534 三谷へ
皆との話し合いの結果、これから十河家を攻める事に決まった
殿には寒川安富両家以外の領地には出向くなと言われているが、放置できないので仕方ないのだ。
殿も分かってくださるだろう。
領地没収程度なら受け入れますよ!
そんな事より相手の十河家の話だ。
十河家といえば三好家の重臣…というか身内、そして何より鬼十河こと十河一存!
まあ、鬼十河は疾うの昔に亡くなっていて、現当主は齢十六の若僧なので恐れるるに当たらずだけどな。
怖いのは当主よりも鬼十河の時代から従っている古参の家臣達だな。
鬼十河は戦で亡くなった訳ではないし、そっくりそのまま残っている事だろう。
鬼十河に従って戦場を駆けていた奴等が弱い等という事はないよな。
それでもウチの奴等なら負ける事はないだろう。
まあ、奴等の名前すら知らんけど。
「左兵衛よ、案内の者の手配を頼む」
細川矩弘に案内の者を用意してもらうおう。
流石に知らない土地を移動するのは時間が掛かるしな。
「ならば七兵衛を付けましょう。御役立てくだされ」
「うむ」
矩弘の息子の国弘なら間違いないだろう。案内役としても戦力としても役に立ってくれるはず。
「では、某は雨滝城に居る兵を連れて参ります」
本多弥八郎(正信)が兵を連れて来てくれるなら、先行出来るか。
迎えに行くのが腹黒弥八郎っていうのが少し心配だけども。
「うむ。では、新右衛門!才蔵!新助!七兵衛を連れて物見に出よ」
ちょっと才蔵(可児長吉)と新助(加治田繁政)が暴れ足りなさそうなので、物見に出そう。
脳筋2人と共に物見に出る七兵衛が心配だけど、お目付け役の岸新右衛門ならば2人を抑えられるだろうし問題ないよな。
家臣を押さえ付けるのではなく、福利厚生の為に戦に行くとか、俺ってなんて優しい上司なんだろう…
香西、香川両家と十河家が睨み合っている場所は、十河家の本城である十河城の西にある三谷城近く。
戦の前と位置が変わってなければだけど。
三谷城の三谷家は十河家の家臣筋だそうで、過去にも香西家に攻められているらしい。
ここが戦場になるのは順当か。
さて、三谷は十河城の西にあるという事は、三谷へ向かうには十河城をスルーしなければならないという事だ。
そのまま十河城を攻めれば三谷に居る敵兵を戻す事も出来るのだろうが、今回はスルーして戦場へ向かう事にしよう。
城攻めなんて面倒臭い事したくない…じゃなくて、十河家を降伏させる事が目的なんじゃなくて、後詰めを出させない事が目的だからな。
無いとは思うが、自城が持ち堪えられると判断して後詰めに向かわれたら堪らない。
「殿、十河家は三谷より動いおりませぬ。幾らかの小競り合いはあった様に御座いますが、変わらず香川香西両家と睨み合いとなっておる模様」
物見から戻ってきた岸新右衛門からの報告で戦場は依然三谷から動いていないと知る。
ちょっとくらい戦ったら良いのに。
これは香川家や香西家は積極的に関与する気はないのかもしれない。
十河家はどうなんだろう?
「殿、半刻程で当家の兵も合流出来るかと」
雨滝城を攻めていた兵から大橋茂右衛門(重賢)が先触れとしてやって来て、間も無く到着すると報告する。
ふむ、兵が揃ったなら、取り敢えず十河家の兵に突っ込んでみるか。
讃岐衆の思惑はよく分からないが、殴れば何か分かるかもしれんしな。




