59 ごめん五郎左殿
結構働いたから、少し休養しよう。
元服してからこっち、伊木山城を調略したり、宇留摩城を調略したり、土田城を調略したり…調略しかしていないな…
まずい、調略専門みたいになっている!
調略が出来るのは殿には受けるけど、俺の支持母体は、あくまで柴田、佐久間に代表される昔ながらの武闘派だ。
槍働きが出来ないと、殿の評価はともかく、派閥での評価が下がってしまう。
槍働きをしない長男と、…な次男の評価は、どっちが上だろうか?
ついでに兵の集まりも悪くなる気がする。
領地で俺を知っている兵は別として、金で雇われた兵や陣借で来た他所の兵は、やっぱり分かりやすく槍働きで判断されたりするし。
まあ、全部が全部そうではないが…
取り敢えず、次の戦いでは槍働きをせねば!
やはり志賀の陣の時に、独自に動かせる兵力を手に入れるには領地が必要だし、領地を手にいれるには調略よりも槍働きの方が手っ取り早い。
まあ、槍働きオンリーならば、一生馬廻とかにされてしまうかもしれないが、これだけ調略を成功させておけば大丈夫だろう。
と、その前に土田城の更に東にある塩河の可児氏への調略を仕掛けておこう。
この一帯から長井隼人を追い払うまでに、織田方につけば優遇するよっと。
関城攻略までの期間が締め切りだぞ。
放っておいても森家の家臣になるんだけどな。
八右衛門殿の所へ、甚助殿からの文を届けて結果を報告した後、親父の所へ顔を出す。
「傳兵衛様、良いところに」
勝三郎が俺を見つけて慌ててやって来た。
「どうした勝三郎、何かあったか?」
「客人に御座います。傳兵衛様も同席せよと」
うーん、誰だろう?塩河からの返事が来るには、まだ速すぎるし。
「どなたが来られたか?」
「加治田の佐藤紀伊守様の使いだとか…」
「某が、森三左衛門だ。これは、嫡男の傳兵衛」
親父が客に俺を紹介している。
「はっ、加治田城城主佐藤紀伊守の使いとして参りました、梅村良澤と申します」
品の良さそうな男が、懐から書状を取り出し話す。
側にひかえている長田又左衛門が受け取り、親父に渡す。
「この度、紀伊守は織田上総介様へ合力する事に致しました。つきましては、三左衛門様に上総介様への取り次ぎをお頼みしたく…」
史実なら佐藤忠能の臣従は来年の話だが、大分前倒しになっているな。
しかし、丹羽五郎左衛門殿が仲介するはずなのだが、なぜウチに話が来たのか。
「それは、殿も大変喜びましょう!すぐに使いを出す故、ゆるりと休まれよ」
うん、史実で殿は大喜びだったらしいな。
「宜しくお願い致します。傳兵衛殿、幾度も当家へ誘いの文を頂き誠に忝なく、感謝致します」
あっ、俺のせいだったか…ごめん五郎左殿。




