535 次の生け贄カモン!
十河家の兵の位置が変わりないか調べる為に物見を出す。
その物見が帰ってくるまで間に、雨滝城を攻めていた兵と合流出来た。
「殿、十河の兵を発見致しました。両軍共に目立った動きは御座いませぬ」
物見に出した岸新右衛門等が戻り、十河家の兵の位置を報告する。
う〜ん、やっぱり両軍やる気が無いよな。
何か示し合わせでもあるんだろうか?
要らん事をしたと後で問題になったりしないよね?
「本陣は分かるか?」
「はっ、前には出ず、後方に控えておる様に御座います」
う〜ん…やっぱりちょっと恐いなぁ。
「如何されましたか?十河家との戦に何か懸念が?」
軍師の林助蔵(能勝)が俺が躊躇しているのを訝しんで尋ねてくる。
「戦後の三好家との関係を思うとな」
「ははっ!その様な事で悩まれるとは、殿らしくありませな!」
大橋茂右衛門(重賢)が俺が悩んでいる事を笑い飛ばす。
いや、付き合いの浅いお前は、俺が家臣と同じ脳筋だと勘違いしているのかもしれないけど、俺は織田家中でも屈指の頭脳派武将なんよ?
「左様!何時もの如く我等に突撃を命じていただければ宜しいのです。後の事は後に考えれば宜しい。何時もの如くどうにかなりましょう」
加治田新助(繁政)が実に脳筋な意見を言ってくれる。
新助の横で、その相棒の可児才蔵(長吉)も同意件だとばかりに頷いているのがムカつく。
てか、お前等との付き合いはそこそこ長いよな?
なんでそんな俺まで脳筋仲間みたいな事を言うんだよ。
お前等と同じにするなよ。
「まあ良いわ。戦列の中央やや前目辺りに突っ込めば、十河家の重臣共も居るまい」
仮に討ち取ってしまっても戦の上での話だし已む無しだな。
では、十河家には相応の被害を与えて撤退していただこうか。
香川家と香西家も、俺が突っ込んでいるのに無視するとかないよな!
適当にそこら辺に突っ込んでみると、どうやら周りに居るのは奈良家の兵の様だ。
十河家でないならセーフ!
「さて、畿内で幾度も負け続けても尚、己の力量測れぬ三好家の者共に我等の力を思い知らせてやれ!」
これで、周りの兵が直ぐに逃げ出す事はないだろう。
敵兵を煽りつつ、家臣達のストレス発散を促す。
「何を!!」
タイミング良く怒り狂った敵兵が襲い掛かってくる。
よし!先ずはコイツを見せしめに…
「痴れ者が!」
俺の護衛役の野中権之進(良平)が襲ってきた敵兵を斬り捨てる。
うん…俺の獲物…
「ほれ、どうした!どんどん襲い掛かって来ぬか!まさか儂に馬鹿にされまま、尻尾を巻いて逃げ出そうなどと思うてはおるまいな!」
次の生け贄カモン!と煽りつつ、周囲の家臣達の戦い振りで相手の勢いを測る。
ヤバそうなら即撤退だな。
「大口を叩くな!この中津将監が討ち取ってくれるわ!」
煽り耐性の低そうな敵が俺に向かってくる。
「良かろう。相手になってやる」
俺を守ろうとする家臣達を押し留め、インパクト重視で持ってきた朱柄の大身槍を構えて中津将監とやらを迎え撃つ。
一合二合と打ち合い、「なかなかの剛勇だが」と呟くと、槍を大振りで激しく叩きつける。
堪らず相手が体勢を崩すと、将監の首元へ槍を横薙ぎに叩きつけて首の骨を砕つつ、その体を吹き飛ばす。
俺の側に控えている羽柴与六郎が、急かさず将監に駆け寄り首を落とす。
「中津将監を討ち取ったり!」
大声で敵を討ち取ったと知らせて敵を威圧する。
なかなかの手強さだったので、そこそこ名のある武将なんじゃないかな?
俺は知らんけど!




