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165話─鎮圧任務コンプリート!

 ユウがラディムと決着をつけた頃、ヴィトラは宇野を徹底的に痛め付けていた。フィニス戦役で敗北し、魔魂片となってから初となるオリジナルの実体を得て調子が絶好調なのだ。


「どうした? そのリィンストンパーとやらは図体だけのハリボテか? あそこまで豪語したのだ、このまま大破させられるような無様は晒さぬのだろう!?」


「言いたい放題してくれるねぇ! いいさ、そんなに見たいならこのリィンストンパーの力を見せてあげるよぉ!」


 ヴィトラの振るう盾を後退して避けた後、宇野はパワードスーツの両肩の装甲をスライドさせる。そうして出来た穴から、内部に格納されていたミニガトリング砲を展開した。


 数撃ちゃ当たると、魔力で出来た弾丸を大量に発射する。ユウが用いるものと違い、通常状態でも凄まじい殺傷力を持つようで直撃した家屋が一種で倒壊していく。


「ハアッハハハァ! さあ、いつまで逃げられるか見せてもらおうかなぁ!」


「逃げる? くだらぬ、そんなのは弱者のすることだ。ちょうどいい、終焉の力を使わざるを得ない相手なのか確かめてやる。全て食らってくれよう!」


「バカな奴だ、直撃すればタダでは済まないというのにねぇ! いいさ、レオンから魂を回収する装置を預かってきてる。邪魔な肉体をミンチにしてあげるよぉ! ファイア!」


 相手を挑発しつつ、ヴィトラは空中で静止し堂々と構える。そんなヴィトラに狙いを定め、宇野はガトリング砲による攻撃を浴びせかけた。


 が、どんなに弾丸を直撃させても傷一つ付けることが出来ない。唯一露出し、鎧に守られていない頭部ですら全くの無傷なのだ。


「んなっ!? そんなバカな、リィンストンパーの破壊力は下っ端を使った実験で確認済みなんだ! 無傷だなんてあり得るわけがない!」


「なんだ、飛び道具の威力はこんなものか。少しばかり期待していたが、この程度では防御する必要すらないな。……ふむ、小僧の魂のパワーが耐久力に反映されているというわけだなこれは」


「ぬぬぬ……なら直接ぶった斬るだけさぁ! 真っ二つにしてやるぅ!」


 自分にまるでダメージを与えられない宇野を見て、ヴィトラはがっかりしたと言わんばかりに肩を竦めた。それがプライドを傷付けたようで、宇野は新たな攻撃を試みる。


 パワードスーツの手首、手の甲側に格納されていた大振りなブレードを展開しての近接戦闘握り替えた。ついでに、無用となったガトリング砲をパージして自爆用ドローンに転化する。


「まずはこいつを食らえ! ギガドローンボム!」


「フン、ちゃちな爆発しか起こせなさそうだが……いいだろう、我は今の己の限界を知りたい。ゆえに食らってやる、ありがたく思うのだな!」


「余裕だねぇ、イライラするよ……その態度は!」


 背面のブースターを稼働させ、一気に接近する宇野。先行させたガトリング・ドローンを自爆させてから、爆風で視界を塞ぎつつ斬撃を叩き込む。……が。


「やれやれ、案の定また無傷だな。貴様はいつになったら我に手傷を負わせられるというのだ? 自慢のパワードスーツとやらも、我に言わせればただのガラクタでしかない」


「!? あり得ない、私のデータではこんな結果になるなど……」


「データ? 笑止、それは異邦人や大地の民から採ったものだろう? そんなものが意味を成すと思うか? 終焉の者の魂のカケラたる……この我に!」


「うぐはっ!」


 ドローンの自爆、そこからの斬撃の嵐を放ってもなお。ヴィトラはかすり傷一つ負うことなく、冷ややかな目でパワードスーツの中にいる宇野を見つめていた。


 宇野が狼狽えるなか、もう余興は不要とばかりに蹴りを叩き込む。パワードスーツが吹き飛び、装甲にヒビが入る。が、まだ致命的なレベルではなく宇野は空中で体勢を整えた。


「ぐうううう……!!!! あり得ない、こんなことがあってはならない! 私は天才か学者の宇野狂介! チート能力はなくとも、この頭脳一つでここまで成り上がってきたんだ! その私が負けるなど! あり得ないのだぁぁぁぁぁ!!!!」


