表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/189

166話─プロジェクトMの正体

 時はさかのぼる。ユウがクァン=ネイドラにやってくる二年前。一人のパラディオンがトップナイトの一角、シュナイダー・リーズと戦い……力及ばず討ち取られた。


「う、クソ……。強すぎる、これがトップナイトの力……なのか……」


「That's right, there's no way you can beat me.(その通り、お前が俺に勝てる道理は存在しないってわけさ)」


 無念の言葉を残し、パラディオンの男は息絶えた。シュナイダーはうつ伏せに倒れた男に近寄り、ひっくり返して仰向けにする。そして、懐からマジンフォンを取り出す。


「I'll take this as a loot. Because it's a key part of the plan your brother made. Now, I wonder if Dr. Uno will be happy with this(これは戦利品として貰っていくよ。兄貴の立てた計画のキーパーツだからな。さて、これでドクター・ウノも喜ぶかね)」


 そう口にし、男が使っていた銀色のマジンフォンを奪う。仇敵たるパラディオンの『駆除』とは別に、シュナイダーには兄レオンから課された極秘任務があった。


「However, Mazinphone... The more I look at it, the more it looks just like the smartphone I used when I was in America. You said you were going to use this guy, but what are you planning on doing(しかし、マジンフォン……ね。見れば見るほど、アメリカにいた頃使ってたスマートフォンにそっくりだ。こいつを利用すると言ってたが、兄貴は何をするつもりなのやら)」


 それは、パラディオンたちが用いる多機能戦闘支援デバイス……マジンフォンを奪うこと。レオンはトップナイトに就任する以前から、『ある計画』を練っていたのだ。


 弟であるシュナイダーも、まだその全貌を聞かされてはいない。だが、彼には一つの確信があった。──レオンは自分の想像を超える、とんでもないことをやるつもりだと。


「I'm back, bro. I successfully killed Palladion and got Mazinphone.(戻ったぜ、兄貴。無事パラディオンをぶっ殺してマジンフォンを手に入れてきたぞ)」


「ご苦労だった、シュナイダー。こちらもすでにマジンフォンを一台確保済みだ。これでようやく始められるな……私が長年構想を練ってきたプロジェクトMを」


 リンカーナイツの本部に帰還したシュナイダーは、早速レオンにマジンフォンを手に入れたことを伝える。すると、レオンも懐から金色のマジンフォンを取り出した。


 感慨深そうにしていたレオンは、指を鳴らし宇野を呼び出す。テレポートしたきた宇野も、すでに自分が呼ばれた意味を理解しているらしい。


「やあやあ、呼び出される日を楽しみにしていたよぉ。よくやってくれたねぇ、マジンフォンを二台も確保してくれるとは上出来さぁ!」


「ああ、ここまで長かったものだ。これまではパラディオンを倒せても、殺す前に逃げられてしまっていたからな。ようやく確保出来て喜ばしい限りだ」


「Hey, don't get excited just the two of us, tell me what you're going to do to me too. You don't want to be left out of the group after helping out like this, right?(ヘイ、二人だけで盛り上がってないで俺にも何をするつもりなのか教えてくれよ。ここまで手伝わせて仲間はずれは嫌だぜ?)」


「そうだな、ついに計画を始められるのだからな。お前にも教えよう。プロジェクトMとはすなわち……マジンフォンをリバースエンジニアリングし、パラディオンどもが用いる魔神の力を我々も使えるようにする計画だ」


 兄の言葉を聞き、シュナイダーはヒュウと口笛を吹く。そして、口角を上げ楽しそうに笑みを浮かべる。やはり兄は自分の想像を超える……と歓喜していたのだ。


「ハッハハハハァ! 一部だけとはいえ、魔神の力を宿したパラディオンの戦闘能力はみな周知の通り! あまりにも厄介極まりないものだ、だが! 我々もその恩恵に与れるようになれば戦力は互角となる!」


「Indeed, Dr. Uno is right. But, can it be reverse engineered that easily? I'm talking about them, they probably have pretty strong protection(確かに、ドクター・ウノの言う通りだ。しかしよ、そう簡単にリバースエンジニアリング出来るのか? 奴らのことだ、かなり強力なプロテクトを施してるだろうぜ)」


