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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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 64 堂洞合戦開戦

 翌日、堂洞城に攻撃を開始する。

 堂洞城は、それほど堅固な城ではなく砦に近いので、それほど苦戦はしていないようだ。

 史実では、乱戦あとに一家皆討ち死にしているので、もっと激しい戦いがあるのかと思っていたのだが、少なくとも此所(ここ)はそうでもない。


 森軍には、散発的な攻撃があるのみで大したことはないが、その分他のところは抵抗が激しいみたいだ。

 西側から攻めかかる河尻、丹羽両軍よりも早く二ノ曲輪の前へと着いた。


「河尻様や丹羽様は、まだの様ですな」


 青木次郎左衛門が親父に話しかける。


「河尻様も意外に不甲斐ない。いや、我らが強すぎるのですかな」


 カラカラ笑って軽口を叩いているのは、武藤五郎右衛門だ。


「で、如何します?待ちますか?このまま先に我らが攻め()かりますか?」


 森家でも剛の者となる野呂(のろ)助左衛門(すけざえもん)宗長(むねなが)が方針を訪ねる。


 予想通り、岸家の嫡男を助けた森家への攻撃が若干(じゃっかん)弱くなっている気がする。

 その代わり、裏切って織田家についた北の佐藤家への攻撃がキツくなっている。


 堂洞合戦の時期が一年程早くなって、三城盟約を結べていなかったのかな?

 史実では、佐藤家の娘である八重緑(やえりょく)が、岸家に人質として預けられるのだが、佐藤家の裏切りを知った岸家によって殺され、(はりつけ)にされてしまう。

 磔にされた佐藤家の娘である八重緑の遺体を西村治郎兵衛が奪還しにいくのだが、それを手助けして、好感度稼ぐ作戦を思いついていたのに、八重緑も人質になってないしなぁ…

 加治田衆に恩を売る作戦がパーになったしなぁ…


 援軍と期待していた加治田衆が裏切った上、長井隼人の援軍は殿に邪魔されて来ていない。

 堂洞城もそれほど堅くはなく、長時間は持ちそうにない。

 岸孫四郎殿の嫡男の首を斬って覚悟を示すイベントも起きてないので、士気も上がってない。


 これ、そのまま()せるんじゃね?

 史実でも、生き残った岸氏が、これから来る一色、長井の援軍に協力したり反織田に走ったりした気配もなかったし、昨日の勘解由殿が言ったように織田家に思うところはないというのは本当の事のようだ。



 こうなれば、さっさと二ノ曲輪を占拠して圧を強めるか。

 幸い、北側の軍に戦力を振ってるみたいだし。


「父上!敵方は北へ気をとられている上に士気も低い。とっとと曲輪を落としてしまいましょう。勘解由殿も全く援軍の当てもなくば、早々に降るやもしれません」


「そうだな。此方に気を取られれば向こうが楽になる」


 俺と親父で突入を決める。

 でも、頑固者だから降りはしないだろうなぁ。

 降ってくれると、恩を着せられて助かるのだけれども。


「助左衛門!又左衛門!八郎右衛門!半蔵!回り込んで撹乱してこい!だが、無理はするな!」


「「「はっ!」」」


 野呂助左衛門、長田又左衛門、山田八郎右衛門、渡辺半蔵に一隊を任せて、側面からの侵入を試みる。

 当然、お調子者の武藤五郎右衛門には任せない。

 それほど堅い城という訳でもないので、やってやれない事はないはず。

 成功すれば門が開く。失敗しても兵が分散してくれる。増援がくれば西側が楽になる。

 少なくとも城の天井に上って、屋根から鉄砲をぶち込むよりはマシな作戦だろう。


「弓衆の一斉射撃の後、槌衆を突入させよ!」


 まず牽制で矢を放ち、その後、門に取りつき、門の隙間に楔を打ち込む。

 あとは丸太持って突撃だ。矢を打ち込まれないように大楯を頭上に掲げ、丸太を持っている兵を守る。


 何度か門に丸太をぶつけていると、門の内側で騒ぎがあり、矢の勢いも弱くなる。

 誰かが侵入に成功したか、若しくは成功しそうになったか。

 とにかく今がチャンスとばかりに門をぶち破る。


 兵を曲輪の内へ突入させ門の周りを確保した後、敵将を探す。

 それらしい者を見つけて駆け出そうとすると、横を走り抜けていく親父の姿。

 盗られたか…


 なんとか、こちら側の指揮をしているはずの岸三郎兵衛殿を捕らえて、勘解由殿への説得材料にしたいところだが。

 意地になって討ち死にとか、面倒なことは勘弁してくれよ。


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