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136話─再突入! おとぎの国!

 青年と別れ、ユウたちは再度霧の中へと突入し捜索を再開する。……が、すでに一度侵入されている黒原が何の対策もしていないわけもなく。


『! 気を付けてください、霧がとても濃くなっています!』


「クソッ、視界がかなり狭くなっちまってやがるな。ブリギット、もっかいこの霧を吹っ飛ばしてくれねえか!?」


「お任せデスマス! 今度もまた……」


「ブリギット? ブリギット!? 返事がねえ……何が起きてやがる!?」


『気を付けるがいい、貴様ら。この霧……どうやら転移の力を持っているようだ。呑まれれば別の場所に移動させられるぞ』


 おとぎの国の空間を、これまでとは違う真っ赤な霧が覆っていた。また吹き飛ばそうとするブリギットだが、霧に呑まれ姿が見えなくなると同時に声が途絶える。


 ヴィトラが警告を発したため、残る者らは霧から遠ざかろうとする……が。その動きを察知したようで、霧は素早くユウたちを包囲しに動く。


「クソッ、分断して始末しようって腹か! 舐めた真似を……」


「まずいわね、このままじゃ敵の思う壺……」


『チェルシーさん! シャロさん!』


『ユウ殿、落ち着いてくだされ! たとえ分断されても、拙者が全員のサポートをバッチリこなしますぞ! 心配はご無用にござる!』


 チェルシーとシャーロットが霧に呑み込まれ、いずこかへと消えてしまう。焦るユウに俊雄とヴィトラが声をかけ、落ち着きを取り戻させる。


『だそうだ、小僧。これは考えようによってはチャンスでもあるぞ? 分断されたということはだ、その分敵の各個撃破による戦力の破壊が可能ということだ』


『確かにそれもそうですね。分散すれば、それだけ捜索隊の救助も短く済むかもしれません』


「オーホホホホ! ならばこうしましょう。誰が一番多く、残りの要救助者を助け出せるか競争ですわ! それくらいの心のゆとりがあった方が、万事上手く行きましてよ!」


「なるほど、そういう考え方もまあ……出来るか。というわけでユウくん、私たちは別のエリアに飛ばされてみるとするよ。もしかしたら、そこに義人隊のメンバーがいるかもしれないからね」


『分かりました、先に飛ばされたみんなも含めて……ミッションを成功させて、無事に合流しましょう!』


 ジャンヌの提案もあり、霧の不意打ちによって生まれたユウの焦りは完全に消えた。残る仲間たちに続き、ユウも赤い霧へと飛び込み別のエリアに向かう。


『デュフフフ、拙者がいれば百人力ですぞ! 豪華客船……いや、軍艦に乗ったようにドーンと構えてくだされ!』


『ええ、頼りにしてますよ! 俊雄さん!』


『……頼りに、ですか。嬉しいものですな、拙者日本にいた頃は……いえ、今言うことではありせんな。さ、参りましょうぞ!』


 霧の中で転移させられる途中、俊雄はユウの言葉に寂しそうな声で答える。ある程度彼の過去を察したユウは、何も言わず霧の先を見つめていた。



◇─────────────────────◇



「ここは一体……どこかしら? 随分と甘ったるい香りがするけれど」


 少しして、シャーロットを包んでいた霧が晴れる。彼女が送り込まれたのは、見渡す限り全てがお菓子で出来た森だった。


「ある意味壮観ね、これは。木は棒型のチョコレート、道に落ちてる小石は……見たところマシュマロかしらね? ユウくんが見たら大喜びしそうだわ」


 クッキーやマシュマロ、チョコレートにキャンディ……木々から地面の土、森の中を流れる小川まで。その全てがお菓子で構成されており、甘い匂いを放っていた。


 敵が創り出したものでなければ、ユウとのピクニックに最適だったのに……などと考えながら、シャーロットは道を歩く。途中、マジンフォンによる通信を試みるが……。


「ダメね、通信機能だけ使えない……。敵が妨害してるせいね、これじゃユウく」


『心配はありませんぞシャーロット殿! 拙者が全員の状況を把握し』


「きゃあああああ!? いきなり大声で話しかけないでもらえるかしら!? ビックリしたじゃない!」


『お……おうふ……。申し訳ありませぬ……』


 マジンフォンの通話機能を封じられ、どうしたものかと悩むシャーロットの耳元に俊雄の大声が響く。外部との通信までは遮断されていないとは思っていなかったため、シャーロットは仰天してしまう。


