497 大和国のゴタゴタ
「四国の事は承知した。兵部少輔殿に力添え致そう」
三好義継は快く協力を約束してくれる。
義継も阿波三好家の切り崩しは望む所だろうしね。
別に四国を治めるのが長宗我部家じゃなきゃいけないって事もないし、協力的なら三好家が阿波一国くらい確保しても良いやん。
「海路の件も力添え致そう。共に協力して阿波讃岐勢に当たろうではないか」
安宅信康も海での協力を快諾してくれる。
一緒に海運業で儲けようね。
海戦が開かれた時は援軍宜しく。
「某も協力致しますぞ!」
松浦光もニコニコと協力を申し出る。
あっ、ハイ。
…何か知らんけど宜しく。
「忝ない」
「その代わりと言ってはなんだが、兵部少輔殿に頼みがあるのだ」
2人とオマケ1に礼を言うと、義継は不穏な言葉を発する。
じゃあ、この話はなかった事に…もう無理か。
「頼みとは如何なものに御座いましょう?」
「霜台(松永久秀)が兵部少輔殿に会いたがっておってな」
「霜台が…」
勘弁してください。
霜台を避けて義継の所へ来たのに、これから霜台に会えってか?
ひょっとして、ただ遠回りしただけ?
「今、大和国では霜台と陽舜坊(筒井順慶)が争っておってな。霜台は国人衆の切り崩しを謀っておるのだが、昨年調略した十市兵部少輔(遠成)が先日亡くなったのだ。御陰で十市家の家中のみならず周りの者達も混乱が収まらぬのだ」
「それは災難でしたな」
十市兵部少輔とは、大和国の有力国人衆の1つである十市家の当主の十市遠勝の事かな?
いや、今年の正月に名前を遠勝から遠成に改めたんだったか。
ああ、確か十市遠成が亡くなるのは永禄十二年十月二十四日…だったはず?
まだ一月も経ってないから、死にたてホヤホヤかぁ。
去年の今頃に霜台に降伏したばかりだったのにな。
御愁傷様です。
「兵部少輔殿には霜台の相談に乗ってやってほしい」
えっ、嫌ですけど!
今は味方だけど将来敵対するかもしれない爆弾正と、今は敵だけど将来味方になるかもしれない洞ヶ峠。
今の時点じゃ、どちらにも味方したくありませんが!
まあ、洞ヶ峠こと筒井順慶が味方になっても、頼りになるかは知らんが。
配下にいるであろう島左近は欲しいけどね。
「承知致した。霜台の許へ向かいましょう。某に出来る事があるとは思えませぬが、霜台の愚痴くらいは聞く事は出来ましょう」
とはいえ、流石に四国の事を頼んでおいて、霜台の許へは行きませんとは言えない。
でも、どっちかに肩入れして、もう片方から恨みを買うのもなぁ。
「忝ない、兵部少輔殿。兵部少輔殿が居れば最早問題は片付いたも同然。霜台も心強かろう」
いやいや、片付く訳ないだろう!
それに大和国のゴタゴタに首を突っ込む気なんか全くないわ!
それに問題を解決してしまうと、霜台に悪巧みを考える余裕を与えてしまう事になる。
相手は戦国三悪人の1人に数えられる、何を仕出かすか分からない様な人だし、自由に行動されるのは怖いからな。
霜台を自由に行動させない為にも、筒井順慶とは戦い続けてもらった方が良い。
なんとか両陣営が消耗してくれる様に立ち回らないとな。