「もちろん、そこはこちらも想定済みだ。プロテクトなど、時間をかけて解除していければいいだけのこと。時間はいくらでもある、我々リンカーナイツには……な」


「そういうこと! なぁに、安心したまえ! 異邦人一の頭脳を持つこの大天才! 宇野狂介に不可能はなぁい! 大船に乗ったつもりで計画の成功を待っていたまえ! ハッハハハハハァ!」


 そうして、恐るべき計画が始まった。二年の時をかけ、マジンフォンのプロテクトを破り……宇野とレオンは完成させた。パラディオンたちを滅ぼす、究極の切り札を。



◇─────────────────────◇



 そして、時は現在に戻る。宇野とアストラルZ・オメガが敗れた頃……レオンとシュナイダーは、完成させた兵器の最終調整を行っていた。


 本部の研究施設の最奥部にて、二人は宙に浮かぶガントレットを見つめながら手元のパネルを操作する。一対のガントレットは、右腕用が銀、左腕用が金で染められていた。


 盾の魔神リオが用いる神器、『ツインガントレット』の配色を逆転させたソレは禍々しい気配を放っている。


「よし、これでいい。すでに各種人体実験で安全性は確認済み。後は……この【フォールンガントレット】を使い、パラディオンたちを根絶するだけだ」


「We can finally begin the massacre using this guy. Top night ended up being just me and my brother. I need to pay them back in full(ようやく始められるな、こいつを用いた大虐殺が。トップナイトも俺と兄貴だけになっちまった。奴らにはたっぷりと借りを返してやらないとな)」


「ああ、始めるとしよう。俺とお前、リーズ兄弟がいれば恐れるものは何もない。……ユージーンもここにいてくれればよかったのだが、な」


 最後の調整を終え、レオンとシュナイダーは腕を前方にかざす。レオンの元には黄金のガントレットが、シュナイダーのところには白銀のガントレットが引き寄せられる。


 二人がガントレットを装着すると、手首の部分にリング状のパーツが浮かび上がった。リングにはレオンとシュナイダーで異なる模様が七つずつ刻まれており、不気味な魔力を纏っている。


「レオン様、こちらにおられましたか! つい先ほど緊急の伝令がありました。フィービリアが派遣した闇の眷属との混成部隊及びアストラルZ・オメガを率いて出陣した宇野様が、ユウ・ホウジョウ一味に敗れ全滅したと」


「……そうか。ドクターめ、余計な真似をしてくれたものだ。まあいい、すでにアストラルXとYはネイシア様に献上してある。アストラルシリーズの全滅を避けられただけよしとしておこう」


 そこに、宇野の敗北と死を告げに慌てた部下が現れる。レオンは舌打ちした後、シュナイダーと部下に語りかけた。


「仕方あるまい、本当ならすぐにでも襲撃したいところだが……部隊の再編成が先だ、戦力を回復させてから改めて総攻撃を仕掛ける」


「Hey hey, is it okay to say such a leisurely thing? Well, big brother, you should do that. I'll find the right time and set it up. I want to try this power as soon as possible(おいおい、そんな悠長なこと言ってていいのかよ。ま、兄貴はそうすりゃいいさ。俺は頃合いを見計らって仕掛けさせてもらう。この力、早く試したいからな)」


「……いいだろう、だが最低でも一週間は待機しろ。最低限の足並みを揃えなければ、フォールンガントレットも宝の持ち腐れ。分かったな?」


 目を細めるレオンにそう言われ、シュナイダーは渋々頷く。兄が目を細めながら命じてきた時、逆らえば凄まじいお仕置きを食らうことをよく知っていたからだ。


「Okay, so I'll just train myself to use this power for a while.(分かったよ、ならしばらくはこの力を使いこなせるようトレーニングするだけにしておくさ)」


「それでいい。なに、焦る必要はない。一度出撃すればこちらの勝利は揺るがん。フォールンガントレット以外にも、切り札はあるからな」


 ユウたちの知らないところで、リンカーナイツ最後の悪が動き出す。そして……善と悪の異邦人たちの戦いに、終止符が打たれる時もまた……刻一刻と近付いてきていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
また面倒な奴等に危険なオモチャが渡ったか(◡ω◡) コレだから高性能便利アイテムは(´-﹏-`;) 敵に奪われるのを想定するならプロテクトより即自爆だろ(⌐■-■)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