505 手伝えってさ【地図あり】
十市家の騒動を防ぐ事は(多分)出来たが、代わりに別の家に騒動が起こった。
騒動が起こるのは史実通りだが、時期が早まってしまった。
まあそれは、十市遠長が越智家高に要らん事を言ったのが原因で、俺は全く悪くないんだけど。
本当はこのまま京へ帰りたいんだけど、流石に信貴山城へ戻って霜台と話し合わないといけないかな。
霜台が俺の手なんか借りないって言うかもしれないしな。
「兵部少輔殿、この様な時に大和国に居られたのも何かの縁。御手伝い願いたい」
ですよね~。
霜台の所へ戻ると開口一番手伝えと言われた。
「しかし、今は僅かな供回りしか居らぬ故、大した働きは出来ませぬが?」
でも、今は供回りだけしか連れてきていないから、大した働きは出来ないよ?
その供回り達は、何故かヤル気に満ち満ちているけど…
「なんの!一騎当千の森家の方々と何より兵部少輔殿が居られる。それだけで陽舜坊(筒井順慶)には恐ろしかろうて」
いやいや、戦は数ですよ?霜台?
確かに順慶等は怖がるかもしれない。
でもトップに居るエセ宗教家達なら兎も角、信仰に狂った雑兵共が俺なんかを怖がるかなぁ。
多分、順慶とか前線には出て来ないだろうし、戦うのは大和国の事しか分からない様な下っぱだろしな。
名前は聞いてるかもしれないけど、怖くはないだろう。
逆に手柄の立て時だと殺到してくるかもしれない。
「取り敢えず、大樹と尾張守(織田信長)様、それに右衛門大夫(佐久間信盛)殿に知らせを送りましょう」
上に知らせておけば、後詰めを送ってくれるだろうし、何なら俺に帰って来いと言ってくれるかもしれない。
右衛門大夫殿は一応次席家老で畿内の責任者みたいなものだからな。
殿か右衛門大夫殿のどちらかは京に居るだろう。
大樹は面倒だけど霜台の上司だし、俺が知らせなくても霜台が知らせを送るだろう。
「しかし、兵部少輔殿も運が御座らぬな。折角十市家の騒動を収めたかと思えば、別の家が騒動を起こし、結局戦が避けられぬ事態となってしもうた。越智家に手柄を不意にされた様なものに御座る」
「全く」
まあ、俺が十市遠長に噂を吹き込んだのはバレているだろうし、嫌味の一つでも言いたいのも分かるが、1番悪いのはここだけの話ってヤツを広めた馬鹿野郎だろう?
「儂等は摂津からの兵が到着し次第、越智城へ向かいます故、兵部少輔殿には陽舜坊の居城である福住城を攻めていただきたい」
「福住城に御座るか」
現在、筒井順慶は筒井城を追われて福住城に滞在中との事だ。
福住城は十市城の北東にあり、南南西にある越智城から少し離れた所に位置している。
でも、いくら越智城へ兵を動かしているとはいえ、居城を空にはしないだろう。
俺達だけで落とすのは不可能だ。
「左様。落としてくれなどとは申さぬ。陽舜坊の肝を冷やしてやる事となれば重畳。山口六郎四郎(秀勝)、柳生新左衛門(宗厳)を案内に付け、無論兵も御預け致す」
ま、まあ、別動隊としてがら空きの城を脅かすだけなら。
本隊同士の戦いに巻き込まれない、比較的安全な戦いならば引き受けても良いか。
柳生宗厳もいるし、兵も付けてくれるって言ってるね。
それに案内役の山口秀勝は霜台から福住に所領を与えられているから、福住氏は邪魔だろうしね。
何より、ウチの脳筋共の目が怖いくらい輝いているしな。
しゃ~ない、城を落とす気はないけど嫌がらせしに行くか。




