133話─戦え! 超神戦隊バトルオリンポス!
超神戦隊バトルオリンポス。ユウたちが変身したのは、俊雄が子どもの頃に放送されていた、バトル戦隊シリーズの第二十六作目となる特撮番組だ。
ギリシャ神話の神々の血を引く男女がその身に宿る神の力を振るい、タルタロスの封印を破りよみがえったタイタン帝国と戦う。という物語だ。
戦隊シリーズ初となるイエロー系カラーの主人公や、凝りに凝った武装や小物、敵であるタイタンの神々の個性豊かさから歴代でも上位の人気がある。そう俊雄は語った。
……ユウたちが敵味方入り乱れる、大乱闘を繰り広げている最中で。
『というわけでですな、拙者にとってはひじょ~に思い出深い……』
「だあ~、わぁったからちょっと黙っててくれねえか!? さっきから早口で捲し立てられて集中力が削がれんだよ!」
『ブヒィッ! 申し訳ありませぇん!』
延々頭の中に響く俊雄の声にキレつつ、バトルハーデスに変身したチェルシーは己の相手を見据える。彼女の相手をしているのは、鎚頭が巨大な子安貝の形をしたハンマーを振るう大男だ。
「フッハハハ! 貴様の相手はこの俺、中納言石上の麻呂が相手をしてやるぜ!」
「ハッ、いいねえ。闘り合うなら大男の方が気合い入るってもんだ!」
「チェルシー、ヤバくなったら手助けに入るわ! 思う存分戦いなさい!」
「ホホホ、そのようなことわらわが許すと思うかえ? 竹林よ、奴らを分断せよ! 手助けなどさせはせぬぞ!」
獲物を見定め笑うチェルシーに、シャーロットが声をかけた直後。かぐや姫こと姫華によって、地面を突き破り竹林が勢いよく生えてくる。
その結果、ユウたちは完全に分断されてしまい一対一の状況で戦わざるを得なくなってしまう。チームプレイが肝の戦隊ヒーローにとって、かなり不利となる展開だ。
「チッ、あのパッツン女いきなりやってくれるぜ。でもよ、いいのか? てめぇらも協力出来ねえんだぜ、この状況じゃあよ」
「ハッ、問題ねえな。こっちはスタンドプレーの方が上手いんだ、てめぇなんざすぐにミンチにしてやるよ!」
一方、かぐや姫と五人の皇子たちも完全に分断されることとなった。が、石上の麻呂は意に介していない。よほど自信があるのか、一人でも勝つ気でいるようだ。
「そうかよ、ならやってみな? バトルハーデスの力を得たアタシに勝てるってんならよぉ! 神器顕現、アビスサイズ!」
ハンマーを構える石上の麻呂を見据え、己が武器を呼び出すチェルシー。現れたのは、バトルハーデスが用いる漆黒の大鎌『アビスサイズ』。この武器を用い、番組内ではタイタン帝国と戦っていたのだ。
『さあ、どんどんやってくだされチェルシー殿~!』
「言われるまでもねえ、こいつであのデカフツの命を刈り取ってやるぜ!」
俊雄のエールを受け、先制攻撃を仕掛けるチェルシー。普段の得物であるハンマーとはまるで使い勝手が違う大鎌の扱いに、苦戦させられると思いきや……。
「オラァッ! こいつを食らいなっ!」
「くっ、なんというパワー……! この俺が、たかが女なんぞに押されているだと!?」
「ハッ、その巨体は見せかけかよ? 本物のド迫力パワーってのはな、こういうのだっつーのを見せてやる!」
歴戦の戦士たるチェルシーにとって、得物の違いなどなんの苦にもならない。そう言わんばかりの大攻勢を展開してみせた。
石上の麻呂は逆に押され、タジタジにされてしまっている。おとぎの力を得れば、パラディオンなど恐るるに足らずと思っていたアテが外れたからだ。
「グッ、くそっ! 舐めるんじゃねえ、ようやく俺の第二の人生が始まったんだ! こんなところで負けて終われるか!」
「第二の人生……か。テメェらリンカーナイツはよ、どうして揃いも揃ってその第二の人生を正しく送れねえんだ。自分の欲のために、人を傷付けて……そんなのが認められるわけねえだろうが!」
「うぐおっ!」
「ユウやミサキ、トシオやキヨさんたちを見てみろ! どうしてあいつらみたいになれねえんだ! そんなに……自分の好き勝手生きるのが! 何よりも大切だってのかよ!」
麻呂が反撃に臨もうと、何気なく口にした言葉。それが、チェルシーの怒りに火を付ける。最愛の妹を失う原因となった、リンカーナイツ。
かつてよりかの者たちに募らせ、そして悟の一件で沈静化した怒りが今……再び激しく燃え上がる。大鎌で斬撃を繰り出しながら、チェルシーは叫ぶ。
