に降り注ぐ。


 すると、花々が芽吹くかのように地面に小さな盛り上がりが出来る。そこからひょっこり顔を見せたのは、可愛らしいお花……ではない。


「なんだこいつら、ちっこい花……の兵士かこりゃ」


『チッ、疑似生命体を創り出す力まであるのか。前言撤回、これは少し厳しくなりそうだな』


『うわっとと、この花兵士たちすばしこいですよ! 急所をやられないように気を付けてください!』


「キシャアアア!!」


 現れたのは、花の頭と無数の植物のつるが組み合わさった胴体を持つ小さな兵士たち。槍のように尖った手を伸ばし、十体一斉にユウたちに飛びかかってくる。


「オラッ、潰れな! ちょうどいいや、この三ヶ月……ユウたちの帰りを待つ間にやった修行で身に付けた技をよ。こいつらに叩き込んでやる! タイタンズスウィング!」


「ギキャアッ!」


『おお、纏めて四体薙ぎ払っちゃいました! よーし、ボクも負けてられ』


「あら、坊やの相手はわたしよ? さあ、二人でランデブーしましょう。そおれっ!」


 花兵士の突撃をかわした後、チェルシーは呼び出したハンマーを振り回し敵を一気に吹き飛ばす。ユウも反撃に出ようとするが、そこにルネーアが襲いかかる。


 急降下してユウの首を掴み、そのまま遠くへ連れ去っていく。チェルシーが追ってこれないよう、花兵士をさらに増員して足止めさせる徹底ぶりだ。


「ユウ! 待ってろ、こんな奴らすぐ全滅させて助けに行くからな!」


『くうっ、せめてこれだけでも! 【庇護者への恩寵】発動!』


『庇護者への恩寵を与えます。スタミナ及び俊敏性を大幅に向上させます。さらに疲労回復速度と効率を限界まで強化します』


「ありがとよ、ユウ! ちゃっちゃと片付けて……オラッ! そっちに行く! それまで持ちこたえてくれ!」


『案ずるな、ユウには我がいる。そうそう遅れは取らぬ、貴様はそやつらを討ち漏らすなよ!』


 ルネーアの万力のような握力から逃れようと抵抗しつつ、ユウはチェルシーに自身のチート能力による恩恵を与える。次々と地面から生えてくる花兵士を叩き潰しつつ、チェルシーは叫ぶ。


「うふふ、お仲間が追い付いてくることはないわよ? 私の中にある指輪の力が尽きぬ限り、いくらでも兵士を創造出来るもの」


『なら、どうにかして指輪の力を消してしまえばいいだけですね。終焉の力を使えば、それくらい……うぐっ!』


「させないわよ? 坊やはこのまま連行させてもらうわ。時空神の指輪を……くあっ!?」


『そうは……させません! こゃーん!』


 首を握る手に力を込め、抵抗を封じようとするルネーア。対するユウは負けじと相手の腹を蹴りつけ、強引に拘束を緩めることに成功した。


 地面に落ちるも、尻尾を広げてくるまることで衝撃を和らげる。遅れて落ちてきたルネーアはローブを脱ぎ去り、本気でユウを撃破せんと戦闘態勢を取る。


「あらあら、おイタはダメよ? 聞き分けのない子にはお仕置きをしなくちゃね。覚悟しなさい? お姉さんのお仕置きはとぉってもキツイわよ」


『ハッ、仕置けるものならやってみるがよいわ。ちょうどいい、ユウよ。貴様が継いだ破壊の力、神々の指輪相手にどこまで有効か試してみるといい』


『ええ、そうしましょう。ついでに、相手を倒して指輪の力をどうやって手に入れたか聞き出すとしましょうか。プラウダーにはやれませんでしたからね』


 ユウとルネーア、二人の戦いが始まる。

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自称お姉さん呼びの敵幹部か(゜o゜; 半端な年上気取りは只の年増だぞ(ʘᗩʘ’)
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