表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/37

★Aパート ゲーム画面を覗き見る

 

 半径0.45メートル。羽入さんはパーソナルスペースの"親密ゾーン"を維持しつつ、スマホへ視線を落として、必死に操作をしている。どうやらゲームをしているらしい。 


(緋色はオンライゲームをやってる設定だから、そのシーンなのかな?)


 覗き見るのは気がひける。だけども気になる。距離が近いので、見えてしまった、という言い訳を思い浮かべながら真横へ視線を落とす。


 羽入さんがやっていたのは、緋色は絶対にやらなさそうな、"パズルゲームだった"

 ロシア民謡をBGMに採用した、古風だが奥深い作品である。


 やっているゲームはまったく違うが、シチューエーションは、第一章チャプター5に間違いない。


(確かあのシーンって……)




「歩きながらゲームをするな!」


 と、隊長が怒り、


「ああ、隊長後生な、それだけはぁ〜!」


 ゲームを取り上げられた緋色が必死に食らいついてくる。

そこからなんやかんやとあって、緋色といちゃいちゃしてしまうというシーンだった筈。





(じゃあ、良いんだよな……?)


 今、羽入さんは緋色をやっている最中。武人へも時々"隊長"を演じてほしいと要請を受けている。


(これは羽入さんのため、羽入さんのため、羽入さんのため……!)


 意を決して、スマホを取り上げようと手を伸ばす。


「あわわ! こ、今度こそ!」


 声がいつもの羽入さんだった。どうやら彼女は緋色のことをすっかり忘れて、パズルゲームを真剣にプレイしているらしい。

しかも、


「あーもうっ! 次こそは!」


 ブロックの落下速度に目が追いついていないらしい。正直なところ、かなりの"ド下手"であった。

しばらく静観してみたが、状況は変わらず。すぐに詰んで、ゲームオーバーになってしまう。


「次のブロックは3タップ。右端」

「えっ?」

「良いから、言った通りに」

「うん!」


 武人の言う通りに、羽入さんは操作した。


「今のブロックはそのまま真ん中へ。次は2タップ、左側の溝へ」

「やった! 4連で消えた!」

「良い調子! 次は1タップ……」

「左だね?」

「そうそう!」


そして……


「やったぁ! クリア!」

「やったね!」


 共同作業の結果、Stage1見事にクリアだった。

しかし羽入さんは喜んだのも束の間、苦笑いを浮かべる。


「でも、コレ緋色じゃないね。ごめん」

「ま、まぁ、良いさ。次から頑張れば……」

「隊長、ありがとう。緋色、頑張る!」


 羽入さんは緋色の声で前向きな言葉を言った。

 

 緋色の性格上、あまりこういう発言は少ない。

だけど悪くはないと思ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