「ぐはっ! 黙りやがれ、そんなのてめぇら未開種だって同じだろうが! 何で殊更俺たち異邦人だけが糾弾されなきゃならねえ? それこそ差別……がふっ!」
「ヘリクツ捏ねてんじゃねえぞオラッ! 悪いことすりゃ罰されるのは当たり前だ! だがわざわざよぉ、テメェらはよその大地に転生だの転移だのしてきた上で迷惑かけてんだ! 余計に非難されるのは当たり前だろーが!」
チェルシーに反論と反撃を試みるも、そのどちらもあっさりと叩き潰された。膝蹴りを腹に食らい、吹き飛ばされる石上の麻呂。その時、竹やぶで分断された他のエリアから敵の悲鳴が響く。
「う、嘘だろぉ!? 我が御鉢の鎧が……うげえあっ!」
「そんな丸っこいダケの鎧なんて、今のワタシには紙切れも同じデスマス! あそれそれ、ボコボコにしてやるデース!」
五人の皇子の一人、婚約の対価にかぐや姫に仏の御鉢を要求された石作皇子はブリギットと交戦していた。狩りの女神の力を宿した一対の篭手、ムーンアバランチを装備したブリギットに一方的にリンチされているようだ。
「ぐぬう、何故だ!? この珠には龍神の力が宿っているんだぞ!? なのにこんな小娘如きに後れを取るのだ!?」
「オホホホホ、魔を滅する神器はその気になれば神すらも滅せますの! 龍神だかなんだか知りませんが、このバルファラートの前では赤子同然でしてよ!」
遠くの竹林から、攻撃を食らって跳ね上げられたのだろう龍の頭部がチラリとチェルシーの視界に入る。唯一自前の武器でおどきの世界に対抗出来るジャンヌが、まさに無双しているようだ。
五人の皇子の一人、大納言大伴御行は原典と違いかぐや姫に要求された龍の球を手に入れられたようだが……全くの無意味に終わろうとしていた。
「チイッ、あいつら何をやってやがる……! このまま全滅などと失態を演じたら、姫になんと言われるか……!」
「ハッ、そんな心配する必要はないぜ。大将同士の対決と洒落込んで、ユウを狙ったんだろうがよ。アンタらの親玉、真っ先にくたばるだろうさ!」
残る皇子たち、原典にて蓬莱の玉の枝を求められた車持王子と火ネズミの皮衣を要求された右大臣阿部の御主人はすでに倒されたのか反応がない。
このままでは主に顔向け出来ないと焦る石上の麻呂に、チェルシーは余裕たっぷりに口撃をかます。その話に出た当の本人、ユウはというと……。
『ビリビリを食らいなさい、こゃーん!』
「ぐうっ! わらべのクセになんと俊敏な……狐というよりネズミじゃのう! それも薄汚いネズミじゃ!」
『ネズミですか……ミサキさんに教えてもらったんですけど、ネズミって昔話だと結構いいポジションにいることが多いんですって。なら、それもアリかもしれませんね! ま、汚いのは人を傷付けることしかしないそっちの方ですけど!』
「ぬぬぬ、減らず口を叩くでないわ!」
雷神ゼウスの如き高速ステップを駆使し、無数の竹槍を操るかぐや姫を翻弄していた。念動力で飛んでくる竹槍をかわし、稲妻型の刃で切り裂く。
稲妻剣の中央にあるグリップを握り締め、ユウは駆ける。獣のカンを頼りに、地面から突き出してくる竹槍をかわし……勢いを落とすことなく、敵の懐に飛び込んだ。
「くうっ、こんなあっさりと接近を許すなどあり得」
『さあ、覚悟しなさい。断罪の時間です! ライトニング・クロスドライブ!』
「むぐおおお!!」
両手に持った剣を斜めにクロスする軌道を描き、一気に振り下ろすユウ。黄金色の電撃がほとばしり、かぐや姫の全身を焦がしながら切り裂いた。
『フン、だいぶ呆気ないな。小僧、さっさと先に進め。手応えのありそうな敵を早く見つけるのだ、次は我が殺る』
『全く、注文だけは多いんですから。まあ、先に進むというのはどうか』
かぐや姫が乗り物ごと撃沈し、沈黙したのを確認したヴィトラがユウに声をかける。やれやれとかぶりを振り、ユウが答えるなか……。
『ユウ殿、まだ終わってはおりませんぞ! 何故なら戦隊もののお約束……』
『!? な、なんですかこの揺れは!? ……って、なんですあれーーー!?』
『……巨大化した敵とのバトルが残っていますからな!』
そこに俊雄は割って入り、警告を発する。直後、かぐや姫の姿が消え地面が大きく揺れ始めた。竹林が消滅し、大地に亀裂が走り……。
そこから、巨大な怪物が姿を現す。まだ、戦いは終わらない。怪物との死闘が、幕を開ける。




