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147話─力、目覚める先に

『そんなことはさせません! 確かに、あなたの言うことも一理あります。悪しき同胞がクァン=ネイドラの人々を傷付けていることは事実です』


「分かっているのならばここで死ぬがいい! ガーゴイルマシンガン!」


『何度でも言います、ボクは死にません。……今、ボクは自分の果たすべき使命を見つけました。あなたとの戦いの中で』


 大きく後方にジャンプし、ユウから距離を取ったガンドルク。両手の指を相手に向け、魔力の弾丸を大量に発射して息の根を止めんと猛攻を仕掛ける。


 猛攻に晒されたユウは、逃げも隠れもせず立ち続ける。魔神の再生力を用いて高速で傷を癒しながら、王に叫ぶ。


 ユウの敵は、あくまで悪しき同胞たるリンカーナイツのみ。ガンドルクが自国の民のため非道を貫くのなら……それを改めさせ、互いに納得出来る着地点を共に探す。


 そのために戦う。それが、少年が抱いた……意思なのだ。


『ボクはあなたを殺さない! お互いに譲れぬ想いがあるのなら……憎しみに縛られた心に寄り添い、解き放つ! そして、互いを理解しあい、共に生きられるように』


「くだらぬ、相互理解だと? そんな寝言をほざきたければ、俺を倒してからにしろ青二才めが!」


『ええ、ならあなたを倒して……ボクの想いを届けます! それが……この戦いの中で見出した、ボクの……!?』


 そこまで言った直後、ユウに異変が訪れた。突如として、視界が……否、世界が()()()()()()のだ。そして、時が──止まる。


『い、一体何が起きて……』


『小僧、小僧よ。慌てる必要はない、貴様は目覚めたのだ。長きに渡って我を心の内に閉じ込め続けたことで……大いなる力に』


『力……? まさか、それって』


『そうだ、終焉の者フィニスの魂のカケラたる我が宿す……アブソリュート・ジェムの残滓にな。その結果、貴様は無意識に【時間のルビー】の能力を発現させ時を止めたのだ』


 動揺するユウの脳に、心の中に封じたヴィトラが語りかけてくる。彼女の言葉で、少年は悟った。自らの内に芽生えた、新たなる力の存在を。


『とはいえ、オリジナルには遠く及ばぬ。今は我が説明のために力を注ぎ、時の停止を長引かせている。が、貴様単独では数秒が限界だ』


『だとしても……この力でガンドルク陛下を生きたまま無力化出来るなら。この身を委ねます、例えのちに滅びが降りかかろうとも』


『ククク、案ずるな。ジェムの力とはいえ所詮は残滓、貴様を蝕むようなことはない。その分、得られる恩恵も些細なものだがな』


 どこか楽しそうな口調でそう話した後、ヴィトラはこれまで蓄えてきた魔力を放出しユウに渡す。そうして、終焉の魔力が少年を満たしていく。


『初回は特別に我が補助をしてやる。だが次からは手伝わん、貴様一人で終焉の力をモノにしてみせろ!』


『ええ、もちろん! ……戦いに戻りましょう、時を動かします。ハアッ!』


「ぐぬっ!? 小僧、貴様何をした? この不可解な感触は……一体?」


 止められた時を動かしつつ、ガンドルクの攻撃範囲から逃れるユウ。まずは相手を戦闘不能にし、対話の席に着かせる。それが、少年の最初のミッション。


 そして、それを可能とする力は……すでにその身に宿っている。ユウはヴィトラの補助を受け、発動させた。まやかしの国の戒めを打ち破る、絶対の力を。


『いきますよ、【境界のオニキス】発動! おとぎの国に満ちる力よ、消え失せなさい!』


「むうっ……なんだ、空気が変わった……?」


『ええ、黒原によって満たされたおとぎの国の魔力を消し去りました。これで、俊雄さんの力添えがなくても……陛下、あなたを倒せます!』


「フン、そんなことあり得るわけがない。寝言は死んでから言え、ガーゴイルアバランチ!」


 ユウの言葉を笑い飛ばし、突撃を仕掛けるガンドルク。おとぎの国の民ならざる者は、まやかしの存在を傷付けることは不可能。その驕りは、すぐに打ち砕かれた。


『ビーストソウル・リリース! 寝言じゃないってことを教えてあげます! ギガントナックル!』


「な……ごふぁっ!?」


 相手が近付くなか、ユウは拳の魔神へと姿を変え……体当たりを食らう寸前でカウンターのパンチを叩き込む。ガンドルクは吹き飛ばされ、その身体にヒビが入る。


 自らの負傷をもって、ガンドルクは否応なしに思い知らされる。おとぎの国の絶対の守りが、完全に打ち崩されたのだと。


