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160話─フィービリアの謀略

 ミサキにこれまでの経緯を説明した後、ユウは変身解除したゾルネストとイゼリアを伴い仲間たちの元へ戻る。シャーロットたちの方も、リンカーナイツを全滅させたようだ。


 そこかしこに積もる元異邦人の灰の山に囲まれながら、ユウたちはお互いの身に起きたことを伝え合う。一通り話を終えた後、シャーロットが仲間を代表してゾルネストに礼を述べた。


「ゾルネストさん、イゼリアさん。この度はユウくんを助けていただき、ありがとうございます。魔戒王コーネリアスが娘、シャーロットがお礼を申し上げます」


「おう、噂は聞いてるぜ。しかしまあ、えらいべっぴんさんだな。こっちに来る途中、ボウズから聞いたよ。ここにいるのみんな、ボウズの婚約者なんだってな。熱いねえ! ヒューヒュー!」


「もう、ゾルネストったら。子どもじゃないんだ……」


「ん? どうしたんだ? あ、その腹もしかして……」


「ええ、子を宿しているの。騎士と精霊のハーフ、私たちの大切な大切な宝物よ」


 ユウとシャーロットたちの関係を知り、囃し立てる夫に呆れていたイゼリア。彼女が何かに気付き、腹をさすったのを見て妊娠していることにチェルシーが気付く。


「精霊、デスか。実物を見るのは初めてデスよ、何せ精霊はグラン=ファルダにもっとも近い大地にしか住んでいまんカラ」


「普通の精霊は、ね。でも、私のように精霊騎士(ベクターナイト)と契約した精霊は別なの。今は……って、私たちの身の上話は後ね。まずは……」


『はい、この闇の眷属からいろいろと聞き出さないといけませんから。シャロさん、お願い出来ますか?』


「任せてユウくん。お父様から教わった闇の魔法で、記憶を抜き出してみるわ」


 話を途中で打ち切り、イゼリアはユウの尻尾で縛られ宙に持ち上げられているゼネの方を向く。シャーロットが近寄り、気絶しているゼネに魔法を放つ。


 コーネリアスから伝授された相手の記憶を抜き取る魔法を使い、何故クァン=ネイドラに現れたのか。そして、ユウを苦しめた装置の正体を探る。


「ん、思った通り記憶にプロテクトがかけられてるわね。でも、気絶してるから外すのは簡単……ここをこうしてこうやれば……ん、プロテクション解除……!?」


「シャーロット先輩? どうしましたの? そんな青い顔をして」


「こ、これは……! 魔戒王フィービリア、とんでもないことをしようとしてるわね。これは早く公にしないと大変なことになるわ……!」


 記憶を見ていたシャーロットの顔が、みるみる青ざめていく。ただ事ではないと判断したジャンヌが問うと、シャーロットは垣間見た記憶の内容を伝えた。


「簡潔に言うわ。魔戒王フィービリアは、この大地を攻め落として暗域の一部にするつもりよ。そして……自分たち『ダーク・ルネッサンス』の一派を率いてヴェルド神族と大戦争を起こそうとしているわ」


