38 新作
「遠慮はいらんぞ、三右衛門殿!」
「応!」
と応じて、互い槍を交える。
少し暇になったので、家臣を集めて槍の稽古をする。
今いるメンバーは、戸田三郎四郎、稲田梶之助、山内匠作、森小三次のいつものメンバーと新加入の尾藤甚右衛門、ゲストの奥田三右衛門と、堀菊千代の七人だ。
他のメンバーは、親父と一緒に戦に出掛けた。
まあ、武名を上げたいだろうからね。
俺が知行を出しているのは、戸田三郎四郎と尾藤甚右衛門だけだし。
他の奴等が仕官したのは、戸田の領地を貰う前だし…元服したら移籍させないと…
しかし、半端な数だな、分家で乳母子の奴でも呼ぼうか…いや、戸田にいるから呼べないな…
堀菊千代は俺の一歳年下で、、とてもかわいらしい美少年だ。
槍働きの修練も、政務算術も真面目にこなして、流石にチート野郎の名に相応しい子だ。
いつも俺に付いて回り、何でも吸収しようとする姿勢は、見倣わなくてはならないか…
この7人の中で、俺といい勝負が出来るのは、三郎四郎、甚右衛門と三右衛門の年長組だ。
甚右衛門は二十歳を超えているし。
まあ俺は十歳だし、年少組の三人も俺より年上なのだが…
全部で7人いるので、籤で大将を2人決めて、大将がメンバーを交互に指名しながらチームを作って対戦したり、両陣に旗を立てて陣取り合戦をしたりと、遊び要素を入れながら鍛えたりしている。余った1人は審判役だ(主に菊千代)。
だが、やはり格上との稽古がしたいので、親父にだれか適当な人を頼んではいるが、流石に戦時中には来てくれないだろう。
同年代の子らを集めて、大会でも開きたいなぁ。
殿の好きな相撲なら開いてくれそうな気がするが、槍の方はどうだろうか?
多少の小競り合いをしながらも、然したる事もなく過ぎ行き、収穫の秋。
新しく増えた戸田の領地の分もプラスして、収穫量も増えたので、皆の期待に応えて酒造りに廻す。
そして、試行錯誤を繰り返し、一応の完成を見た新作の酒!
そう、味醂である!
この時代、味醂は調味料ではなく酒だ。
戦国時代に中国から入ってきただとか、酒の保存のために焼酎を混ぜただとか諸説あるが、はっきりとしたことは分からない。
だがここで、俺が自作した味醂を殿に献上したならばどうなるか。
信長公記に森可隆が味醂を造り、織田信長に献上したとか書かれて、後の世に『味醂の父』と言われる様になるかもしれない!
別にいらんけど…
酒が苦手の甘党と噂のある殿の胡麻を擂る為の一品です。
胡麻擂りに失敗しても、使い道もたくさんあるしな。
ちなみに大半の焼酎は、甕と木樽を数種類に分けて、熟成中だ。
梅酒も作った方がいいのだろうか?
一部の例外を除いて、酒飲みだらけなので、需要があるかどうか…