「でも助かったわ。トシオさんとの通信が出来るなら、どうにかして皆と……?」


『ふむ? 如何なされましたかな?』


「こっちの方からいい香りがするわね。何かあるのかしら……。調査してみるわ、サポートをお願いね」


『御意!』


 落ち着きを取り戻したシャーロットの鼻に、一際甘い香りが届く。香りがする方向へしばらく歩くと、視界が開けて広場に出た。


 そこにあったのは、全てがお菓子で造られた大きな家だった。壁はクッキー、屋根は板チョコ、ドアノブはアメ玉。


 パンケーキの窓に、長いリング状のラムネで出来た煙突……。まさに、子どもが憧れるだろうお菓子の家がそこにあった。


「あら、これは驚いた。こんなところに大きな家……それも、お菓子で作られたのがあるなんて。そりゃ甘い香りもするわよね」


『お菓子の家……。だとするともしや』


「ふふふ、そうさ。ようこそ、僕たちの自慢の家へ。パラディオンのお姉さん?」


「せっかく来てくれたんだもの、歓迎してあげる。私たち……ヘンゼルとグレーテルの兄妹が、ね」


 お菓子の家に近付き、まじまじと観察をするシャーロット。その時、どこからともなく幼い少年と少女の声が響く。


 シャーロットが後ろへ振り向くと、来た道を塞ぐようにくすんだブロンドの髪を持つ二人の少年少女が立っていた。少年は白いシャツと青いオーバーオール、少女は赤と黒のチェック柄のエプロンスカートを身に着けている。


「貴方たちね? 私に声をかけたのは」


『シャーロット殿、その二人はヘンゼルとグレーテル! おとぎ話のタイトルである者たちですぞ!』


「ええ、ミサキからそのおとぎ話は聞いているわ。なかなかアグレッシブな子たちみたいね、目の前の二人もそうかは知らないけど」


 ヘンゼルとグレーテル。これもまた、現代日本ではよく知られた昔話だ。口へらしのために捨てられたヘンゼルとグレーテルの兄妹が、森の中にあるお菓子の家に迷い込む。


 そこに住む人食いの魔女をやっつけ、家に貯め込まれていた財宝を土産に帰還する……という物語だ。


「ふふふ、僕たちが相手でラッキーだったねお姉さん。他のオトギマスターズと違って、僕らは優しいからさ」


「うん、お姉さんが幸せいっぱいの笑顔のまま死なせてあげる。たくさんのお菓子を、お腹いっぱい詰め込んでね! それっ、キャンディレイン!」


 シャーロットが対峙した瞬間、グレーテルが先制攻撃を放つ。指を鳴らし、青空から大量の黄色いアメ玉を大量を降り注がせる。


 真っ先に落ちてきた一つを避けた後、シャーロットは敵を見据える。おとぎの国では、本来の力が意味を為さない。


「トシオさん、頼んだわよ! あの二人を相手取るのに相応しいフィクション、用意してちょうだい!」


『お任せあれ! 相手がお菓子パワーの使い手ならば……これで行きましょうぞ!』


 シャーロットの背中に長方形の穴が出現し、そこに俊雄のチート能力で創られたビデオテープがスロットインされる。そして、テープに込められた力が……解放された。


「クックパワー、ミラクルメークアップ! 料理は真心、隠し味はたっぷり愛情! 食戦少女、ハニークック見参! ……って、何よこのふりふりの衣装は!?」


 光がシャーロットの身体を包み、その容姿を変化させる。光が消えると、そこにはピンクと白を基調にしたコック衣装を身に纏ったシャーロットが立っていた。


 コック用のエプロンを基本にしつつ、女児が好みそうな大きいスカートにハートのマークがふんだんにあしらわれた……普段の彼女ならまず着ないものだ。


『お菓子には料理で対抗ですぞ! 女児向け番組【ミラクルお料理♪ハニークック】ならば必ずや勝てましょう!』


「くうっ……恥ずかしいけど、これが効果的だっていうならやってやるわ! さあ、お菓子ばっかり食べてる坊やたち? 栄養バランスの取れたご飯を食べる時間よ!」


「えー? 嫌だなあ、僕たちお菓子があればそれでいいよ。ねえ? グレーテル」


「そうそう、私お野菜嫌いだもん。だから返り討ちにしてあげる!」


 恥ずかしさをこらえ、シャーロットはヘンゼル・グレーテル兄妹へ宣戦布告する。味方が分断されたなか、それぞれの戦いが始まった。

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― 新着の感想 ―
言ってる側から洋物な奴が出てきたが(ʘᗩʘ’) シャーロットよ、この際だから料理を覚えたらどうだ?(´-﹏-`;) ユウにオニギリ振る舞うだけじゃ妻は務まらんぞ(⌐■-■)
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