73 蜂屋【地図あり】
俺の家臣は、森勝三郎、稲田次郎兵衛の二人を除いて親父と共に戦に出す。
俺のせいで、手柄立てる機会を失ってしまうのは申し訳ないからな。
勝三郎と次郎兵衛の二人は、とばっちりを受けるが、しゃーなしだな。
三人で加治田城で後方待機だ。
とはいえ、何もしないでただ待っているのも芸がない。
何か出来る事はないだろうか…大人しく加治田城に篭って加治田衆との親睦を深めればいいのか、蜂屋兵庫頭殿も居残りになってくれれば、歌会など開いてもらうのだが…
…蜂屋…そうだ!瑞林寺へ行こう!
蜂屋といえば、柿!堂上蜂屋柿!
幕府や朝廷にも献上される高級甘味。
勿論、殿も大好きだったはず!
瑞林寺は、10代将軍足利義植に献上して、寺領10貫と『柿寺』の称号を得ている。
まだシーズンには早いが、初物のブランド柿の予約をしに行こう。
まあ、向こうから持ってくるかもしれないが。
柿が野盗や落武者に奪われないないように、勝三郎に兵を出させて瑞林寺を保護する。
警備の押し売りで、最高級干し柿を貰おう作戦…まあ、別に俺が食べたい訳ではないが…
いや、妹たちへの土産としてなら欲しいけど。
和尚に殿の分の柿を予約して、ついでにウチの分も御願いする。
多少の暇潰しにはなったが、まだ関城は落ちないなぁ。
何して時間を潰そうか…この近くに何かあったかなぁ?
…あっ、あいつがいるかも…
堂洞城の南西、猿啄城の近くに黒岩という場所がある。
ここに所領があるのは、仙石氏。
権兵衛さんが、いるかもしれない。
越前に養子に入っていたが、この時期なら呼び戻されているかもしれない。ギリギリかな?
仙石秀久、仙石権兵衛の名で、そこそこ有名な武将。
『鈴鳴り武者』の二つ名で知られている、評価に少し困る武将だ。
大名になってはいるので、有能なのは間違いないのだろうが…
秀吉の下で出世し大名となるが、九州で防備を固めよとの命を破り独断で会戦しての敗北。
軍監の役目を放っておいての小倉城へ帰城した上、防戦せずに讃岐へ退却。
改易の上に高野山へ追放されるが、小田原の戦いで陣羽織に鈴を縫い付けた格好で活躍し、五万石の大名に復帰するというジェットコースターのような人生を送った武将だ。
しかし、秀吉の古参の武将なので引き抜くのは躊躇してしまう。
秀吉の家臣の中でも優遇されていた方なので、影響があるかもしれないし。
仙石権兵衛か…蕎麦が食べたくなるな。
確か『蕎麦の伝道師』の二つ名もあったよな。




