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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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511 収支はプラス

 豊田道見が城門を開き、味方を城内へと招き入れると、それに動揺した井戸十郎を隙を突いて捕らえ、井戸城を制圧する事に成功した。

 その後、越智城へ出張中の城主井戸良弘を捕らえるべく、道見を越智城へ向かわせる。

 何も知らない良弘を、井戸城内へ誘い込んで、出来れば無傷で捕らえたい。

 という訳で、良弘を捕らえる為に先程井戸家を裏切ってこちらに付いた豊田道見に、井戸良弘捕縛の為の策を授けて越智城へ向かわせた。

 道見が上手い事、良弘を罠に嵌めてくれれば良いけど。

 策は道見が考えた事にして、手柄も全て道見のものにして良いと言ってあるので頑張って欲しい。


「殿、豊田道見が井戸若狭守(良弘)を連れて戻りました。手筈通り若狭守が城へ入り次第、門を閉じるとの事」


 岸新右衛門が作戦開始を知らせに来る。


「うむ。では、儂も若狭守の許へ向かうとしよう」


 城門前に着くと道見と良弘が言い合っていた。


「最早何処にも逃げ場はないぞ、若狭守」


 道見が裏切った事を罵る良弘と、良弘を罠に嵌めて勝ち誇った道見。

 門番に扮していた羽柴与六郎、与九郎兄弟の後ろに隠れながら勝ち誇った顔をしている道見を見ると何とも言えない気持ちになるが…


「儂は織田家の森兵部少輔だ。若狭守よ、見ての通りこの城は儂等が占拠致した。お主に逃げ場はない。降伏せよ」


 史実の井戸良弘は、筒井家以外にも塙直政や細川忠興に仕えていた事もあるので、ワンチャンあるんじゃない?

 少なくとも筒井順慶の為や己の誇りの為に死を選ぶ事はない…と思う。

 良弘は暫く悩んでいたが、やはりどうする事も出来ないと思ったらしく「致し方なし」と降伏した。



「さて、降伏してもらって悪いが、儂はお主等の処遇を決める立場にない。全ては霜台の胸先三寸よ」


 降伏した井戸良弘に更に追い討ちを掛ける様な事を言う。

 俺、ただの助っ人、責任者違う。

 良弘にギロリと睨まれるが気にしない。


「そこでだ若狭守。儂は大和国の情勢に疎い。霜台からお主への沙汰は如何なるものとなろう?」


 あんたが何れだけ霜台の恨みを買っているか次第だとは思うけど?


「…霜台の恨みを買っておりましょうな。筒井家の縁者としても捨て置けぬ筈」


 自分でも殺されるかなぁとは思ってるのね。


「然もありなん。儂が霜台の立場であったとしても、お主を野に放つは危険が過ぎる。お主が陽舜坊の義兄であるからではないぞ?お主が有能故、敵に回られると厄介だからだ」


 良弘は、筒井家の縁戚で、しかも有能。

 筒井家弱体化を謀る霜台なら、このチャンスに殺すだろう。

 まあ、筒井順慶が泣いて霜台に忠誠を誓えば助かるかもしれないが、まず無いだろうな。

 お前は有能だから助からないと言われた良弘は、果たしてどんな気分なのか。


「お主、儂に仕えぬか?」


「は?」


 良弘は、俺が何を言っているのか分からないといった表情でコチラを見ている。


「大和国に…いや、畿内に居らねば霜台も儂の頼みを否とは言うまい。陽舜坊にも儂という伝手が出来る。どうせこのままでは霜台に城を奪われ己自身も殺されるのだ。何も出来ずに死するくらいなら、儂の許で新たに武名を轟かせぬか?それに生きておれば何時れは望みが叶う機会も訪れようが、死してはそれも叶うまい?」


 良弘は黙って俺の提案を考え込む。


「有り難い御言葉に御座るが、陽舜坊殿を見捨てるのは些か…。それに、裏切り者の豊田道見めを捨て置く事はできぬ」


 おっと、順慶の事より自分の事の方が大丈夫だろうと思ったが、中々に情がある。


「ああ、西国へ向かった後も陽舜坊との連絡は行ってもらう。畿内の様子が知りたいからな。まあ、霜台を刺激せぬ範囲でだがな」


 その際の驚いた様な間の抜けた顔は、暫くはネタにさせてもらおう。


「それに道見の事は捨て置け。儂にはどうにも出来ぬ。それにあの者を霜台が重用するとも思えぬ。いや、それだけお主の恨みを買っておるのだ、それなりの使い道はあるやもしれぬがな」


 そう言葉を付け足すと、良弘も溜飲が下がったのか漸く家臣となる事を了承してくれた。


 嫌々巻き込まれた霜台への協力だが、井戸良弘と島清興の2人と縁が結べたので収支はプラスになったかな?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ああ、西国へ向かった後も陽舜坊との連絡は行ってもらう。畿内の様子が知りたいからな。 筒井家に不利な報告はするまいが主人公独自の情報網とつき合わせ、反織田分子の動向のセンサー代わりに?…
[一言] >>霜台の胸先三寸よ 胸三寸ですね。 先が付くのは舌先三寸の方で。
[一言] 本拠地の部下達<殿まだご帰還されないのかなー
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