174話─銀と銀の決戦!
「このっ、離し……きゃあっ!」
「Look, I let you go just like you wanted. Look inside that dark barrier and see Yu Houjou killed by me(ほら、お望み通り離してやったぜ。その闇封じの結界の中で見てな、ユウ・ホウジョウが俺に殺されるところをよ)」
「この檻……力が、吸われる……」
城内に拉致されたシャーロットは、広大なコロシアムに改造されたエントランスホールに連れ込まれた。バトルフィールドの端に設置された檻に叩き込まれ、崩れ落ちる。
檻には闇の眷属の力を封じる魔術が施されており、自力で脱出することが出来ない。得意気な顔のシュナイダーに対し、シャーロットは不敵な笑みを浮かべた。
「What is that face? What's wrong?(なんだ、その顔は。何がおかしい?)」
「残念ね、お前の思う通りにはならないわ。ユウくんは負けないの、これまでも……これからもずっとね!」
「I see, then that myth of invincibility will end today. I'll take him(そうかい、ならその不敗神話も今日で終わりだな。俺が奴を)」
『追い付いた! シャロさんを返してもらいますよ、シュナイダー!』
シャーロットとシュナイダーがやり取りをしているなか、少し遅れてユウが現れる。すると、コロシアムの観客席を埋め尽くす数の観衆がテレポートしてきた。
『こいつらは……』
「Are these guys? These guys are non-combatants who belong to the Linker Knights. Everyone is looking forward to it, right? I don't want you to die here!(こいつらか? こいつらはリンカーナイツに所属する非戦闘員たちだ。みんな心待ちにしてるぜ? お前がここで死ぬのをな!)」
【REPTILES POWER COMBINE】
【OCEAN POWER COMBINE】
鳥に加え、爬虫類と水棲生物の力をも取り込み本気を出すシュナイダー。観客たちは大声を張り上げ、最後のトップナイトの片割れたるシュナイダーへと声援を送る。
「シュナイダー! シュナイダー! シュナイダー! シュナイダー!」
「あのガキを殺してくれぇぇぇ!! リンカーナイツに栄光をぉぉぉ!!!」
『フン、好き勝手喚きおるわ。実にうるさいものだ。なあ、小僧?』
『ええ、シュナイダーを倒して全員黙らせてやりますよ!』
「Now, let's continue with that day! Can you avoid this guy? Crocodile neck hanging!(さあ、あの日の続きといこうか! こいつを避けられるかな? クロコダイル・ネックハンギング!)」
コロシアムを観客たちの熱が包むなか、右腕をワニの頭部へ変化させたシュナイダーがユウへ襲いかかる。以前レオンの介入で不発に終わった恐るべき技が、少年に放たれた。
ユウは相手から見て左へ飛び、ワニの顎から逃れる。そのまま反撃を放とうとする……が、シュナイダーの腰から生えたタコの脚が追撃を見舞う。
「That's not going to happen, eat this guy! Octopus Hammer!(そうはいかないな、こいつを食らえ! オクトパスハンマー!)」
『くっ、そう簡単に反撃は出来ませんか!』
「That's right, my offensive isn't over yet. Well, I'll give you a refill! Hawkwing Tornado!(そうさ、まだまだ俺の攻勢は終わらない。そうら、おかわりを叩き込んでやる! ホークウィング・トルネード!)」
『まずい、奴と距離を取れ小僧! 風で吸引してくるぞ!』
タコ脚を叩き付けてユウの体勢を崩し、すかさず翼を広げ身体を回転させる。小規模な竜巻がシュナイダーを包み、吸引力が生まれてユウを吸い込む。
ヴィトラの言葉に従い、踏ん張って体勢を立て直したユウは離脱しようとする。が、シュナイダーはそのムーヴを許さない。さらなる力を解放し、少年を追い詰める。
「Oh, I won't let you escape, will you? Snake Nail Capture! From...Jellyfish Stinger!(おっと、逃がさないぜ? スネイクネイル・キャプチャー! からの……ジェリーフィッシュ・スティンガー!)」
「ユウくん、危ない!」
『くっ、逃げられ……』
『ならば我に任せよ! オニキスエスケープ!』
「What! ?(なにっ!?)」
腰から生やした蛇の尾を伸ばし、ユウを絡め取る。そして、竜巻の中に無理矢理連れ込み逃げられぬよう退路を断つ。そこへ、体表に出現させたクラゲの触手に仕込まれた針を放った。
被弾は避けられない……そう思われたが、間一髪ヴィトラがユウを透過出来るよう終焉の力を振るい攻撃から逃れた。ここでようやく、ユウの反撃が始まる。
『ありがとう、ヴィトラ! さあ、今度はボクたちの番です! チェンジ!』
【トリックモード】
『ファントムシャワー、からの! セブンシャドウズマシンガン! こゃーん!』
『さらなる破壊の力を与えてやろう。あのキメラ男をハチの巣にしてやるがよい!』
安全圏まで退避したユウは、トリックマガジンをセットし六人の分身を生み出す。彼らと連携し、ヴィトラが破壊の力を込めた弾丸を連射する。
「Don't lick it, you just don't have to hit something like that!(舐めるなよ、そんなもの当たらなけりゃいいだけだ!)」
【INSECT POWER COMBINE】
【AMPHIBIAN POWER COMBINE】
舌打ちしながらそう叫んだ後、シュナイダーは素早くフォールンガントレットのリングを操作する。蝶とカエルのマークを連続で三角形に合わせ、それまでの三種の力を消して元の姿に戻り、今度は虫と両生類の力を宿す。
その直後。シュナイダーの両脚がバッタのソレに変化し、全身を半透明な粘液の鎧が覆っていく。強化された脚力で弾丸を避け、さらにぬめる粘液で受け流しはじめた。
「No matter how destructive it is, all you have to do is avoid it like this! Get ready, Yu Hojo. I'll kick you through the belly of the embankment!(どれだけ破壊力があろうが、こうやって全部避けちまえばいいだけのこと! 覚悟しなユウ・ホウジョウ。お前の土手っ腹を蹴り抜いてやるよ!)」
「いいぞー! シュナイダー!」
「いけー! そのままブチ殺せー!」
ユウの反撃をものともせず、攻撃をかわし分身を全滅させていくシュナイダーに声援が送られる。一方のユウは、完全なアウェー状態でも一切動揺していない。
『銃弾はダメ、ですか。なら……直接攻撃を仕掛けるのみ! ビーストソウル・リリース!』
「ユウくん、頑張って! 大丈夫、貴方なら必ず勝てる!」
銃の魔神へと姿を変えたユウにただ一人、シャーロットだけがエールを送る。彼女の声が、叫びが。ユウに無限の勇気と不屈の心を与え奮い立たせる。
『ありがとうございます、シャロさん! さあ来なさい、シュナイダー! このバヨネットで真っ二つにしてやりますよ!』
「It's interesting, if you can do it, try it. You're the one to die, Yuu! I will make this castle a grave marker for you and your friends!(面白い、やれるもんならやってみろ。死ぬのはお前だ、ユウ! この城を貴様と仲間たちの墓標にしてやるよ!)」
ユウとシュナイダーは、全く同じタイミングで相手に向かって走り出す。戦いは、まだ終わらない。




