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185話─強襲する因縁

『こっちの方から……おっと! もう、ちょっと気を抜くと吹き飛ばされそうになりますね。嫌になってきましたよ、ボク』


「時空の狭間は、今みたいに異空間へ飛ばされる突風が吹くことがあるの。ま、鎖で繋がってるから問題はないわ。うふふ」


 ロードの外に出てから、小一時間が経過した。今のところ、ユウたちは特にトラブルなく指輪目指して先へ進めている。……が、順調な旅に終わりの時が来てしまう。


『! この気配……気を付けろ、ユウ。どうやら奴が直々にお出ましのようだ。フン、手駒が全滅してからようやくか。のんきなものだ』


『奴って……まさか』


「そう、そのまさかだ。久しいな、魔魂片ヴィトラよ。新たな器の心地はどうだ?」


『お前が輪廻星のネイシア……!』


 ヴィトラが怪しい気配の接近に気付き、警告した直後。時空の壁を切り裂き、真紅のドレスアーマーに身を包んだ一人の女がその姿を現した。


 ウォーカーの一族、その最高幹部たる渡りの六魔星が一人……【輪廻星】ネイシア。ユウにとって、全ての始まりとなる因縁の敵が襲来したのだ。


「そうだ、ユウよ。と言っても、わらわは本体の五分の一の力しか持たぬ分身。モロクの部下から連絡を受け、貴様をうば」


「ほいっ、トマホークシュート!」


 威圧感を放ちながらユウを睨み付けるネイシアに向かって、ブリギットは召喚した斧を全力でブン投げる。突然の行動に一瞬固まるも、ネイシアは飛んできた斧を避けた。


 一方、ユウたち四人はブリギットの突拍子もない行動に唖然としていた。ヴィトラですらもツッコめないあたり、あまりにも予想外過ぎたのだろう。


「ぬうっ!? 貴様、わらわの話を遮るでないわ!」


「っさいデスね、ゆーゆーの敵ダト分かった以上ボサッとしてる方がマヌケなんデス! そのドタマ、カチ割ってやるから覚悟するデスよ!」


「あらあら、随分と過激な……」


「だな。いきなり得物ブン投げるたあヤンチャしてんなあ、おい」


 リンカーナイツ誕生の元凶、さらにはユウを付け狙う者が現れた……。とあっては、黙って見ていることが出来ないのがブリギットという女。


 頭上に二本のトマホークを掲げ、いつかの時のように敵対者を威嚇し始める。前進しようとする彼女を抑えるため、イゼリアが鎖を引っ張る姿は完全にヤンチャな犬と飼い主のソレだった。


「フン、まあよい。貴様如き下郎に興味なぞない、わらわが用があるのは……貴様だ、ユウ。そして魔魂片ヴィトラよ」


『ハッ、今更ノコノコ現れて何を言うつもりだ? 手駒を全滅させられたことへの恨み節か? それとも泣き言か? ん?』


「一度だけ通告しよう。魔魂片ヴィトラよ、貴様にあのお方より託された力を与える。それを使い、ユウの肉体を奪って我が元へ参じよ。それが貴様の本来の役目であろう」


 ひっきりなしに飛んでくるトマホークがいい加減鬱陶しくなったのか、あるいはユウやゾルネストたちの加勢を危惧したか。ネイシアは結界を二つ発生させ、自分とユウたちそれぞれを内部に閉じ込める。


 そうして攻撃を遮断しつつ、ネイシアはユウ……正確には少年の体内にいるヴィトラに命令した。ユウの肉体を奪い、当初の計画を完遂せよ、と。


『なんだ、くだらぬ。今の我はもう、かつてフィニスだった頃の怒りも憎悪も……悲しみも全て癒え、消えた身。その代わりに我は得たのだ、穏やかな日々をな』


「そうデスそうデス! 今はもううぃーうぃーはワタシたちの仲間なんデス! 今更悪の道になんて戻りまセン!」


『二人の言う通りですよ、ネイシア。そんな命令にはいそうですかと従うわけないでしょう、今のヴィトラが。さては何も見ずに引きこもっていましたね?』


「……なるほど、わらわに従うつもりはないということか。ならばもうよい、あのお方より賜りし力は()()()()()()()に使うとしよう」


 ネイシアに対して、ヴィトラは真っ向からノーを突き付けた。それに同調したブリギットとユウが相手を煽るなか、ネイシアの口から不穏な言葉が発せられる。


 部外者であるがゆえに、これまで静観していた精霊夫婦は流石に見過ごせなかったようで、互いの顔を見合わせる。不穏なものを感じ取ったようで、表情は険しい。


『もう一人の候補? 一体なんのことです?』


「おいおい、まさかとは思うがよ。道中でボウズから聞いた、フィニス再臨計画とやらをまだやるつもりか? お前はよ」


「そうとも、わらわは諦めぬ。あのお方より賜りし魔魂片に寝返られるという失態を演じ、大目玉を食らった……だが。わらわは最後のチャンスを与えられたのよ。ホホホホ」


 ネイシアの本来の計画は、フィニス復活の器として見定めたユウにヴィトラを憑依させて肉体を奪い。少年が持つ強大な魂の力を以て終焉の者フィニスをよみがえらせるというものだった。


