35 人質
森部の戦いが終わり暫くして、堀権之助殿が若者二人連れてやって来た。
脚気が治ったお礼と、堀・奥田両家の従属の仲介を頼みにだ。
親父が、すぐさま清須へと報せを送る。
若者二人は、堀・奥田両家の人質として連れてきたそうだ。
奥田三右衛門政次(15)と堀菊千代(9)、後の天下の三陪臣の一人に数えられる事もある堀直政と、名人久太郎こと堀秀政である。
これは仲良くなっておかねば!
将来、大名になるはずの久太郎は、俺の家臣などにせず、仲良くなった後に殿にパスだ。
ゲームならそんな事はせずに手元に置いておくが、殿の小姓として活躍して出世を目指して欲しい。
秀吉より、こちらに友好的な状態で大名になってください。
俺の目標は天下統一とかではなく、森家の発展と生存だからな。
友好的で有能な同僚は大歓迎だ。
何なら近江で、親父の代わりに宇佐山城に入ってもらえたならば、感謝感激雨霰だ。
さて折角、真宗の僧である権之助殿が来ているのだから、少し一向宗について聞いてみよう。
本来、真宗では王法為本を教えとしているはずが、一向宗徒どもを破門としないのか。
真宗の門徒である我等と、一向衆共などとを同類とされたくはないのだが。
もし一向宗徒と織田とが敵対したならば、顕如様はどうされるのか。
などなど、これから本願寺との関係がどうなるのか知っているので、対一向衆の質問や希望をぶつけていく。
最終的に真宗と一向宗を分裂させられればいいなぁ。
どうせ後々には、顕如派(いや准如派か)と教如派で分裂するのだから、早めてやってもいいよね。
問題は、真宗本願寺派のトップの顕如が、一向宗のトップになってしまう事なのだが…
新宗派で顕如に王法為本の教えに立ち返る様に呼び掛けるのがいいのか、一向宗のトップに反顕如派を据えて搗ち合わせるのがいいのか。
そもそも、敵対しないのが一番楽なのだが。
幾ら考えても、俺が出来る範囲を超えているな。
うん、種を蒔くだけ蒔いて、後は野となれ山となれ。
俺の周囲がマシになればいいなぁ。
その後、堀・奥田両家の従属は成り、三右衛門と菊千代は、そのまま当家で預かる事になった。
年上の三右衛門はともかく、菊千代の面倒は俺が見てやるぜ!
だから将来、森家の事を宜しくお願いします!
奥田家と堀家は、表向きはそのまま美濃側についていて、ここぞという時に寝返ることとなった。
堀家の住む茜部村は、森家の蓮台村の丁度川向うにあるので便利かもしれない。
あっ、前田利家は、史実通りに森部の戦いで活躍し、無事に織田家に戻れたようです。




