515 もう面倒事に巻き込まれたくないんじゃ!
今年の就業は終了しました。
という訳で、後の事は京に居る平野右京進(長治)と大平上野介(家次)に任せて、癒しを求めて於乱ちゃんの居る近江宮部城へ逃げ込む。
もう面倒事に巻き込まれたくないんじゃ!
「善祥坊、何も問題はないか?」
困り事はないかと宮部継潤に尋ねる。
「無論些細な問題は御座いますが、概ね問題無しと申して良いかと」
良かった。
こちらは問題ない様だな。
「うむ。儂は西国の事で掛かりきりになろう。江北の事はお主に任せる故、京や田上の者等と諮り、宜しくやってくれ」
京の平野右京進、田上の石川伊賀守(光重)、稲田次郎兵衛(隆元)等と相談して上手い事やってくれ。
「承知致しました」
ああ、何だろう。
このウチの家臣団では先ず感じない安心感。
大領を任せっぱなしにしても良いという信頼感。
ウチの家臣達は未来の裏切り者と脳筋しかいないとまでは言わないが、見込みのある奴等もまだ年若く経験も浅いしな。
於乱ちゃんを養子に入れてまで味方に引き入れたのは正解だったな。
「それと大和国の井戸若狭守(良弘)の娘を預かっておる。京に置いておくと何かと霜台が五月蝿い故、此処に預ける」
「井戸若狭守殿に御座いますか?」
「うむ。此度、大和国にて若狭守を召し抱え、西国へ向かわせる事となった。質を取る積もりは無かったのだが、霜台が色々と五月蝿うてな。その様な形を取る事とした」
「承知致しました。そちらも御任せくだされ」
継潤も大和国の内情は理解しているのだろう。
分かっていますよといった感じで頷いてくれる。
こういうやり取りだよ!
継潤を見習えよ、皆!
命令を曲解したりしないで、ちゃんと言われた通りに実行してくれ!
「兵部少輔様、明智殿の使いの方が御見えになっておられます」
継潤の家臣で御乱ちゃんの傅役である田中久兵衛(吉政)が使者の来訪を告げてくる。
えっ、明智光秀からの使者って、もしかして厄介事?
光秀って来年の越前攻めの準備で敦賀に居るよね?
敦賀で何かあった?
大和国で戦ったばかりで、敦賀になんて行きたくないぞ!
「御久しゅう御座います、兵部少輔様。山田喜兵衛に御座います。今は明智十兵衛殿の下で働いております」
山田喜兵衛(宗俊)はウチの八郎右衛門(山田宗重)や尾張戸田村に居る大叔父の下で働いている喜三郎(山田去暦)の兄にあたる。
2人を勧誘した時には、既に織田家に仕えていたらしい。
喜兵衛は2人の兄だし、親しくはないが会った事くらいはある。
「久しいな喜兵衛。息災で何よりだ。そうか今は十兵衛殿の下か。十兵衛殿は中々に優秀な方ゆえ、仕え甲斐があろう。まあ、気苦労が多かろうが、肩の力を抜いて気楽に出来れば良いが、その様な性分でもあるまいな。それは兎も角、十兵衛殿は何と?」
喜兵衛の話は、敦賀郡の国人衆に俺の息の掛かった者が居るので、俺からも宜しく言ってくれないかという事と、北近江からのバックアップ宜しくって事みたいだ。
あれ?それだけ?
厄介事じゃないの?
それくらいなら問題なくやってあげるよ!
流石は有能、明智光秀!
本能寺の変を起こす事以外は信頼できる相手だな!…いや、それが一番の問題だわ。
山田喜兵衛が拍子抜けする程あっさり帰ったので安堵していると、京から大平上野介(家次)が馬をかっ飛ばしてやってくる。
「殿!」
「上野介、何かあったか?」
「小豆島にて戦があり、梶原兵三兵衛(景秀)殿等の活躍で島を占拠したとの話に御座います!」
は?
裏タイトル《6年も経てば冗談で兄弟にした2人も本当の兄弟になって、更に兄貴が出来る事もあるよね?》