 だが、北条魔夜との戦いにおいてヴィトラが義憤に駆られ、それをきっかけとしてユウたちと和解。その結果、ネイシアの計画は崩壊した……はずだった。


『そうか、貴様我と別個体の魔魂片を下賜されたな? そいつを使い、我にやらせようとしたことを性懲りもなく行うつもりか』


「つもり、ではない。すでに実行しておる最中よ、この場に分身を送りながらな! わらわの元に戻らぬのならば、始末してよいとあのお方に許可は貰っておる。ここで消えよ、裏切り者よ!」


 どうやら、ネイシアは主に計画の失敗を激怒されながらも最後のチャンスとして二つ目の魔魂片を与えられたらしい。それを使い、今度こそおぞましい計画を完遂するつもりでいるのだ。


『実行している? まさか、ボク以外の器を確保したというのですか!?』


「ああ、そうだとも。テラ=アゾスタルをくまなく探した結果、ようやく見つけてな。今度は忌々しい神共に出し抜かれぬよう、即座に確保してやったわ。今、わらわの本体が自我を徹底的に破壊しておる。ホホホホホ」


「なんて悪辣な……あなたに人の心はないの!?」


「くだらぬ、そんなものないわ! 精霊騎士(ベクターナイト)といったか、貴様らも目障りだ。これ以上あのお方への敵が増えぬよう、ここで裏切り者と纏めて葬り去ってくれる! レッドハイドレイン!」


『お前の行いは許しません、ここでお仕置きしてやります! 【庇護者への恩寵】発動!』


『庇護者への恩寵を与えます。各種身体能力の向上及び、魔力の総量を増加させます』


 イゼリアの非難を一蹴し、話は終わりだとばかりにネイシアは自身を覆う結界を解除する。そして、真紅の槍を大量に召喚しその全てを雨の如くユウたちに降り注がせた。


 それに対抗し、ユウは仲間たちを自らのチート能力で強化して戦闘準備を整える。やる気も元気もみなぎり、力が湧き上がる。


『そんなもの、全部破壊してやります! チェンジ!』


【ブレイクモード】


『それっ、ナインフォールディバスター!』


【2・4・2・4:マジンエナジー・チャージ】


「ゆーゆー、ワタシも加勢するデスマス! あのコンチクショウをボコボコのグチャグチャにしてなめろうにしてやるデス!」


 槍が迫るなか、ユウはブレイクマガジンをファルダートアサルトにセットして迎撃を行う。ブリギットもマジンフォンを用いて変身し、戦闘態勢を整えた。


「うし、俺たちもやってやる! ベクタークレスト、セット!」


「そうね、彼らにだけ戦わせておけないわ!」


ELEMENTAL(エレメンタル) CHARGE(チャージ)


「ボウズたち! 戦闘に支障が出ないよう鎖が無限に伸びるようにしておく! 俺たちもサポートする、存分に暴れやがれ!」


『ありがとうございます、ゾルネストさん! ネイシア、覚悟しなさい!』


『本番に向けての予行演習だ、遠慮せずフルパワーで行け! ユウ!』


 イゼリアと融合し、イノセンスアーマー形態となったゾルネストはユウたちにそう告げる。礼を述べた後、ユウはブリギットと共にネイシアへ遠距離攻撃を叩き込む。


 対するネイシアは、ひらりひらりと異空間を舞い飛び弾丸やトマホークを避けていく。新たな槍を降り注がせつつ、ユウを憎悪に満ちた目で睨む。


「ユウ、貴様はわらわの汚点だ。我が計画を破綻させた罪、ここで償い死ね! レッドハイドギロチン!」


『お生憎様、ボクはこんなところで死ぬつもりなんてありません。叶えなければならない夢はまだ途中ですからね、お前を返り討ちにしてやりますよ!』


 自分たちを挟み撃ちにするべく出現した二つのギロチンを射撃して破壊しつつ、ユウは啖呵を切る。ネイシアの分身との戦いが、幕を開けた。

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― 新着の感想 ―
魔魂片も所詮、欠片でしかないが(ʘᗩʘ’) ユウ並みの器(人物)が他に居たのか?(٥↼_↼) それとも案外知ってる奴とか?(゜o゜;
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