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151話─言い渡された休暇

 リーヴェディア王国での授与式を終えた翌日。いつものように、ユウたちはリンカーナイツ狩りに……行っていなかった。


 これまでの功績を讃えられ、パラディオンギルドから長い休暇を与えられたのだ。しばし羽を伸ばし、身体を安めてほしいと。


「しばらくは義人くんたちに頑張ってもらうよ。なに、今の彼らならリンカーナイツの下っ端やアストラル如きには負けないさ。こちらのことは気にせず、ゆっくり休んでくれたまえ」


 グランドマスター直々にそう通達されては首を横に振るわけにもいかず、彼らの気遣いに感謝しながらユウたちは休暇を楽しむことに。


「さて、お休みをもらったわけだけれど。ユウくん、どうする? 家でのんびり過ごすか、どこかにお出かけするか……どっちがいい?」


『はい、せっかくの休暇ですからどこかにお出かけしたいです! もっとシャロさんたちと仲良くなりたいですから。ボクたちもうこ、こん、こん……』


「コンコンなんだ? ん? 最後まで聞かせてほしいなぁ~」


 アパートのリビングに集まり、今後の休暇をどう過ごすか話し合うユウたち。顔を赤らめ、言いよどむユウをにやけ顔のチェルシーが肘で小突きからかう。


『こ、こん……婚約してますから! うう、恥ずかしい……』


「フムゥ~、毛玉モードのゆーゆーも愛おしいデス! もふもふぎゅーぎゅーしちゃうデスよ!」


「はいそこ、イチャイチャしない! チェルシーもからかわない、話が進まないでしょ!」


「へーい、すんませでしたー」


「デシター」


 話の進行を妨げる二人を諫めつつ、シャーロットはため息をつく。特に休暇期間は指定されていないため、その気になればいつまでも休みを満喫出来る。


 とはいえ、責任者の強いユウが何カ月も任務をほっぽり出して遊び回るのは気が引けると口にしたため。一ヶ月を仮の休暇と定め何をするか話し合う。


「でしたら、わたくしから提案がありますわシャーロット先輩。一週間休暇を増やして、七日ごとにユウ様と二人きりで旅行に行くというのはどうでしょう?」


「あら、ナイスアイデアねジャンヌ。それならみんなが公平にユウくんとのお休みを満喫出来るわね。憲三さんも一緒に過ごせればよかったのだけど……」


「仕方ないさ、『自分には身に余る栄誉。それに先の事件の失態挽回のため辞退』と言われれば……ねえ」


 ジャンヌがアイデアを出すなか、シャーロットとミサキはそう口にする。この場にいない憲三は、おとぎの国事件で活躍出来なかったことを恥じ休暇を取らなかった。


 今度こそユウの役に立とうと、新たに組織した加藤組を率いリンカーナイツとの戦いや諜報活動に勤しんでいるのだ。今、この瞬間も。


『ええ、憲三さんとお休みを堪能出来ないのは残念ですが……本人が譲らない以上は仕方ありません……』


「その分、けーけーにたくさんお土産を持って行くデスよ。ね、ゆーゆー」


『そうですね、せめてお土産をいっぱい持って帰ってきましょう。それで……休暇の順番、どう決めます?』


 本当は憲三とものんびり長期休みを楽しみたかったユウだが、憲三自身が今の自分にその資格はないと辞退したため断念することになったのだ。


 しゅんとする少年の頭を撫でながら、ブリギットがそう励ます。ユウは頷き、話し合いは次のフェーズへ……。


「もちろん決まってるわ。ユウくんの仲間になった順からよ、当然私が最初なんだから」


「いーや待った、それはズルいぞ! 適当にクジかなんかで決めればいいだろ!」


「ふふ、ユウくんに選んでもらう……というのも悪くないね。私なら一番に指名してもらえる自信があるよ」


 次のフェーズへ……。


「あら、何をおっしゃいますの。ここは一番の新参に優しくトップバッターを譲ってくださるのが、古参たる皆様の優しさというものでなくて?」


「ダメデスダメダス! ゆーゆーのハジメテはワタシだって決まっていマス! 誰にも譲りまセーン!」


「ふっ、上等よ。みんな外に出ましょう。実力で決めた方が早いわ」


『え、えー……』


 進んだ結果、第一回チキチキ長期休暇トップバッター決定戦が突如始まった。どこか殺気立った様子で部屋を出るシャーロットたちを、ユウは呆然とした状態で見送る。


『ククク、モテる男はつらいな。なあ? 小僧よ』


『……ノーコメントで』


 自分には関係ないからと静観を決め込んでいたヴィトラは、一人残ったユウをからかい遊ぶのだった。



◇─────────────────────◇



「ふっふふふふふ!! いやあ、ついに完成したよぉ! 長かった、ここまであまりにも長かった! だが! 我が研究がついに実を結び! この世に生まれ出ずるのだ! 最強最後のアストラルがねえ!」


