106話─カチ込め! ユウと憲三!
『ふう、とりあえず調べた限りでは二十四カ所……これだけ基地の場所を把握出来れば十分ですかね?』
「ええ、あっしもそう思いやす。後は順次カチコミ仕掛けて、片っ端から潰しつつあの女がいるか確認しやしょ」
早速パラディオンギルドに足を運び、職員に事情を話して秘蔵資料を見せてもらうことにしたユウたち。資料には、現在ギルドが座標を特定出来た基地の場所が記されていた。
もっとも、座標の特定しか出来ておらずどんな罠が待ち構えているか分からないということで、一般に開示されず諜報部によるさらなる詳細情報の追加を待っている段階だ。
しかし、それでもユウと憲三にとっては十分。一つでも多くの基地を潰して打撃を与えつつ、魔夜のいる基地の情報を探せればそれでいいのだ。
『では、ご飯を食べてから出掛けましょう。ニムテから一番近い基地に……』
「やあ、珍しいじゃないか。ユウくん、君がギルドに顔を出して……おや、そちらの方は?」
『あ、クライヴさん。紹介しますね、こちらは加藤憲三さんです。まあ、ちょっとワケありでして……ボクのところで一緒に活動してるんです』
「お初にお目にかかりやす、あっしは坊ちゃんの部下でやして。ま、これからボチボチよろしく頼んます」
「ああ、こちらこそ。よろしく、ケンゾウさん」
情報収集も終わり、ギルドに併設されているカフェで昼食を摂ってから出撃……というところで、久しぶりにクライヴとバッタリ顔を合わせるユウ。
憲三に関してはシークレット事項が多いのでやんわり自分の仲間であることを伝え、お互い自己紹介を済ませる。せっかくだからと、三人で食事をすることに。
「……へえ、リンカーナイツの基地を潰しに。大丈夫か? 情報もロクにない基地に乗り込んで罠に嵌められたら生きて帰れるか分からないぞ? 俺も同行しようか?」
『大丈夫ですよ、ギルドマスターから許可ももらっていますし。それに……今のボクはやる気に満ちてますから。憲三さんもいますし負けませんよ、ええ!』
「クライヴの旦那、ご安心くだせえ。坊ちゃんはあっしの命に代えても守り抜きやす。そして二人で帰ってきますんでね、旦那は祝い酒でも用意してて待っててくだせえな」
たった二人で基地を潰しに行こうとするユウたちを心配し、ついて行こうかと提案するクライヴ。が、憲三はやんわりとその申し出を拒否する。
アパートメントを出る前に、二人で決めていたのだ。魔夜との戦いには、クライヴたち一般のパラディオンたちはおろかシャーロットたちすら関わらせない、と。
魔夜は直接触れた者の魂を削り取る凶悪無比なチート能力を持つ。ほんの僅かに擦っただけのミサキが、瀕死の重傷を負ってしまうほど強力なのだ。
(……これ以上、誰も巻き込みたくない。ボクの因縁は、ボクと憲三さんだけで決着をつける。大切な人たちを失ってしまう前に)
ユウの脳裏には、ずっと焼き付いていた。戦い傷付き、倒れたミサキの姿。そして、彼女を……自分を見下す魔夜の顔が。治療を受けているとはいえ、無事快復するか分からない。
もしミサキが帰らぬ人になってしまったら、それは自分のせいなのだと。ユウは己を責める。ゆえに、彼は全てを背負い込むことを決めたのだ。
共に前世の因縁を背負う憲三だけを連れ、食事を終えたユウはギルドを去る。その決意に満ちた、どこか危うさを感じる背中をクライヴはずっと見つめていた。
◇─────────────────────◇
数時間後、ニムテから西に数十キロ離れた沼地にやって来たユウと憲三。この沼は、自然に出来たものではない。リンカーナイツの基地を隠すカモフラージュのために生み出されたエリアだ。
『さて、まずは一つ目……ですね。サクサク終わらせていきましょう、最初でつまずいてなんていられませんからね』
