163話─魂と終焉の交差
怒りを燃やすユウは、左腕と一体化しているファルダートアサルトに魔力を流し込む。バヨネットの切れ味を増加させ、宙へと浮かび上がる。
『もう一つ、パパから聞いていることがあります。ツイン・デストラクションの破壊力は確かに甚大。でもその代償に、長い時間をかけて魔力をチャージしなければならないとね!』
「ハッハハハ! その程度の弱点、異邦人一の天才であるこの私が対策していないとでも思ったかぁ! アストラルZ・オメガ、第二の切り札を見せてやれ!」
「ワカッ、タ……! オオオォォ!」
ユウの目論見……それは、グレイガもどきの再チャージが完了する前に速攻で仕留め被害を出さないこと。当然、その作戦は相手もすぐに看破してきた。
グレイガもどきを操り、氷と炎の魔力弾を連射してユウの接近を阻む。それと並行し、宇野の指令を受け肉塊から新たなる悪の化身生み出す。
『次のを生み出したか。今度は……また鎧を着た奴か。芸の無い奴め』
『とはいえ、油断は出来ません。次のも何か強力な……うわっ!?』
「よおし、クリティカルヒットォ! どうだぁい? 見えない斬撃にやられる気分は!」
肉塊の左側面に、新たな化身が出現する。こちらもまた、鎧を身に着けたのっぺらぼうであった。鎧が錆びており、両手にそれぞれ大ナタとトマホークを持っているという違いはあるが。
飛んでくる魔法弾を避けながら接近を試みていたユウが前に進もうとした、その時。新たな化身が無造作に右腕を振ると、突然ユウの両脚が切り落とされてしまう。
『見えない斬撃……? ああ、なるほど。そういうことですか……二体目もかなり厄介ですよ、これは』
切り落とされた脚を再生させつつ、一旦距離を取るユウ。不可視の斬撃という特徴に心当たりがあるようで、即座に二体目の化身の正体を見破った。
『なんだ、もったいぶらずに早く言え。奴は何者なのだ?』
『以前、アンネローゼさんたちの遺産騒動の時にアゼルさんが話してくれたんですよ。八つ裂きの騎士と呼ばれた、不可視の斬撃を操る殺戮者のことを』
八つ裂きの騎士ゾダン。遙か昔、まだアゼルが命王となる前……幾度も対峙した悪霊の騎士。己が魂を肉体から剥離させる禁術を用いる、狂気の虐殺者。
それが今、限定的ながら現世によみがえったのだ。アストラルZ・オメガの操る駒の一つとして。
『ほう、実に我好みの物騒な話だ。昼寝をせずに聞いておけばよかったな』
「ヨユウ、ダナ。ダガ、ソレモイツマデモツヅクマイ!」
『来ますね。言っておきますが、見えない攻撃なんて無意味ですよ。一度食らえばもう覚えます、攻撃がどう飛んでくるかなんてね!』
自信たっぷりに言い返した後、ユウはその言葉通り次々と飛んでくる不可視の斬撃を皮一枚で避けながら宙を舞い前進していく。幾たびも行われた修行で、この程度は楽に捌けるように成長したのだ。
「チョコマカト……ウットウシイ!」
『これでも食らいなさい! デッドエンドストラッシュ!』
二発目のツイン・デストラクションを阻止するため、ユウは真っ先にグレイガもどきに攻撃を放つ。敵に肉薄して左腕を振り抜き、グレイガもどきを根元から両断した。
本体と繋がっていないと存在を維持出来ないらしく、切り離されたグレイガもどきはチリとなって消滅していく。ひとまず、これでガンドラズル消滅の危機は避けられた。
「ふぅん……。なかなかやるねぇ、これは余裕の見物とはいかなくなってきたよぉ。そろそろ私も参戦するとしようかぁ! カモン、リィンストンパー!」
『む、気を付けろ小僧。あの眼鏡男、どうやら参戦するつもりらしい』
『分かりました、なら返り討ちにしてやらないといけませんね! ……と言いたいところですが、ボク一人だとちょっと忙しいのでこういう方法をやろうと思うのですが……』
が、一難去って万事解決……とは残念ながらならない。自身も打って出ることを決めた宇野が、銀色の搭乗型パワードスーツを召喚し乗り込んだのだ。
それを見たユウは、ふとあるアイデアを思い付く。それを実行するため、ヴィトラに心の中で作戦を伝える。
『ククク、貴様も味な作戦を思い付くではないな。ふむ、確かに【境界のオニキス】と【創造のエメラルド】の力を使えば……残滓とはいえ、一時的に成し得ることは出来よう』
