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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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504 越智家

 さっさと多聞城を出て京へ戻る予定だったが、雲林院松軒が此方へ来るという話なので、仕方なく4、5日は城へ残る事にする。

 その間、柳生宗厳と雑談したり、稽古をつけてもらったりしながら過ごす。

 多聞城へ逃れてきている十市遠成の後室と娘に状況を話し、対立している遠長と再び話し合いの機会を持つべきだと諭したりもした。


「しかし、殿の事、大和国でも大暴れするかと思いましたが、些か拍子抜けに御座いますな」


 加治田新助(繁政)が不本意な感想も洩らす。

 確かに俺は一部知識を出世の為に利用してきた。

 だが、本当にヤバそうな事は回避してきたつもりだ。

 勿論、回避しそびれた事も多々あるけど。

 だが、俺と親父が金ヶ崎や志賀の陣での死亡するのを回避した今、この知識は厄介事を全力回避する為に…いや、本能寺の変で生き残る事に使うのだ。

 こんな所で大暴れなんてする訳がない。


「全く。先の大戦までとは申さぬが、また腕を振るいたいものよ」


 可児才蔵が新助の言葉にウンウンと頷いているが、お前は近江残留組だったんだから姉川の戦いの時に親父の許で存分に槍を振るえただろう?

 おかわりを要求するんじゃありません!


「まだ分からぬぞ?今にも柳生殿よりの知らせが…」


 仙石新八郎(久勝)もケラケラと笑い2人の話しに乗っかる。


「兵部少輔殿!」


 そこへ柳生新次郎(厳勝)が飛び込んでくる。

 おい、新八郎。

 お前フラグ立てたんじゃないだろうな?

 お前が責任をもって対処しろよ?


「慌てて如何なされた、新次郎殿」


「大変なのです、兵部少輔殿!越智民部少輔(家高)が民部少輔の叔父である伊予守(家増)に襲われ、妻子を根絶やしにされたとの事に御座る」


 はい?

 いや、越智家高の一家が家増に殺されるのは歴史通りなんだが、ちょっと時期が早くない?


「伊予守が民部少輔を?して、民部少輔は?」


 あれ?確か市尾深介とかいう家臣が殺して、その黒幕が家増って話じゃなかったっけ?

 家増自ら家高を殺りにいってるの?


「はい。民部少輔は辛くも十市城へ逃れております。民部少輔の話では手を下したのは伊予守に間違いないとの事に御座る。何でも伊予守が民部少輔の命を狙っているという噂を聞きつけ問いただしたところ、逆上した伊予守に襲われたのだとか」


 誰やねん、そんな無責任な噂を流した…いや、民部少輔にチクった奴は!

 お陰でまた面倒臭い事になっとるやんけ!


「某、大和国の情勢にはとんと疎いのだが、大事なのであろうか?」


 まあ、それはそれとして、たかだか一国人の御家騒動だし、よくある話じゃないだろうか?

 騒ぎ立てる程の事じゃない。

 騒ぎ立てる理由があるんだろうなぁ…


「民部少輔を追い出した伊予守は筒井陽舜坊(筒井順慶)に助けを求め、それに応じた筒井家の軍勢が越智城へ向かっておると。十市家に逃れた民部少輔も霜台に救援を求めております」


 うわぁ、霜台も大変だなぁ。

 折角俺が十市家の御家騒動に介入してあげたのに、別の家の御家騒動とは…


 さて、俺は京へ帰ろうか!

 ダメ?


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― 新着の感想 ―
[一言] 君が来たから次善の策を遂行したのかと思うけど
[気になる点] >誰やねん、そんな無責任な噂を流した…いや、民部少輔にチクった奴は! >「伊予守(家増)は諦めておらぬぞ。民部少輔(家高)の首を狙っておる(500話)」 十市常陸介意訳「この事を民部少…
[一言] 待て 慌てるな これは 兵部少輔の罠だ
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