『えええ!? つまりそのフィービリアっめ魔戒王は、ボクやパパたちと一戦交えるつもりってことですか!?』


「その通りよ、ユウくん。そのための切り札たる、魔神の力を極限まで弱める装置……アンチヴェルドコードを開発したのよ。彼女はね」


「ふむ、それは……確かにただ事じゃあないね。もし放っておけば、大きな災いを呼ぶだろう」


 シャーロットの口から語られた記憶の内容を聞き、ユウは驚愕する。彼の父、リオ率いるヴェルド神族……通称ベルドールの魔神たちはグラン=ファルダの最高戦力。


 一人一人の戦いの練度が極めて高く、さらに数も神々の中で最も多い。神々との敵対を是とする魔戒王や大魔公たちですら、真正面から相手にすることを恐れているのだ。


 そんな魔神たちを相手に、全面戦争を仕掛けようというフィービリアの獰猛さと用意の周到さにユウは慄く。ミサキの言葉に頷き、仲間たちを見回す。


『……ボクは一度、このことをパパたちに伝えるためキュリア=サンクタラムに戻ろうと思います。あの装置を大量展開されたら、一気に勝ちの目が薄くなってしまいますし』


「そうした方がいいとアタシも思うぜ、こいつは……あ、気を付けろ! そいつ起きるぞ!」


「う、ぐ……。この感触、そうか……貴様らの誰かが、我が記憶を盗み見たか」


 脅威を知った以上、手をこまねいている場合ではない。急遽故郷に戻り、リオたちに伝えることを決めたユウ。が、その時。尻尾に絡め取られていたゼネが目を覚ます。


「そうデス、お前の親玉の計画はぜーんぶ白日のもとに曝け出されるのデス! トンデモな計画、ブチ壊してやるデスマス!」


「く、フフ。ムダだよ、貴様らには止められん。何故我らがリンカーナイツに協力していると思っている? 今に思い知るさ、ぐ……ふっ!」


「! いけない、そいつ舌を!」


「く、こ……かはっ!」


「……自害しやがったか。ボウズ、こいつの死体処理は俺とイゼリアでやっとく。お前らは先に帰りな、お偉いさんに緊急事態だと伝えてこい」


 記憶を見られたことを喩ったゼネは、任務失敗の責を取り……不穏な言葉を残し、舌を噛み切って自ら命を絶った。ゾルネストはユウに声をかけ、先に戻れと告げる。


『ありがとうございます、ゾルネストさん。みんな、行きましょう。ギルドに報告してからキュリア=サンクタラムに移動しますよ!』


「ええ!」


「ああ、任せとけ!」


「りょーかいデス!」


「さ、行こう。のんびりしていられない!」


「かしこまりましたわ!」


 フォックスレイダーやマジンランナーを走らせ、ガンドラズルに帰還するユウたち。グランドマスターに報告し、そのまま故郷に戻ろうとするが……。


『えっ!? 別の大地に移動出来ない!?』


「そうなのだよ、何者か……恐らくはそのフィービリアという魔戒王だろう。クァン=ネイドラを邪悪な結界で覆い、外部との通行を遮断しているんだ」


「……ダメね、今試してみたけど私のポータルも使えないわ。多分、フィービリア陛下と敵対する者たちの出入りが出来ないようにされているんだわ、これ」


「おいおい、やべーんじゃねえか? アタシらだけで事態を解決しなきゃならねえってことだろ? つまりはよ」


 ここで予想外の事態が発生する。すでにフィービリアが工作を行い、自身の手の者以外のクァン=ネイドラへの出入りが出来ぬよう封鎖してしまったのだ。


 フィービリア本人は、大地を守る創世六神の結界によりクァン=ネイドラに侵入することは不可能。ならばと発想を転換し、逆に自ら結界を創り出して敵対勢力の救援を封じたのである。


『一つだけ、方法があるかもしれません。ヴィトラ、起きていますね?』


『我の持つ終焉の力で結界を砕け、と言うのだろう? 結論から言おう、それをすると貴様の自我が消えるぞ? 何せ、この大地を覆う結界はかなり強固だ。破壊するには我が貴様の肉体を完全に奪』


『あ、じゃあいいです。また寝ててください』


『おのれ貴様、言うだけ言ってこの扱いは許さ』


 八方ふさがりに陥るなか、ユウには最後の希望があった……が、秒で消えた。いくらなんでも、結界を破壊するためだけに自我を失いたくはない。


 そもそも、ヴィトラが完全にユウの肉体を乗っ取るということは実質的にフィニスの復活を意味する。とてもではないが、そんな作戦は決行出来ない。


 ヴィトラを心の深層に送り返した後、ユウはどうやって事態を打開するべきか思案するが……そうも出来ない状況に追い込まれてしまう。


「大変です、ガンドラズルをリンカーナイツの構成員と闇の眷属たちの大部隊が強襲し包囲しています! 今は結界で侵入を防いでいますが、いつまで保つか分かりません!」


『ああもう、こんな時に! 仕方ありません、まずは目の前の問題解決を優先します! みんな、敵の撃滅に向かいますよ!』


「ッシ、悩んでる暇もねえからな。一人残らずぶっ潰してやろうぜ!」


「みんな、頼んだよ。出払っているパラディオンたちを急いで呼び戻す、それまで耐えておくれ!」


 ガンドラズルを攻め滅ぼすべく、敵が襲来したのだ。しかも、その数……目測でも数百はいるとのことだった。


 敵を放置していては、ガンドラズルを攻め滅ぼされフェダーン帝国やリーヴェディア王国にも被害が及ぶ。ユウは仲間を率い、出撃していくが……。


「ハアッハハハハハァ!! さぁてさて、ようやく時が満ちたねぇ。完成したアストラルZ・オメガの力……存分に見せ付けてあげのうじゃあないか。そして! この私が新たなるトップナイトに就任するのだ!」


「オオオオォォ……」


「ふふふ、やる気だねぇアストラルZ・オメガ。まぁ、それもそうか。素材にしている男の因縁の相手……ユウ・ホウジョウがこの街にいるのは気配で分かるからねぇ。存分に暴れて恨みを晴らすがいいさぁ!」


 少年はまだ知らない。かつて自分を追放したラディムのなれの果て……アストラルZ・オメガとそれを操る宇野狂介が強襲部隊を率いていることを。

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― 新着の感想 ―
流石に手が回ってたか(٥↼_↼) 今は現状を自力でどうにかするしかないが(゜o゜; 後は親バカのリオが気づくのを待つか(⌐■-■)
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