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99話─サモンマスターの世界へ

 三日後、ユウたちがメソ=トルキアに赴く日がやって来た。迎えに来たリオに導かれ、一行はまずキュリア=サンクタラムにあるグランゼレイド城へと向かう。


「さて、ユウ以外の三人はここで一旦待機しててね。反応があった敵は一人……なんだけども、別のポイントに新手が出てこないとも限らないから」


「私たちは増援に備えておく、と。そういうことですね? リオ様」


「そうそう、シャロちゃんは察しが良くて助かるよ! さて、ユウ。準備はいいか?」


『はい、パパ。……ありがとうございます、故郷に帰ってきて……少し、心が落ち着きました』


 城の一室にて、リオは現在の状況をユウたちに伝える。すでにキルトは一部の仲間を連れて双子大地に行っていること。彼の不在を突き、敵がメソ=トルキアに現れたこと。


 その迎撃をせんと、残っていたサモンマスターたちが出撃したものの苦戦を強いられていること。それらを聞き、ユウは戦う準備を行う。


 タワーシールドの形をしたワープゲート、界門の盾を前にしてユウはリオに感謝の言葉を伝える。気分転換の機会をくれて、ありがとうと。


「いいんだ、ユウ。君の身に起きたことはブリギットちゃんから聞いたよ。……許せないよね、せっかく人生をやり直してるのにさ。それを台無しにしようなんてする【ピー】は」


『ぱ、パパ……?』


「大丈夫、この一件が片付いたら僕も力を貸すから。一緒に乗り越えよう、過去を。そうして、嫌な記憶は全部追い出して楽しい思い出を詰め込もう!」


『……はい!』


 力強いリオの後押しもあり、少し元気を取り戻したユウ。マジンフォンとファルダードアサルトを手に、界門の盾を潜る。その先にある、未知の世界へ行くために。



◇─────────────────────◇



「きひゃひゃひゃひゃ! 全員串刺しにしてやるよ、羽根にまみれて死になぁ!」


「ああもう、まずいわね……こんな状態じゃ、サモンカードを使う余裕なんてないわ!」


 メソ=トルキアにある、広大な湿原。歩行者用の通路と広場を舞台に、三人の乙女が青い天使と戦っていた。羽根が降り注ぐなか、オレンジ色のドレスを纏う赤いツインテールの女が叫ぶ。


 彼女の近くにいるのは、露出度の高い紫色の踊り子装束を身に着けた金髪のポニーテールの女性。そして、銀色のスーツとヘルメットを身に着け、背中に半壊した飛行用バックパックを装備した人物だ。


「エヴァ、どうする? 応援を呼んでいる暇はない、このままでは全員やられるぞ!」


「分かってるわよ、フィリール! だから必死に考えてるんじゃないの!」


 赤いツインテールの女……エヴァンジェリンは金髪の女……フィリールの問いに答えながら羽根の雨から逃げ惑う。もはや、手詰まりと言っても過言ではない状況だ。


「きひゃひゃひゃ! もう諦めろ。テメェらはこの俺様に! 【サモンマスタールガ】にゃあ勝てねえのさ!」


「くぅ~、アカンでこれは! あんの犬っころ、空飛べるようになって調子乗っとるわ!」


「アスカのバックパックが壊されてなければ……歯痒いわね、もう!」


 空から攻め立てる天使……サモンマスタールガことアグレラは勝ち誇る。もはや自分の敗北はない、と。だが、その攻勢も終わりを迎えることになる。


「きひゃひゃひゃ、このまま全員串刺しにして」


『そうはいきません! 悪いやつはこうしちゃいますよ!』


「きひゃ!? うごあっ!」


 逃げ惑うエヴァたちを見て、愉快そうに笑うアグレラ。その時、念話によって甲高い声がエヴァたちの脳に直接響く。その直後、空中にポータルが開き何かが飛び出してくる。


 現れたのは、狐の顔を模した車体を持つ銀色の大型バイク……フォックスレイダーだった。界門の盾を通りつつ愛車を呼び出したユウが、敵に先制攻撃をブチかましたのだ。


「な、なんやあれ!? もしかして、モートロンのニューモデルかいな?」


「そっか、ロコモートはヒーロー活動しに外出してたものね! 勘か何かでアタシたちの危機を察して助けに来てくれたのよ!」


 アスカと呼ばれた銀ピカの人物と、エヴァンジェリンが天を見上げそんな会話を行う。どうやら、仲間が来てくれたと勘違いしているらしい。


「あっ、降りてくるで! おーいロコモートはん、おおき……誰ー!?」


「君は……何者だ? ロコモートじゃないのか!?」


『あの、えっと、その……。ぼ、ボクは北条ユウって言います。リオさんたちに頼まれて、皆さんの手助けに……来ました』


 ひょっこりと身を乗り出して、エヴァンジェリンたちに顔見せするユウ。彼女らはユウがリオの息子だとは知らないと事前に説明されていたため、おどおどしつつ手短に自己紹介をする。


