54 伊木清兵衛
さて、やって来ました伊木山城!
お供は、稲田太郎左衛門。
それから助っ人の松原内匠助、前野将右衛門殿。
これに蜂須賀彦右衛門殿と坪内玄蕃殿の手紙を添えて、伊木清兵衛殿を囲んで、洗脳…もとい、説得をする。
おそらく、未来に伝わる話通りならば、あっさり織田方についてくれるだろうから、あまり心配はしていないが。
堀尾中務丞には、先に親父の所へ戻ってもらった。
藤吉郎は俺たちと別れて、宇留摩城へと向かったが、成功するだろうか?
さっさと終わらせて、伊木山城が織田方についたと話せば大丈夫だろうと踏んではいるが。
藤吉郎との調略合戦の様になっているので、より早く終わらせて、俺の評価アップに努めたい。
折角の機会なんで、未来の太閤秀吉に勝ちたいし!(自己満足)
「清兵衛殿、今の一色方には、此方へ援軍を送る余裕など御座いません。稲葉山城を、なんとしてでも取り戻す事が先決となりましょう。
かといって味方のおらぬ伊賀守殿には、此方へ援軍を送る事は出来ません。折角奪った稲葉山城が、がら空きになりますから」
清兵衛も知ってはいるだろうが、今の状況を再認識させて追い込む。
「もはや、右兵衛大夫殿では、美濃はまとまらぬ。織田方に付くほか、御家を守る方法はありませぬぞ」
松原内匠助も、ここが点数の稼ぎ時とばかりに熱が入っている。
殿に評価されれば、兄から家督を譲られるかもしれないからな。
「我等は、土岐の家臣でも斯波の家臣でもない。ましてや、織田でも一色でも。ならば、勝つ方へ味方するのが当然であろう?」
将右衛門殿は、割り切ってるなぁ。
まあ、その通りなんだけど。
太郎左衛門も織田方へ付くよう説得する。
「清兵衛殿、御家を守るならば織田家に付くのは必定に御座る。あとは、同様の話をしている大沢次郎左衛門殿より、どれだけ早く降るかで、上総介様の印象が変わるだけに御座る」
藤吉郎が調略している大沢次郎左衛門との時間勝負を追加して焦らせる。
どうせ降るのなら、お隣さんの大沢次郎左衛門より高い評価が欲しいだろ?
「分かり申した。この清兵衛、皆が申される通り、上総介様に御味方致す。傳兵衛殿、宜しく御頼み申す」
よし、先に返した中務丞に持たせた調略成功の文が嘘にならなくてよかった!
失敗していたら、どうしようかと思ったよ。
まあ、今までの付き合いで、自信はあったのだけど…




