158話─調査任務! 闇の眷属を追え!
そんなこんなで、冒険者ギルドからの指名依頼に取り組むことになったユウ一行。依頼書に記されていた闇の眷属を目撃したという場所に赴き、実地調査をすることに。
憲三はさらなる追加調査を独自に行い、闇の眷属たちの狙いと身元の洗い出しをする。と意気込んでおり、今回の任務には参加せず別行動となった。
『着きました、ここがバルバゼリー岩石地帯ですよ』
「見事に岩山しかないわね、ここなら隠れ家を創って潜むのにうってつけだわ」
「この辺りは頻繁に落石が起きてな。手練れの冒険連中でも、運悪く死ぬのがわりと出る危険地帯だ……気ィ抜くなよみんな」
チェルシー曰く、一行がやってきたバルバゼリー岩石地帯は落石事故の発生率が高い。そのため、一般人はもちろん冒険者でも滅多に近付かない場所なのだという。
「ですが、逆に言えば寄り付く者が少ない分無頼の輩が根城を作るのにうってつけということですわ。例えば、そう……地下に基地を作れば落石など問題なくなりますわ」
『確かにそうですね、ジャンヌさんの言う通りです。……先ほどから、異邦人のソレとは違う微弱な魔力を感じます。シャロさん、これは……』
「間違いなく、私の同胞たる闇の眷属のものだわ。こんな人気のない場所で何を企んでいるのかしらね?」
「マ、それは取っ捕まえて吐かせレバ済むことデスマス。……それで、いつまで隠れテルつもりデス? こっちはとっくに気付いていマスよ、お前タチが様子を窺ってるノハ」
普段相手にしているリンカーナイツの構成員やアストラルのソレとは違う、濁りの無い闇の魔力を感じ取ったユウとシャーロット。この地に敵がいるのは明白。
勿論、すでにユウ一行を排除するため動いていることも感知済み。殺意のこもったブリギットの言葉を合図に、ユウたちの左右にそびえる岩山から岩石が降り注ぐ。
「ああ、そんくらいはこっちも分かってんのさ! こいつは挨拶代わりだ、全員潰れちまいな!」
「フッ、ムダなことを。私たちを押し潰したいなら、この百倍はやりなさい? こんな風にね! ディザスター・アロー【雨】!」
一行で最も体格に優れるチェルシーをゆう上回る大きさの岩石が十数個、一斉に山肌を転がり込落ちてくる。シャーロットは得物を呼び出し、矢の雨を放つ。
闇の矢が岩石を粉砕し、当たっても怪我をしないくらい小さな破片に変えていく。砕けた岩石のチリによって視界が遮られるなか、ブリギットとジャンヌが動き出す。
『ゆーゆー、気配が四つ近付いてきてマス。視界不良に乗じてワタシたちに不意打ちするつもりデスね』
『ええ、気配の動き方を見るに四方を囲んで逃げ場を無くすつもりのようです。』
『いえ、三方になりましたわ。たった今わたくしが一人、バルファラートのサビにしましたので』
『おー、流石ぬーぬーは手が早いデス。先輩として負けられないデスよ! トマホークシュート!』
敵に動きを悟られないよう念話で通達し合いながら、自分の元に近寄ってきている相手を逆に不意打ちで仕留めるブリギットとジャンヌ。それに習い、ユウも迎撃しようとするが……。
「おっと! ユウ・ホウジョウ、お前は特別だ。俺たちと遊んでもらうぜ!」
『! 足下に魔力の塊……転移用魔法陣ですか!』
「チィッ、させっかよ! ユウ、アタシの手を掴め! そっから逃がして」
「ムダだ、その少年には我々の実験に付き合ってもらう。貴様らは他の連中の相手をしているがいい!」
その瞬間、チリの外から男の闇の眷属のものだろう声が響く。直後、ユウは誰かが自分を別の場所に転移させようとしていることに気が付いた。
同時に気付いたチェルシーが助けようとするも、時すでに遅し。ユウの足下に構築された魔法陣が作動し、少年をどこかに転送してしまう。
「ユウ!」
「さあ、てめぇらの相手は俺たちだ! 仲間が世話になったな、今日はお返しをし」
【レボリューションブラッド】
「っせぇな、ユウを助けに行かなきゃいけねえからさっさと死ね!」
「ふぎゃぶ!」
「……どうやら、敵も相応に準備をしていたようだ。シャーロット、私はユウくんを探しに行く! ここはみんなに任せたよ!」
「ええ、行ってちょうだいミサキ! 闇の眷属たちが何をするか分からない以上、早急にユウくんを探し出す必要があるもの!」
ユウが消えた直後、リンカーナイツの構成員たちが雪崩れ込んでくる。彼ら彼女らを返り討ちにしつつ、ミサキが一人完成しつつある包囲網を抜け出して少年の救出に向かう。
一方、魔法陣によって仲間と引き離されてしまったユウは……。
