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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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495 一条邸

 一条内基(うちもと)からの呼び出しに、斎藤外記に連れられて渋々一条邸へと向かう。

 一条邸では外記に内基の相手を任せて俺は地蔵になるつもりだったのだが、余人を交えず二人きりで話をしたいと言われ、外記を控えの間に追い出されてしまった。

 壁役がいなくなってしまったな…


「此度、土佐一条家の左近衛少将が左近衛中将、権中納言となる事となり、その祝いに土佐へ下向をと思うておじゃる」


 ハイハイ、そういう体ですね。

 その後、隠居させてからの出家の流れですね。


「左近衛少将殿が中将に。それは一条家にとっても目出度き御話に御座いますな」


 知らんけど。


「左様、真に目出度き事。左近衛少将は麿の兄が健在であった頃、父の養子となっておじゃる。故に麿の義弟に当たるのじゃが…兄が亡くなり麿が家督を継いで以来、左近衛少将とは些か疎遠となっておじゃってのう。此度の下向で再び縁を結び直さねばと思うての」


「成る程…」


 兼定を廃して代わりにその息子の内政(ただまさ)を立てて、その内政と縁を結び直す訳ですね!

 まあ、その土佐一条家は、長宗我部元親に滅ぼされるんですけど。

 しかし、隠居させられる兼定は納得するかな?

 寧ろ暴れそうではあるが…


「どうやら兵部少輔には此度の目的を知っておる様におじゃるな。しかし、心配は無用。既に土佐一条家の家老達や長宗我部民部少輔(元親)とは話はついておじゃる」


 俺の内心を読んだのか、内基は内情をバラしてくる。

 公家ってこんな時には遠回しに匂わせる様な言い方をしそうだけど、こんな直接的に内情を暴露するなんて意外だな。


「ならば安心に御座いますな」


 でも、公家の内情に深入りするのは怖いからサラッと流させてもらおう。


「実はのう、此度の下向は左近衛少将よりも大切な事があってのう」


 土佐一条家からの上納金とかじゃなくて?

 土佐にある荘園からのアガリを確保するのが第一なんじゃないの?

 だから戦にかまけて金銭を浪費する兼定を当主の座から引きずり下ろしたいんだよね?


「実は土佐一条家は琉球や朝鮮と取り引きがおじゃってな、それもあって九州の者達と婚姻を結んでおるのじゃが、そこは維持したいと思うておじゃる。兵部少輔には期待しておるぞ」


 いや、外部の俺に内部事情を漏らすなよ。

 これ、絶対密貿易だよなぁ。

 内基としては、土佐一条家の存亡なんかより、荘園や密貿易で得られる利益の確保の方が大事だって話だよな?

 で、俺に一条家の利益確保の為に協力しろよって事だよね。

 要するに調子に乗った長宗我部元親に好き勝手やらせない様に手を打てという話でいいのかな?

 実際元親は土佐一条家を滅ぼしている訳だし。

 しかし、何で俺がそんな面倒臭い事をしなくちゃいけないんだよ。


「それは…」


「兵部少輔、最近羽振りが良い様でおじゃるの。確か黄玉と申したか…」


 あっ、俺もトパーズの密貿易してたわ。

 確りバレとるやないかい。

 これは密貿易の件、断れないか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歳の近い、子宝に恵まれない(予定)の摂家とのご縁は「藤原」の森家には役に立つかも? 関白相論へ踏み込む羽目になったらアレですが [一言] よく考えたら兵部殿のステは既に長宗我部元親に勝って…
[一言] ここで屈すると骨の髄までしゃぶられそう 武士はなめられたらおしまいですよ
[一言] >でも、公家の内情に深入りするのは怖いからサラッと流させてもらおう。 斎藤外記が居る分、織田家中では近衛家とのパイプが太い方だし、山科言継は酒を呑みに来るし、三条家には チョイ伝手があり、飛…
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