『ではこの作戦で行きましょう! 奴らの鼻を明かして』
「いつまでコソコソ話しているんだぁい? この私が開発した戦闘兵器! 【転生者潰し】で叩き潰してあげようじゃあないか!」
『来ましたね! お前の相手はボクじゃありません。ヴィトラ、これまでの鬱憤を全部晴らしてきなさい!』
『ああ、そうさせてもらおう。久しぶりの娑婆だ、存分に暴れてくれる! 小僧よ、貴様より借り受けし魂の力を見せてやろう。ボディ・クリエイション!』
ずんぐりむっくりした、やや丸っこいパワードスーツを駆り宙を飛ぶ宇野。敵が近付くなか、ユウたちは作戦を実行する。
ユウの持つ強大な魂の力とヴィトラの持つ終焉の力の残滓。二つを組み合わせ、ヴィトラの仮の肉体を創り出したのだ。
現れた肉体は、褐色の肌を持つ雌獅子の獣人の姿をしていた。ヴィトラが憑依し、開かれた赤い目は……獰猛な獣のように鋭く釣り上がっている。
「なっ!? お前たち、一体何をし」
「知る必要はない、貴様はここで死ぬのだからな。さあ、久しぶりに振るおうか。かつて我がフィニスと呼ばれた頃の……いや! それ以前に持っていた力を! いでよ、飛刃の盾!」
青いマントが付いた黄金のプレートアーマーを身に着けたヴィトラは、真っ白な長髪をなびかせ宇野に突撃する。彼女の元の姿であるフィニスは、盾の魔神リオの運命変異体。
ゆえに、彼女もまた使えるのだ。オリジナルのように、様々な特性を持った盾を創り出し操る力を。ヴィトラは黒いラウンドシールドを呼び出し、宇野へ先制攻撃を放つ。
「食らうがいい! シールドドライブ!」
「ッハァ! そんな直線運動なぞ当たらないねぇ! ……ふぅーむ、これはチャンスだ。さらなるデータを得れば、このリィンストンパーの更なるバージョンアップが出来るだろうねぇ。フフフフフ!」
「フン、余裕だな。その態度がいつまで続くか試してくれよう。ぬぅん!」
飛刃の盾を投げ付けるも、攻撃はあっさりと避けられてしまった。とはいえ、その程度はヴィトラも予想済み。盾を呼び戻しつつ、相手に体当たりをかまし吹き飛ばす。
「ぬほっ!?」
「小僧、こやつは我が引き離す。その間にあの醜悪な肉塊を滅ぼしてしまえ!」
「そう簡単にはやらせないねぇ! 来い、部下たちよ! ユウ・ホウジョウの足止めをしろぉ!」
宇野が魔法陣型のワープゲートを空中に作り出すと、そこから増援のリンカーナイツのメンバーたちが現れる。それを見て、呆気に取られていたアストラルZ・オメガがようやく我に返った。
「コザイクヲ……ムダナコトダ!」
『うるさいですね、いつまでもカタコトで鬱陶しいんですよ! チェンジ!』
【クイックモード:アルティメットアクセラレイション】
『これでまとめて……叩き潰します! こゃーん!』
また敵が増えてはたまらないと、ユウは素早く撃滅に移る。ブレイクからクイックマガジンに切り替え、これまで温存していた超加速能力を解き放つ。
左目に数字が浮かび上がり、テンカウントが始まる。カウントがゼロになる前に、魔法陣を破壊しつつ増援を全滅させなければならない。
【……9】
『それっ、てやっ!』
「な、何も見えごはっ!」
「くそっ、早すべあっ!」
【……8】
「キサマラ……ジャマダ! ユウヲキリキザメナイダロウガ!」
「無茶言わないでよ……きゃあっ!」
「あんにゃろ、無差別攻撃かよふざけあがあっ!」
淡々とカウントが進むなか、ユウは増援として現れた構成員たちを超高速の斬撃と射撃で仕留めていく。一方、大量に現れた仲間が邪魔でアストラルZ・オメガは不可視の斬撃をユウに直撃させられない。
仲間ごとユウを切り刻もうとゾダンもどきを操り、四方八方に斬撃を飛ばす。が、そんな攻撃に当たるほどユウが間抜けなはずもなく。
【……5】
『よし、敵の九割は倒せました。魔法陣も破壊出来ましたし……カウントに余裕があるうちに、ラディムを倒してしまいましょう! ビーストコンバート!』
「ソウハ、サセナイ!」
あっという間に目的を達成し、増援をほぼ撃滅したユウ。魔法陣も破壊し終え、残すはアストラルZ・オメガの撃破のみ。拳の魔神へと姿を変え、ユウは肉薄する。
グレイガもどきのいた場所に魔力を集め、再び何かを創り出して迎撃しようとするアストラルZ・オメガ。二人の戦いは、いよいよクライマックスを迎えようとしていた。




