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116話─招かれた先で

『ここは……なるほど、一足先に中枢近くへ引きずり込まれたわけですか』


 時は少しさかのぼる。憲三と分断され、基地の深奥へ強制転移させられたユウは一人周囲への警戒を強めていた。


 連れてこられたのは、果ての見えない巨大な屋内空間。そこかしこに天を突く螺旋階段が建ち並ぶ、異様な光景が広がっている。


「よお、ユウ。久しぶりだなぁ、え? 覚えてるか? オレのことをよ」


『! その声は……ゴルンザさん!? どうしてこんな……まさか!』


 ユウはすぐに、ここが空間を拡張する魔法によって作り出された部屋であることを看破する。そんな彼の頭上から、聞き覚えのある声が響いてきた。


 忘れもしない、自分を捨てたかつての仲間の一人……ゴルンザ。以前戦った別の仲間、リリアルがそうだったように彼もまたアストラルに改造されたのだと。


 いるはずのない人物の声を聞いたユウは即座に勘付く。そして、それと同時にファルダードアサルトを構え──後ろへと跳んだ。


「おいおい、何避けてくれてんだよ。今の一撃でミンチにしてやるつもりだったのに」


『ゴルンザさん、その姿……やはり、あなたもアストラルに改造されていたようですね』


『フン、なんともまあ奇っ怪な姿だ。トンチキな芸術品を見ているような気分にさせられる』


 直後、ユウが立っていた場所に()()()が勢いよく降り立つ。現れたのは、岩石の塊のような巨躯へと改造されたゴルンザ……否、アストラルLだった。


 左手に巨大なモーニングスターを、右手に大剣を持ちユウを睨み付けている。立ち上がったその背丈は、ゆうに三メールを超えるほとだ。


「トンチキだぁ? ハッ、そんな舐めたクチ利けるのは今だけだぜ。こっちには切り札がいるんだからなぁ!」


『切り札?』


『む……気を付けろ、小僧。気配が一つ増えたぞ。恐らく、ソイツが奴の言う切り札だ』


 ゴルンザが大剣を床に打ち付けたのを合図に、空間の一角が歪む。そして、その歪みの中から新手のアストラルが姿を現す。


 黒色のボディに、骨格を模した鈍い銀色のプレートが全身に打ち付けられた威圧感のある体躯をしていた。だが、それ以上に異様なのは……。


『ほう、こやつ首が無いのか。まるでデュラハンだな、ククク』


『あのアストラルの顔……何故でしょうか、見ていると不思議な気分になりますね……』


 ヴィトラが言ったように、デュラハンの如く首の無い頭部だ。本来ならば肉体と繋がっているべきソレは、身体に取り付けられた透明なドーム状のガラスの中に収まっている。


「こいつはアストラルM改。てめぇをあの世に叩き落とすために魔夜とかいうのが用意した切り札だ。聞いて驚けよ、こいつの素体はな……ユウ、てめぇの前世でのオヤジだそうだぜ」


『……え?』


 生前の顔をそのまま用いたと思われる、どこか理知的な顔立ちのアストラルM改を観察していたユウにゴルンザが衝撃的な一言を投げかける。


 ユウが硬直した、その刹那。それまでうつろだったアストラルM改の目に光が灯った。邪悪なる輝きに満ちた、おぞましい光が。


『小僧、呆けている場合か! 来るぞ!』


『ハッ! こゃん!』


「……目標、攻撃不発。第二打、発動」


「おいおい、勝手に始めんなよな? オレも混ぜろ、ユウをぶっ殺したくてうずうずしてたんだからよぉ! ずっとなぁ!」


 突如起動したアストラルM改の突進を合図に、戦いが幕を開けた。虚空から呼び出した大槍を振るい、アストラルM改はユウへ猛攻を仕掛ける。


『ふむ、随分とトゲトゲしい槍だ。小僧、アレに触れぬ方がよい。不吉な気配を感じるのでな』


『奇遇ですね、ボクもそう思って……よっと! いましたよ。多分、あの無数に生えたトゲには毒かなにか』


「お喋りしてるたぁ余裕だな! もう喋れねえくらい痛め付けてやる!」


 アストラルM改が振るう、無数のトゲが生えた四角錐型の槍身を持つランスを避けつつ螺旋階段に飛び乗るユウ。敵は二人、気を抜けば少しのミスがすぐ死に直結する。


「チッ、逃がすか!」


(さて、まずはどっちから倒しましょうか。ここはやはり、実力をよく知ってるゴルンザさんから……)


