132話─新たなるミッション!
ジャンヌの加入から数日後、俊雄の能力を核とした新たなる遠征部隊が組織された。今回隊長を務めるのはユウ、その補佐をするのはジャンヌだ。
彼らに与えられたミッションは二つ。一つは前回の調査で消息を絶った義人隊の捜索及び救出。もう一つは、ガンドルク王はじめリーヴェディア国民の生死の確認。
『果たして、ガンドルク王たちは生きているんでしょうか……。心配ですね、絵本化のメカニズムがアレですから』
「わたくしも話には聞きましたが、なんともおぞましくグロテスクな方法ですわね。望み薄ですが、全力を尽くしましょう」
『ええ、例えおとぎの国の住民になっていたとしても。生きてさえいれば、霧の外へ逃がしてあげる方法を探せますから。……そろそろ時間ですね、行きましょうジャンヌさん』
「承知致しました。このジャンヌ、破槍バルファラートと共に。ユウ様をお守りしましょう」
出立前、そんなやり取りを交わしたユウとジャンヌはお馴染みの仲間たちを率いてガンドラズルと霧の境界線へ向かう。ちなみに、今回憲三は留守番をしている。
すでにおとぎの国の住民に変えられてしまっている以上、霧の中に戻るとどんな悪影響を受けるか分からないからだ。本人……もとい本猫は申し訳なさそうにユウたちを見送った。
「サ、突入するデスよゆーゆー。ぬーぬー、副隊長の座を譲ってあげたんデスからジャンジャン働くデスマス。期待してるデスよ」
「オーッホホホ! わたくしにお任せなさいませ、先輩方のお手を煩わせるような事態にはなりませんことよ。これでも、それなりに実績を積んだパラディオンですのよ?」
今回はジャンヌの実力を多角的に測る、という名目で一番の新参である彼女に副官の座が回ってきた。特に一悶着あったブリギットを認めさせてやろうと、ジャンヌは息巻く。
「へへ、頼もしいな。さて、通信用の魔法石を耳に……っと。あーあー、聞こえるかトシオ? そっちの準備はどうだ?」
『ムホホホ、拙者も準備完了でござるよ。悪の異邦人は逝ってヨシ、でござる!』
「……いつの時代のネットミームなんだい、それは」
『ヌホオオオ!? なんとミサキ殿、ご存知ない!? か、カルチャーショック……』
もちろん、俊雄もユウたちを援護するため万全の態勢を整えている。不測の事態発生のリスクを抑えるため、同行するのではなく本部からチート能力を付与することで協力を行うことに。
ユウたちに配布された、耳に詰めて使うインカムのような形式の連絡用魔法石を用いてリアルタイムでやり取りをする形だ。テストを兼ねてやり取りしている間に、霧の元にたどり着く。
『さて、ここからは何が起こるか分からないゾーン・レッド。……皆さん、覚悟はいいですか?』
「おうよ、アタシらはいつでも覚悟完了済みだぜ! さ、行こうぜユウ。このふざけた霧を創り出したクロハラとかいう奴をぶっ飛ばしによ!」
「チェルシー? 今回の目的は義人たちの救出よ。一度にあれこれやろうとすると失敗に繋がるわ、焦らず少しずつ作戦を進めていきましょう」
「……ま、しゃあないか。よし、行くぜ。アタシが先頭になる、何かあったら……」
【9・6・9・6:マジンエナジー・チャージ】
「ビーストソウル・リリース! ……って感じでよ、アタシの嗅覚で嗅ぎ取って知らせる。じゃ、突入だ!」
『はい! 無事ミッションを成功させましょう! えい、えい……』
「おー!」
拳を天高く突き上げ、気合いを入れるユウ一行。チェルシーを先頭、ブリギットをしんがりに霧の中へと歩を進める。霧の発生源からもっとも遠い外縁部なだけあり、まだ完全には侵食されていないらしい。
リーヴェディア王国の街並みが残っている中を、ユウたちは慎重に進む。いつ、どこからおとぎマスターズが現れてもいいように。
「ユウ様、お気を付けくださいまし。濃霧で視界が悪いので、つまずきやすくなっていますから」
『ありがとうございます、ジャンヌさん。転ばないよう気を付け……! チェルシーさん、早速来ましたか?』
「ああ、臭うぜ。数はざっと六か? どういうカラクリかは知らねえが、こっちの人数を把握してやがるな」
霧の中に入り、しばらく進んでいくと……突如、チェルシーが立ち止まり右手を上げ『異変アリ』のハンドサインを送る。侵入者に気付き、敵が来たのだ。