【0・0・0・0:マジンエナジー・チャージ】
『ビーストソウル・リリース! さあ、行きましょう憲三さん! リンカーナイツ退治の始まりです!』
「合点!」
夕方になるまで待機し、リンカーナイツの構成員たちの気が緩むのを待って突入。不意を突いて殲滅、そのまま基地を探索して魔夜を探す作戦だ。
仮に魔夜がいればそのまま戦い、いなければ重要そうな情報をギルドに提出するため持ち帰る。いずれにせよ、やることは至ってシンプル。サーチアンドデストロイ。ただそれだけ。
『さて、まずは挨拶代わりに一発くれてやりましょう。ミサイル発射!』
ステルスモードにしたフォックスレイダーに乗り込み、沼地の上空に待機していたユウは派手に先制攻撃を決める。ミサイルを放って沼に偽装した地下基地への入り口を破壊し、まずは敵を誘き出す。
「おお、派手でやすね。沼が一瞬で消えちまいやしたぜ」
『ええ、自慢の武装……あ、出てきましたね。さあ、ここからは地上戦です。降りますよ憲三さん!』
「合点でやす!」
地下基地を覆い隠していた沼地の底が破壊されたことで、異変を感知したリンカーナイツのメンバーたちが大挙して現れる。ガルドクアッドを駆り、攻撃してきた者を探す。
「おい、どこだ!? 天井を吹っ飛ばしてくれやがったクソ野郎は!?」
「おかげでこっちは水浸しだ! 誰がやったか知らねえが見つけて取っ捕まえてぶっ殺してやる!」
沼の水が全部基地の中に流れ込み、ずぶ濡れになった構成員たちはかなりキレているようだ。殺気を振りまきながら周囲を捜索する彼らに、ユウと憲三が襲いかかる。
『ステルスモード解除! さあ、ボクたちが相手ですよ! リンカーナイツの下っ端たち! それっ、【庇護者への恩寵】発動……あれ!? な、なんで発動しないんです?』
「あっしがプロテクト機能を使って拒否してるからでやす。坊ちゃんへ償いをしなきゃならねえのに、その本人に助けられてちゃ本懐は果たせねえ。ってわけで、あっしへの助けは不要でがす」
『そうですか……でも、無理はしないでくださいね。二人で生きて戻らなきゃ意味がありませんから』
「もちろん、あんな木っ葉どもに……」
「いたぞ……って、あいつは北条ユウ……ごふぁっ!?」
「タマぁくれてやるつもりはありやせん!」
フォックスレイダーを駆り、急降下するユウ。その最中、自身のチート能力を発動して憲三を強化しようとする。が、能力が発動しない。
困惑するユウに、憲三はその理由を伝え後部座席から飛び降りる。ちょうど真下にいたリンカーナイツの下っ端を蹴り出し、ガルドクアッドを奪い取った。
「チィッ、いきなり攻めてくるなんて聞いてねえぞ! てめぇらかかれ、いくら手練れっても相手は二人。こっちが数は上だ!」
「ハッ、前世でもいやしたねぇ。数ばっかり誇って威張りくさるだけで、肝心の実力はたいしたことねえサンシタが。男は数じゃねえってこと、教えてやりまさあ!」
『ボクも負けてられません、これは……あの人を倒すための前哨戦。こんなところで躓いてはいられないんですから!』
銃の魔神へ姿を変えたユウは、フォックスレイダーの運転席に立ち身を乗り出す。そして、襲い来る敵目掛けて左腕のファルダードアサルトを連射する。
その周辺では、長ドスを呼び出した憲三がガルドクアッドを乗り回しながら襲ってくる敵の首を片っ端から狩っていた。ヤクザというより、暴走族のようななにかとなっていた。
「さあ、かかってきなせぇ。全員ここでタマ獲ってやりまさぁ! 覚悟しいや!」
『おお、勇ましいですね! ボクも負けてられません、新しくもらったアドバンスドマガジンをお披露目しましょう。チェンジ!』
【ブロックモード】
憲三にばかり負担はかけられないと、ユウは第五のアドバンスドマガジンをファルダードアサルトにセットする。果たして、その効果やいかに?




