87 久々利城攻略
大森城から久々利城まで、約5キロくらいを一時間程かけて歩く。
もっと早く着く事は出来るが、疲れて戦えないとか勘弁だし、まだ余力を残しておきたいので仕方ない。
後始末は甚助殿に押し付けて、さっさと来たので、それでも速い方なんじゃないかな?
久々利城へ辿り着くと、まずは降伏勧告からだな。
勧告は当然拒否される。
悪五郎と秋山伯耆守が親父を挟み撃ちにして破り、武田軍を引き込むまで粘る気だろう。
しかし、そんな時間は与えてやらん!
今回は奇襲はせずに正面から突撃だ!
さっさと終わらせるぞ!
「正面から捩じ伏せよ!突撃!」
命令を下すと、「「「オォー!!!」」」と、一斉に雄叫びをあげさせて攻撃を開始する。
「正面からの突撃などしては、被害が大きくなりますぞ」
可児六郎左衛門が俺に忠告してくる。
まあ、当然と言えば当然だし。
普段なら正面からの突撃など絶対にしないのだが、今回はこれで良い。
「構わん、すでに策は巡らしてある」
六郎左衛門にそう返した途端、二ノ曲輪から火の手が上がる。
「今だ!一気に攻め落とせ!」
混乱する城兵を尻目に城門へ取り付くと、閂が外されていて簡単に門が開く。
右往左往する敵兵のお陰で、三ノ曲輪、二ノ曲輪と然したる抵抗もなく駆け上がる。
そして、とうとう本丸の門が開き、内から男が片足を引きずりながらやって来る。
「傳兵衛殿、お待ちしておりました」
「弥八郎殿、誠に忝ない。助かり申した」
本多弥八郎に労いの声をかけ、連れだって奥へと向かう。
「殿!」
奥では、加治田隼人が家老の奥田元信と土岐悪五郎の家族を捕らえていた。
既に城内の制圧は終わっているようだ。
「流石は弥八郎殿、お見事な策に御座った。その鮮やかな手腕、某も見習いたいものだ」
城の乗っ取りを成功させた弥八郎を絶賛褒めまくり媚びていく。
好感度は上げておかないと。
本当に凄いと思って感謝しているので、胡散臭くはないはず…
「本当にすぐに武田の侵攻があるとは、傳兵衛様の時勢を読む力は卓越しておられますな」
よいしょし返された…でも俺、時勢なんて読めないから…
「なんの、某の耳が少しばかり良かっただけに御座る。それを活用する頭がなくばどうしようも御座らん。此度の事は弥八郎殿の大手柄に御座る」
俺はお前を評価してるぜアピールするまでもなく、大手柄挙げてくれたからね、感謝感謝。
ついでにウチへ就職してしまおうぜ!
「傳兵衛様、こちらを…」
話を躱されて、何やら刀を一本差し出してきた。
「もしや、これは…」
「はい、久々利家家伝の太刀、『鵜丸』に御座います」
おお、家伝の太刀をパクったのね。
流石!
この太刀の何が良いかと言えば、未来では火事で失われてしまっているという事だ。
若狭正宗を折ると、若干未来の人々に良心の呵責を覚えるが、この太刀なら折ったところで構うまい…モラッテオコウ…
「で、隼人。新助と才蔵の姿が見えぬが?」
一緒に弥八郎の増援に出した二人の姿が見当たらない。
すると、隼人は即座に平伏する。
「申し訳御座いませぬ!二人は悪五郎と共に…」
は?城で騒ぎを起こせって命令したのに…