「ムフフン、もう来たデスか。なら、早速返り討ちにするだけデスマス!」
「ああ、そうしよう。俊雄、援護は頼んだよ? 君が頼りだからね」
『デュフフフ、もちのロンですぞ! 拙者にお任せあれ!』
「……やっぱり古いなあ」
そんなやり取りをしていると、進路の先から強烈な殺気が飛んでくる。その直後、姿を現したのは……。
「ほう、これはこれは。懲りずに黒原様の楽園に足を踏み入れるとは。ホホホ、パラディオン共は学習能力が欠如しておるようじゃな」
『フン、これまた珍妙な装束を着た連中が出てきたな。ミサキ、奴らの元ネタはなんだ?』
「あれは……かぐや姫だね、付き従ってるのはたぶん物語の中で姫に求婚した五人の皇子たちだろう。……なるほど、私たちを迎え撃つのにピッタリな人数だ」
シャラン、シャランと鈴の鳴る音と共に現れたのは……短く切られた竹の節の形をした、浮遊する乗り物に乗った着物姿の女。そして、それに付き従う五人の青年たち。
ヴィトラに問われ、ミサキは即座に敵の正体を見抜く。【かぐや姫】……ミサキや俊雄をはじめとした、日本人なら誰もが知る昔話の一つだ。
「かぐや姫……ね。義人から聞いたことがあるわ。竹から生まれた美人が、求婚してきた相手に無理難題を押し付けて追い返した後月に帰るお話だって」
「んだよソレ、テラ=アゾスタルの昔話ってぶっ飛んだ内容のモンしかねえのか?」
「ホホホ、我が国が誇る偉大な昔話に対して随分と無礼なものよ。まあよい、今はかぐや姫に姿を変えているが……このわらわ、安藤姫華と!」
「我ら皇子同盟が貴様らを葬り去ってくれる! さあ、おとなしくおとぎの国の一員になるがいい!」
シャーロットの説明を聞き、またしても呆れ返るチェルシー。そんな彼女らに、おとぎマスターズは宣戦を布告する。それに合わせて、俊雄が援護を行う。
『デュフフ、早速拙者の出番ですな! さあ、フィクションにはフィクションで対抗するのですぞ! そいやあああ!!!』
『この感覚……力が溢れてきます!』
ユウたちの背中に出来た穴の中に、俊雄の力でワープしてきたビデオテープが挿入されていく。直後、まばゆい光がユウたちから発せられ姫華たちの視界を奪う。
「ぐうっ! 面妖な、先制攻撃を……むう!? 何故じゃ、身体が動かぬ!」
『ムホホホ、当たり前ですぞ。何故なら! 戦隊ヒーローの登場シーンでの攻撃は御法度! それがお約束なのですからな!』
目を腕で庇いつつ、姫華は皇子たちをけしかけようする……が、身体を動かせないことに気が付く。俊雄の声が響くなか、光が収まっていき……。
『悪がはびこり、弱き者たちが苦しむ世界。悲しみを断ち切るため、神々が邪悪を討つ!』
「ぬっ!? な、なんじゃこの口上は! どこかで聞いたことがあるような……」
光が消えると、そこには俊雄の手でフィクションの存在へと進化したユウたちの姿があった。軽快な音楽が響くなか、ユウたちは順番に叫ぶ。
『猛る雷、主神の証! バトルゼウス!』
最初に叫んだユウは、金色のボディスーツに身を包み稲妻型の剣二振りを構えた姿に。
「逆巻く大波、悪を呑む! バトルポセイドン!」
二番目に叫んだジャンヌは、青色のボディスーツを纏いバルファラートを握り締め。
「燃える太陽、正義の闘志! バトルアポロン!」
三人目のミサキは、赤色のボディスーツを身に着け両腕に装着された大型の篭手を打ち鳴らす。
「溢れ出す愛、守るべき者のために! バトルヴィーナス!」
その次に口上を述べたシャーロットは、ピンク色の露出度高めのスーツを着ていた。手にした弓を構え、ウインクをする。
「脈打つチカラ、悪を討つタメニ! バトルアルテミス!」
五人目、ブリギットは白いボディスーツに身を包んでいた……が、スタイルの良さに対応しきれないのかかなりパツパツだった。
「冥府より来たる、裁きの死神! バトルハーデス!」
最後の一人、チェルシーは黒いボディスーツを纏い禍々しい大鎌を構える。全員が名乗りをあげた後、一斉に叫ぶ。
「超神戦隊! バトルオリンポス見参!」
「クッハハハ! ああ、そうであった。わらわが童の頃にテレビで放送されておったな。まこと懐かしきものよ、よい余興じゃ」
『ただの余興じゃあないってこと、教えてあげますよ。さあ、神々の裁きを受けなさい!』
六対六、大乱闘が今……幕を開ける。