 その頃、リンカーナイツの本部では宇野狂介による実験が行われていた。彼の提唱した独自の理論により、ついに……二十六体目、最後となるアストラルが造り出されたのだ。


 宇野の眼前には、巨大なシリンダー型の培養装置が浮かんでいる。その中には、無数のチューブを接続された肉塊……そして、その肉塊に埋め込まれたラディムが沈められていた。


「ドクター・ウノ、ここにいたか。ほう……凄いな、これは。ついにここまで来たか、アストラル計画が。実に素晴らしいものだ、あっという間にここまで到達してみせるとは」


「ハハハハ! そうとも、見たまえレオン! これこそが最強の兵器『アストラルZ・オメガ』! 今はまだ眠りに着いているが、ひとたび目覚めれば……ふふふ、にっくきパラディオン共を捻り潰すのさ!」


「ああ、その日が来るのが今からとても楽しみだよ。ところで……『プロジェクトM』の進捗はどうだ?」


 装置の前で狂ったように高笑いしていると、最後に残ったトップナイトの片割れ……レオン・リーズが様子を見にやって来る。彼に最高傑作を自慢した後、宇野は笑う。


「そちらについても問題はないさ! すでに実験は最終段階、ここをクリアすれば君と弟のシュナイダーに渡せるよ!」


「そうか、よかった。そちらの完成も楽しみにしているぞ、ドクター・ウノ。……さて、私はもう行かねばならん。今のうちに指示を出しておこう」


「おや、お出かけかな! もしかしてフィービリアの案件かい!」


「そうだ、奴の配下の大魔公を忍び込ませるための下準備をしてくる。その間、オメガを除くアストラルを用いてパラディオン共を徹底的に翻弄し時間を稼げ。任せたぞ」


 そう命じた後、レオンは去って行った。一人残った宇野は、培養液の中で眠るアストラルZを見上げニヤリと口角を上げる。


「ふっふふふふふふふ! これはチャンスだねえ! トップナイトの空席は五つ、実質すでにその席に座っているようなものだが! 名実共に新たなトップナイトとなるためにも! ここで手柄を挙げておこう! 獲るべき首はやはり……北条ユウ! ふふふ、これは忙しくなるぞ! ハッハハハハ!」


 一層狂気の笑みを浮かべ、宇野は計画を寝るため自身のラボの奥へと向かう。ユウたちが休暇を満喫しようとしているなか、新たな敵が動きはじめる。



◇─────────────────────◇



「イッエーイ! 見事このワ・タ・シが! ゆーゆーとのデート一番乗りデース! フーフー!」


『まったく、いつも以上に浮かれおって。騒がしいことこの上ない、少しは静かに出来んのか……やれやれ』


『あ、あはは……。まあ、順番が決まったのでよしとしましょう。とりあえず、みんなをヒーリングマグナムで回復させてきますね』


 部屋を出て数時間後、乙女たちの血も涙も仁義も無いバトルロイヤルを制したブリギットが小躍りしながら戻ってきた。あちこちボロボロになっており、激闘の激しさを伝えている。


 有頂天になり浮かれているのが目障りなようで、ヴィトラはさっさとユウの心の中に引っ込んでいった。苦笑いしつつ、ユウは外でボロ雑巾になっているだろう仲間たちを癒やすため外に出る。


『……特別休暇、かあ。みんなと素敵な思い出、作れたらいいなあ』


 パラディオンアパートの玄関ホールにて、ユウはそう呟く。突如降ってわいた、期限の定められていない魅惑のバケーション。


 一生の思い出になる、素敵な休暇にしたいと改めて決心し……少年は外に出る。直後、怨嗟の慟哭をあげながら倒れ込んでいるシャーロットたちの迫力に負けて即退散する羽目になったが。


 ……長い長い休暇が、幕を開ける。

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― 新着の感想 ―
血も涙も仁義もないけど誰も死んでないのがアゼルの所と大きく違うとこだな(ʘᗩʘ’) アイツ等は全員死ぬまで殺し合うのが標準だしな(´-﹏-`;)
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