「なーんか怪しいわね……。でもまあ、見たところサモンマスターじゃなさそうだし。助けてくれてありがとう、ユウ」


『いえ、そんな……! 皆さん、危ないです!』


「この邪魔者め! 気持ちよく攻撃してたのに何しやがる! フェザーマシンガン!」


 エヴァが礼を述べた直後、復帰してきたアグレラが逆襲を行う。大量の羽根を飛ばしてくるのを見て、ユウは手元の操作パネルを素早くタッチする。


『いってください、フォックスランチャー!』


 バイクのカウル部分が変形し、両サイドから三発ずつ計六発の小型ミサイルが発射される。ミサイルが炸裂し、飛んできた羽根を全て消滅させてみせた。


「凄い……あれだけの数の羽根を一瞬で!」


「てめぇ、何者なんだぁ? こっちの邪魔をしてくれやがってよぉ!」


『ひいっ、すみません! で、でもこれがボクのお仕事なので……あなたを、倒します』


 ドスの効いた声で凄まれ、ただでさえ精神が不安定になってきているユウはさらに怯えてしまう。が、自分の使命を果たすため操縦桿を強く握り締める。


 ファルダードアサルトを呼び出し、前方に浮かぶアグレラを見上げるユウ。心を落ち着けて、青き天使との戦いに臨む。


「ほー、お前銃使いか。きひゃひゃ、だが今の俺様にそんなもんで攻撃を当てられるかよ!」


『当てられますよ、このアドバンスドマガジンを使えば! チェンジ!』


【トラッキングモード】


「あの子、何するつもりなんや?」


「分からん……が、私には分かる。あのユウという少年……かなりやると」


 トラッキングマガジンをファルダードアサルトにセットし、十二発の弾丸を放つユウ。サモンマスターたちが見守るなか、弾丸は飛翔して回避しようとするアグレラを追跡していく。


『ムダですよ、この白いマガジンには審判神の力が宿っていますから。あなたを貫くまで、どこまでも追い続けます!』


「んだと……? チッ、面倒くせぇ!」


 そう吐き捨て、さらに加速するアグレラ。このまま追尾するだけでは追い付けないと判断したユウは、一部の弾丸の軌道を魔力操作で変化させる。


 アグレラの進行方向に回り込ませ、相手が仰天している隙を突いて翼を撃ち抜く。この程度の相手なら、マジンフォンの力は必要ない。ユウはそう判断し、深呼吸した。


「あら、凄いじゃない! あのオオカミ野郎を撃ち落とすなんて!」


『ここはボクに任せてください。リオさんの名代として、仕事を果たしますから』


 広場ギリギリまでフォックスレイダーを降下させ、飛び降りたユウはエヴァンジェリンの声に応える。そして、トラッキングマガジンを抜き戦闘態勢に入った。


「なぁ、新しいのセットせんでええんか? それだと撃てんのとちゃうん?」


『あ、大丈夫です。ボクの魔力を自動的に弾丸に変換して、リロードを』


「このガキ、舐めてんじゃねえぞ! くたばれやぁぁぁぁぁぁ!!」


 アスカと話しているところに、ブチギレたアグレラが突っ込んでくる。冷静に間合いを見極め、ユウは全身に力を込め走る。


 相手の攻撃をしゃがんでかわし、ガラ空きの胴体に掌底を叩き込んで吹っ飛ばしてみせた。……のはいいが、エヴァンジェリンたちは銃で撃つと思っていたらしく。


「いや、ステゴロで戦うんかい! その銃はなんやねん!」


『ひえっ……ごめんなさいごめんなさい! ボク、体術と銃の両方を使うスタイルなんですぅぅ!!』


 思いっきりアスカにツッコミを入れられ、弁解する羽目に。大声でのツッコミに、数日前の魔夜とのやり取りがフラッシュバックしかけるも、気合いで持ち堪える。


「さ、さよか。なんかヘンテコ……いや、遠近両対応やから強い……んか?」


「さあ? ま、とりあえず今は観戦しましょ。あの子の強さを計るためにもね」


(必ず勝ちます……この人たちを助けるのが、ボクに与えられた使命ですから!)


 遠い異邦の大地にて、ユウの戦いが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヤクザ・オヤジとの買い物は花が無いからハブられたんだろうけど(ʘᗩʘ’) こういう形であの時合流したのか( ・ω・) メンタル面でヒビ入ってる所で助太刀したのか(٥↼_↼)
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