「バカな……バカな! こんなことはあり得ぬ、あってはあらぬ! くっ、突進がダメなら! ガーゴイルマシンガン!」


『愚物め、攻め手を変えた程度で状況を打開出来るものか。小僧、好きなようにやってしまえ』


『ええ! いきますよ、チェンジ!』


【ブロックモード】


『そりゃっ! こゃーん!』


 ブロックマガジンをファルダードアサルトに装填し、自身のすぐ目の前の空間に弾丸を撃ち込むユウ。形成されるのは、不可視の壁だ。


 それも、ただの壁ではない。終焉の力の一つである【空間のサファイア】によって強化された、攻撃を反射する壁だ。そこにガンドルクの攻撃が直撃し……。


「うぐおあっ! くそっ、これもダメか!」


『陛下、降伏してください。ボクはこれ以上あなたを傷付けたくありません。今なら境界のオニキスの現実改変で、元に戻し』


「黙れ、黙れ黙れ黙れ! 俺は屈さぬ、貴様ら異邦人になど! 決してなぁぁぁ!!」


『……そう、ですか。なら、少し痛い目に合ってもらうことになります……ごめんなさい!』


 破れかぶれになり、ユウの降伏勧告にも従わず突撃するガンドルク。そんな彼に謝罪しつつ、ユウは終焉の力の一つ【破壊のアメジスト】の魔力を右拳に宿す。


 相手を殺さぬよう、魔力を微調整しながら待つ。そこに鏡の王が飛び込んできた瞬間。ユウは拳を振り抜いた。


『奥義……イノセンスインパクト!』


「ぐ、があああ!」


『終わったな。ククク、小僧め。我の補助があるとはいえ、初回でここまで終焉の力をモノにするとは。この分なら、我抜きでもその内……フフ、ははは!』


 破壊の力が炸裂し、ガンドルクの身体を打ち砕く。黒原に込められた邪悪な魔力が霧散し、王は崩れ落ち……戦闘不能となった。


 ユウの補助に徹していたヴィトラは、想像以上の成果にご満悦なようだ。魔神化を解除し、ユウはしゃがんでガントルクの胸に手を当てる。


「なに、を……する。殺せ……! 貴様に生かされるなど恥だ!」


『そうはいきません。あなたが死んだら……誰がリーヴェディア王国を建て直すのですか、陛下』


「!」


『あなたがボクたちを異様なまでに憎み、迫害するのは愛する民のため……そうでしょう? そんな民たちには、必要なんです。甚大な被害を受けた自分たちを導いてくれる、力強い王が』


 終焉の力【境界のオニキス】、そして【創造のエメラルド】を用いてガンドルクの治療を始めるユウ。それを拒み喚き散らす王出会ったが、少年の言葉にハッとする。


 憎しみに囚われるあまり、彼は忘れていたのだ。自分が民にとって、なくてはならない希望なのだということを。それを、ユウの言葉で思い出したのだ。


『あなたが死ねば、民が悲しみます。そして、ボクたちとの亀裂はさらに深まり……二度と解りあうことが出来なくなる。そんな未来なんて、ボクは望みません。ボクが目指すのは、お互いを信じ合い共に生きていける世界ですから』


「小僧……お前……」


『今すぐに、考えを改めてほしいとは言いません。でも、ほんの少しだけでいいんです。ボクたちに心を開いてください、陛下。そうすれば、きっと……解りあうための一歩を踏み出せますから』


 つい先ほどまで殺意を向けていた少年からの優しい言葉に、憎しみと偏見に満ちていた王の心は……呪縛から解き放たれた。しばしの沈黙の後、王は静かに口を開く。


「……俺の負けだ。王としても、人としても……お前の方が、俺より遙かに出来ている。こんな俺を……お前は許し、生かそうとしている。ほれに比べ、自分が恥ずかしい」


『フン、ようやく理解したか。ま、我がとやかく言える立場では……む! 小僧、気を付けよ。この気配……黒幕のお出ましだ』


『! ついに黒原が……。なら、ここで返り討ちにしてやらないといけませんね』


 戦いの中で芽生えた使命を果たし、ガンドルクとの和解を成し遂げたユウ。だが……和やかな空気を壊さんとする者の接近を、ヴィトラが感知する。


 王の治療を終え、おとぎの国の住民から人間に戻したユウは立ち上がる。虚構のセカイを舞台にした物語に……ついに、終幕の時がやって来る。

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― 新着の感想 ―
怒るだけのガキじゃ王は務まらん(ʘᗩʘ’) しかしヴィトラよ(⌐■-■) もしユウがお前の補助無しでジェムの力を使える様になったら(゜o゜; お前さん不要になって存在意義消えるぞ?(‘◉⌓◉’)
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