 ゴルンザの振るうモーニングスターをかわし、次々と螺旋階段を飛び移りながらユウは思考する。そんななか、ふと視界にアストラルM改の姿が映った。


「……ユ、ウ……」


『!』


『小僧、気を抜くなと言ったろう! デカブツが来る、避けよ!』


『!? うわわわ!』


 直後、アストラルM改は少年の名を呟く。先ほど放った、機械のような無機質なものではない……どこか寂しさを感じる声で。その声に、ユウは胸を締め付けられる。


 結果、ゴルンザの攻撃を回避し損ねかけてヴィトラに叱責された。気を引き締め直すも、ユウの心に芽生えたざわめきは消えない。


(ゴルンザの言ったこと、本当なんでしょうか? あのアストラルが……前世での、ボクの父親……)


 ユウは、前世で父と触れ合ったことは一度たりとてない。物心ついた時には、忌まわしい部屋に閉じ込められ魔夜から帝王学という名の虐待を受け生きてきた。


 ゆえに、父の名も、声も、温もりも、愛情も。何も知らない。ゴルンザが自分を動揺させるための嘘ではないか、そうとも考えたのだが……。


(……ダメだ、さっきの声が頭から離れない。あのアストラルは、本当に……)


「考え事かぁ? 余裕だな、え? じゃあこうしてやるよ! オラァ!」


『うわっ! くっ、階段の支柱を壊すつもりですか!』


『全力で妨害しろ、小僧。銃の使い手たる貴様にとって階段の高低差はアドバンテージになる。それを失えば……分かるな?』


『ええ、分かってますよ! でも……そう簡単にはいきそうにないですね! てやっ!』


「損傷確認……損害率、四パーセント。修復機能不要……戦闘続行」


 考えても答えは出ない。ならば、戦闘を終わらせた後に答えを知るのみ。そう結論づけたユウは、らせん状階段の支柱を破壊して倒壊を目論むゴルンザを銃撃する。


 踊り場や階段を利用した攻防一体の動きは、二対一で不利に立たされているユウの強みとなるもの。それを奪われれば、勝機は少なくなる。


 ゆえに、階段の破壊は出来るだけ阻止しなければならない。だが、ゴルンザへの射線に割って入ったアストラルM改がそれを許さない。


『仲間を守った、か。それなりに連携は出来るようだな、奴らは。ただのでくの坊ではないというわけだ』


『そのようですね。でも、相手が割って入ったおかげで支柱への攻撃は止まりました。今のうちに……チェンジ!』


【トリックモード】


『それっ、ファントムシャワー!』


 アストラルM改の行動で相手の攻勢が一時やんだのを好機とし、アドバンスドマガジンを用いて反撃に移るユウ。分身を五人作りだし、一気に数の優位に立つ。


 一斉に飛び出した分身たちが螺旋階段の途中にある踊り場に陣取り、下にいる敵に向かって一斉射を浴びせる。これで逆転、と一安心していたユウだが……。


「チッ、増えやがったか。だがそれくらいは想定済みだ、やれ! アルトラルM改!」


「了解。ソウルシェイカーシステム起動。対象への攻撃開始」


『……? 一体なにを──!?』


 ゴルンザがドーム型の結界を張り、自身とアストラルM改を一斉射から守る。その中でAアストラルM改は左手を音叉に変形させた。


 ユウが訝しむなか、音叉が震え断末魔にも聞こえるおぞましい金属音が鳴り響く。すると、少年の身体に異変が起きた。


『う、くう……!? 身体が、苦しい……! 一体、なにを……!』


「クククク、驚いたか? アストラルM改はなぁ、てめぇとの親子の繋がり的か魂の……ええい、めんどくせえ! 要するに、この音が鳴ってる限りてめぇは苦痛を味わい続けるってことだ!」


『チッ、面倒なことを。仕方あるまい、我が少し手助けしてやるか。小僧を打ち倒す役目を有象無象に譲るつもりなどないからな』


 途中で説明を面倒くさがったゴルンザが端折ったため詳細は不明だが、音叉から鳴る音が苦痛の正体のようだ。まともに動けないユウに変わり、ヴィトラが肉体の操作を行う。


『喜べ、小僧。あの音叉の破壊だけは我が代行してやる。この多大なる慈悲をムダにするなよ? ああそうだ、勘違いはするな。貴様を助けるためではない、我以外に倒されるのが気に入らぬだけだ』


『……お助け、どうもですよ!』


 ツンデレ全開なヴィトラに苦笑しつつ、肉体の主導権を譲るユウ。戦いはまだ、始まったばかり。勝利するのは果たして……。

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― 新着の感想 ―
弱い犬ほどよく吠える言うが(ʘᗩʘ’) 父親の顔も知らないとは(゜o゜; 母親のアイツにとっても汚点扱いだったのか(٥↼_↼)
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