『お前ですか、ボクをシャロさんたちと離れ離れにしたのは』
「ああ、そうだとも。自己紹介をしておこうか、私の名はゼネ。さるお方の配下の闇の眷属だ」
『ええ、肌の色を見れば分かりますよ。で、何故ボクを孤立させたんです?』
バルバゼリー岩石地帯の奥深く、魔物すらいない荒涼としたエリアに誘われていた。ユウを呼び寄せた首謀者、赤いローブを来た男は自らをゼネと名乗る。
「知りたいか? まあそうだろうよ。なに、答えは至ってシンプルだ。……我々が開発した装置、アンチヴェルドコードがどこまで魔神に通用するか試させてもらうためだ!」
『気を付けろ、小僧。こやつ、何かを……むっ!』
『これは……小さなパラボラアンテナ?』
ゼネが指を鳴らすと、ユウを囲むように五人の闇の眷属たちがワープしてくる。全員が小型の白い謎の装置に乗り、操縦していた。
自走出来るよう車輪が取り付けられた、小さなゴーカートのようなものの後部に赤いパラボラアンテナが取り付けられている。
「さあ、やれ! あの少年の持つ魔神の力を弱めるのだ!」
『そうはさせませんよ、チェ……!? う、ぐうっ!』
『小僧、どうした!?』
「ハハハ、貴様が超加速能力を使えることなどすでにリンカーナイツから聞いている。あらかじめ装置を起動させてから転移したのだよ!」
クイックマガジンを装填し、敵が仕掛けてくる前に全ての装置を破壊しようと試みるユウ。が、ゼネたちの方が一枚上手だったらしい。
すでに起動していたパラボラアンテナの凹曲面が明滅し、アンテナの先端から黒いレーザーが放たれる。その直撃を浴び、ユウが苦しみ出す。
嫌な予感を覚え、昼寝から目覚めたヴィトラが表に出ようとする……が、上手くユウと入れ替わることが出来ない。
『貴様ら、その装置はなんだ? 小僧がここまで苦しみ、封殺されるなど尋常ではないぞ!』
「知りたいか? だが教えん、万が一生き残られるかもしれんのに情報を渡すとでも?」
『チッ、少しは知恵があるか。リンカーナイツのブタ共なら、調子に乗ってべらべら喋るというのに』
「生憎、我々は連中と違って場数を踏んでいるのでな。お前たち、装置を持続起動させたまま降りろ。第一段階は成功だ、これより実験の第二段階を」
『そう、は……させません! クリアスナイプ!』
「ぐあっ!」
「ドニー! チッ、まだ多少動く余裕が残っているか!」
ヴィトラが問うも、ゼネは答えずせせら笑うだけだった。仲間たちに指示し、ユウを攻撃しようとする。しかし、無抵抗でやられはしないとユウが力を振り絞り銃を抜く。
ありったけの力を込め、ユウから見て右にいる闇の建造の男を撃つ。が、謎の装置で力を奪われているせいで腕にかするだけで終わってしまった。
(身体が動かない……それに、どんどん力が抜けていく……。あの装置、一体なんなんです? 本能が告げてる……あれは一刻も早く破壊しないとって!)
『クソッ、何故表に出られん! 我がバトンタッチすれば、こやつら小物如き……!』
「なに、すぐには殺さん。我らの主からたっぷりとデータを採ってこいと命令されているのでね。全ての実験が終わるまでは生かし」
「いいや、すぐに殺すね。お前以外の闇の眷属共を、な! ハァッ!」
ゼネがゆっくりとユウに歩み寄り、ニヤリと笑う。懐から短剣を取り出した直後……ユウやヴィトラ、ゼネの仲間たちとは違う勇ましい声が響く。
「うおっ!? なんだこの炎は、アンチヴェルドコードから離れろ!」
「あち、あちち! もう、なんなのよこれぇー!」
『! 影響が弱まった……小僧、我と変われ! 奴らを一気に』
「その必要はないわ。あなたたちはそこで休んでなさいな」
炎の塊が降り注ぎ、闇の眷属たちが起動させた装置に直撃する。その影響でユウを蝕む力が消え、身体の自由が戻った。
ヴィトラが表に出ようとするなか、二人の男女……ゾルネストとイゼリアがユウの側に転移してくる。
『はあ、はあ……。ありがとうございます、助けてくれて。でも、あなたたちは……一体誰です?』
「俺はゾルネスト、こっちは妻のイゼリア。ま、時間がもったいないからいろいろ端折るが……これだけは言っとく。俺たちはお前の味方だってな」
片膝をつきながら問いをかけるユウに、ゾルネストはそう答える。そして、ゼネを見据え右手で指差す。
「寄ってたかって子どもをいたぶろうなんて奴らは、キツいお仕置きしないとな。覚悟しとけ、俺たちの仕置きは……効くぜ」
「何をほざくか、乱入者め。貴様らはお呼びでない、先に排除してくれる!」
ユウの前で、戦いが始まる。




