541 一息吐けるか…
おかしいな、どうして此処に、盛定が。
阿波の三好は、引き取らんのか?
何故か官兵衛が、志度城で降伏してきた安富盛定を飼いたいと言い出した。
俺はどうでも…別段構わないのだが、三好家は何と言うだろうか。
「岫雲(篠原長房)殿が否と言わぬのであれば良いのではないか?筑前守が浦上家を盛り立ててくれるのであれば、久松丸殿も心強かろう」
長房が良いと言うのであれば勝手にすればいいんじゃない?
浦上家が更にややこしい事になるかも知れないけど、俺の知った事じゃないしな。
腹黒い官兵衛の事だから、浦上宗家に俺とは無関係な人材を重臣として送り込んで、家中の主導権を握りたいとか考えているのかもしれないが興味ないしな。
当然、三好家の説得は官兵衛がやるんだよね?
俺はやらないよ!
「此方が強く望んでおると申せば、三好家も否とは申しますまい」
ああ、長房じゃなくて三好家へ話を持っていくのね。
三好家なら長房の子飼いが増えるのは面白くないだろうけど、力を失った盛定の事なんて気にするかなぁ?
まあ、長房自身も盛定を持て余しているかも知れないが。
「来年の事もある。あまり波風の立たぬようにな」
それで三好家ともめるのは勘弁してくれよ?
「では、兵部少輔殿の了承も得られましたので、早速三好家へ話を通しに参ります」
官兵衛は俺のOKがもらえたと言って、さっさと三好家の許へと向かって行った。
俺は三好家が許可すればOKと言っただけで、積極的に望んでいる訳じゃないからな!
そこの所を官兵衛の都合の良いように曲解して伝えないようにな!
少々心配だが、まあ大丈夫な筈。
さて、まだ後始末は残っているが、それは弥八郎等に任せるとして、俺は一旦赤穂へ戻る事としよう。
寒川家と四国の領地の事や小豆島の分配も詰めなければならないが、落ち着いてからでも構わないだろう。
「河内守(毛利長秀)、お主は志度城へ残れ。年が明ければ殿より代わりの者が送られて来よう。それまで四国の諸勢力の動きより目を離すな」
「はっ!」
「四郎左衛門(鳥居忠広)、弥三左衛門(本多正重)、三之丞(岸教明)、六左衛門(渡辺直綱)、お主等は小豆島へ向かえ。まだ寒川家との領地分けは決まっておらぬが、地の利が得られるよう調査は忘れるな。くれぐれも揉め事は起こさぬ様にな!」
寒川家に領地の割譲を有耶無耶にされないように、兵は残していくけどね。
河内守は心配していないけど、三河衆はちゃんと役目を果たす様にな!
お前等に城を与えて大丈夫かというテストでもあるんだからな!
よっぽどの理由があれば限りじゃないが、そうでなければなるべく年功序列というか、勤続年数の順で出世させてあげたいしな。
1人でも多くの脳筋克服者が出てくれる事を望む。
よし、差配も済んだし事だし、我が家へ帰ろう!
今年は全然休めなかったからなぁ。
年末年始は寝て暮らそう!
流石にこれ以上俺を働かそうとする鬼なんか、いないだろう!
四国での仕事を終えて帰りの船に乗り込み、我が家の赤穂城へと帰り着く。
あれ?俺ってあんまり赤穂城に居なくない?
流石に気のせいか。
「殿、無事の御帰還及び戦勝、御喜び申し上げます」
城代の建部伝内(賢文)が出迎え、戦勝を祝ってくれる。
「うむ。備前播磨国に変わりないか?」
「はっ、御座いませぬ」
よし、問題なしだな。
これで、ゆっくり休める。
「では、一息吐けるか…」
「年明けまでは、ゆくっりされて問題御座いますまい。ただ…」
えっ?不穏なんですけど?
年明けに何か?
「ただ?」
「年が明けたら京に上り、事の仔細を報告せよと、大殿より申し使っております」
…ですよね~。
直ぐに来いとは言わずに年明けまで待ってくれるのは温情ですか?
すみません。仕事の都合で次回更新は、4月半ばになると思います。
申し訳御座いません。