「まだ足掻くか。いいだろう、その根性だけは認めよう。だが……我はこの戦いに飽きてきたところでな。悪いがもう終わりにさせてもらう。シールドギロチン!」


 再度突進してきた宇野の攻撃を上昇してかわした後、ヴィトラは右腕に装着した飛刃の盾に魔力を注ぎ込む。盾を巨大化させ、高速回転させながら投げ付ける。


「そんなもの、プロテクションフォースで防いでや……!?」


「残念、貴様の負けだ。その程度の魔力障壁など、魔魂片たる我には通じぬ」


「うぐ、あ……」


 真正面からヴィトラを打ち負かさなければと、意固地になっていた宇野は防御障壁を展開して攻撃を防ごうとする。が、無意味な抵抗で終わった。


 パワードスーツごと飛刃の盾で両断され、呻き声を漏らしながら地上に落ちていく。地面に激突し、その衝撃でパワードスーツが砕け散った。


「そん、な……。この私が、リィンストンパーが……負ける? そうだ……これは、悪い夢なんだ……」


「夢ではない。貴様は負けたのだ。あれだけのビッグマウスをほざいておいてな。フン、肩慣らしにもならなかったか……。これでは小僧と手合わせでもした方が遙かにマシであったな、実につまらん」


 斜めに両断された宇野は、パワードスーツの残骸に埋もれながら茫然自失としていた。そこにヴィトラが降り立ち、心底つまらなさそうに呟く。


「雑魚をいたぶる趣味は無いのでな、トドメを刺させて……む」


『ヴィトラ、加勢……する必要はないみたいですね。もう終わっていましたか』


「ああ、実につまらぬ相手だった。この程度の敵なら、小僧だけでも勝てるだろうよ」


「ワオ、本当に実体化してるデスマス! ……ムダにデカいデスね。ムムム」


「ムムムはこちらのセリフですわよ、ブリギット先輩。盛大なブーメランを投げると先輩でも張り倒しますわよ?」


「……胸のことになるとこえーな、ジャンヌ」


 宇野にトドメを刺そうとしたその時、加勢しようとユウたちが到着する。一時的とはいえ肉体を得たヴィトラを見て、ブリギットがボソッと呟く。


 ジャンヌの逆鱗に触れたようで、静かに怒りを燃やす彼女を見てチェルシーが若干引いていた。そんなユウたちのムードが、宇野の高笑いで払拭される。


「ふ、ハハハハァ! そうか……お前がここに来たということは、アストラルZ・オメガも敗れたかぁ。全く、腹立たしいねぇ……」


『ふふん、あんなのボクの敵じゃありませんでしたよ。ところで一つ聞きたいんですが……まだ討伐報告のないアストラルXとYはどこにいるんです?』


「フハ、知りたいかい? でもねぇ、教えないんだなぁ! それに……アストラルばかりに気を取られていちゃいけないねぇ。もう完成したのさ……リンカーナイツ最大の計画、プロジェクトMが、ね。お前たちは……もう、終わり……さぁ……」


 ユウの質問に答えることなく、宇野は不穏な言葉を遺し息絶えた。このままでは輪廻の加護により、いずれ近い将来転生してしまうと思われたが……。


「心配はいらん、貴様らがムダ話をしている間にこっそりと【霊魂のトパーズ】の力を浴びせて魂を破壊したからな」


「ああ、ブリギットたちが話してる時になんだか腕を向けてると思ったらそういうことかい。なら、ひとまずはこれで一件落着というところかな?」


『だといいんですが……。ボク、気になるんですよ。宇野が最後に漏らしたプロジェクトMといワードが。何か、ボクたちの知らないところでとんでもないことが起きてそうな気がするんです』


 ヴィトラが手抜かりなく処置していたようで、宇野の転生は避けられた。が、ユウは彼が遺した言葉に一抹の不安を覚えていた。


「そうね、ケンゾウさんが戻ってきたら次はそっちの調査をしてもらいましょう。……ところでユウくん? 戦いを始める前の約束は覚えてるわよね?」


『……ナンノコトデショウカ。ボクハナニモオボエテマセン』


「お、とぼけるつもりかぁ? 残念、そうはいかねえぜ! ちゃーんとマジンフォン使ってキルスコア計測してっからよ、ギルドに戻ったらお楽しみの結果発表だ!」


『ヴィトラ、たす』


「こういう時だけ我に頼るのはダメだな、大人しく結果を受け入れてくるといい。というわけで、我は貴様の中に戻る。疲れたからしばらく寝るぞ」


『くうっ、日頃の接し方が裏目に!』


 そんなやり取りをしつつ、ユウはチェルシーに担がれギルドに帰還する。……この時、彼らはまだ知らなかった。リンカーナイツが長きに渡って進めていた極秘計画。


 その全貌と、恐ろしき成果を。

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データ、データだけで語る奴ほど程度が知れるな(◡ω◡) にしてもBランキング1位のブリキッドが敵視する程の体型だったのかヴィトラ?(゜ο゜人))
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