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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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290 篠原家からの使者【地図あり】

 利生寺で一息吐いて、仕方なく於勝達の戦果を確かめる。

 何やら大将を討ち取ったらしいからな。

 とは言っても、篠原長房は不在だった訳だし、高砂城を任されていた武将なのだろうが…


「篠原肥前守入道の首に間違い御座いませぬ」


 ほう!篠原肥前守入道!…誰?

 篠原なのだから、長房の一族だよな?

 誰か居たっけ?

 俺は思い出せなかったが、伝内は知っていた。


「おお!岫雲斎の弟に御座いますな!」


 ああ、長房の弟なら、篠原自遁か!

 確か、亡くなった主君の奥さんと密通していたのを長房に咎められて、三好長治に取り入って兄である長房を攻め滅ぼしたんだっけ?

 …こいつ、後々長房を殺してくれるから、生きてた方が良かったんじゃね?

 まあ、殺っちまったもんは仕方ないけど。

 この首、篠原長房に送り返した方が良いのかなぁ?


 於勝は他にも柿原源吾(誰?)とか、合計九人の首を取って来た様だ。

 於勝はもう一人討ち取って切り良く10人にしたかった様だが、初陣としては十分以上の活躍だろう。

 流石に27人を討ち取る事は出来なかったが、兵力差7倍以上の敵を打ち破り、敵の大将や名のある武将の首を取って来たのだから。


「於勝様の初陣は、殿の初陣に勝るとも劣らぬ程の活躍に御座いましたぞ!」


 何故か加藤喜左衛門がドヤ顔で、於勝の活躍を我が事の様に語ってくる。

 ウザい。

 いや、俺の初陣などとは、比ぶべくもなくド派手な活躍だよ。

 俺、戦でそんなにいっぱい敵の首を取った事ないもん…


 九一郎と小次郎も、それぞれ竹田三河守、株之丞とかいう奴の首を取り、十分な戦果を上げているし、もう蓮台に帰ってもいいんじゃない?

 それなのに…


「兄上!早く城を攻めよう。俺と兄上に掛かれば、あの様な城など一溜まりもあるまい!」


 おいおい、於勝ちゃんよ。

 史実よりも脳筋になってるんじゃないだろうな?


「前にも言ったであろう、岫雲斎相手に無駄に兵を失いたくないと。ここで岫雲斎が舟で逃げ出さぬ様に湊を見張っておればよい」


 高砂は海岸線が遠浅で、舟を着けるのには向いておらず、加古川を遡った所に川湊がある。

 舟を使おうと湊で動きがあれば、そこを襲いかかればいい。

 荒井や今市といった川湊へ行くには俺達が邪魔だし、あとの川湊は加古川の対岸にあるので使えない。


「しかし、兄上は早く西へ向かいたいのであろう?何時までも此所に居る訳にもいくまい」


 まあ、そうなんだけど、流石に自分の兵を減らしてまでやりたい作戦かといえば、そうでもない。

 やれるならやりたいって程度だし。


「今少し待っておれ、今に状況が動く」


 於勝が攻めろ攻めろと煩いので、適当な事を言ってお茶を濁しておこう。


「なに?本当か、兄上!」


 知らんよ。

 長房に聞いてくれよ。


 適当な事を言って於勝を黙らせると、今は島田弥右衛門殿の下で働いている同僚の奉行人である落合平兵衛丞殿が、慌ててやって来る。


「傳兵衛殿!」


「如何された、平兵衛丞殿」


「高砂城の岫雲斎殿より和睦の使いが参った!急ぎ弥右衛門殿の許へ来てくだされ!」


 はっ?和睦?なんで?


「承知致した。直ぐに向かいまする」


 慌てて走り去る平兵衛丞殿を見送り、於勝の方を見ると、キラキラした目で俺を見ている。


「兄上が待っておられたのは、この事に御座いますな!」


 そんな訳ないだろ…

 俺は於勝に向かってニヤリと笑みを浮かべると、弥右衛門殿の許へ急いだ。



 弥右衛門殿と別所孫右衛門殿と俺の3人と、篠原家の使者である庄野和泉守とかいう奴の計4人で話し合う。

 こっちがメインで話すのは弥右衛門殿だけど。


「和睦を、との話に御座ったが」


「左様に御座る。当家は高砂城を退去し、阿波へ戻ろうか考えております」


 あれ?阿波へ帰っちゃうんだ。

 城に篭って俺達を足留めしているだけで、援軍としての役割は果たせている気がするけど…摂津衆がいるから、あまり意味がないかもだけど。


「ほう、赤松宗家への後詰めは諦められますか」

 

「我等が高砂城で、貴殿等を足留めしたとて、摂津衆が置塩を攻めるのを防げねば意味がありますまい」


 ですよね~。


「野戦にて我等を打ち破れば、置塩へ向かう事も叶うのでは?」


 孫右衛門殿が和泉守を挑発するが、和泉守は首を横に振る。


「本願寺からの命により、近々英賀が引き上げるとの知らせも御座る。もしその話が真であれば、更に赤松宗家は苦しくなり申す」


 篠原家の撤退の意思は固い様だ。

 しかし、英賀が兵を退くのか…

 河内の実悟殿が頑張ってくれたんだな。

 後でお礼に行かなきゃ。


「何?!」


 事情を知らない孫右衛門殿が、思わず驚きの声を上げる。


「此方に来る前に、傳兵衛殿が本願寺に働きかけたので御座る」


 弥右衛門殿が孫右衛門殿に説明しているが、今まさに篠原家に機密情報が漏れてるんだけど、いいの?

 和泉守の方を窺うと、俺の顔をじっと見ている。


「やはり真の話に御座いましたか…」


 うん?和泉守が洩らした呟きが少し引っ掛かる。

 確信が無かったのに兵を退く気だったのか?

 流石にそれはないだろう。

 信頼できる筋からの情報だったから、撤退しようとしたはず…

 それとも、それは口実で他に撤退したい理由があるのか?

 まあ、別に撤退してくれるなら、理由なんてどうでもいいんだが。



 和泉守との交渉は弥右衛門殿がやってくれるので、暇潰しに篠原家が赤松宗家に勝ち目無しと早々に見切りをつけた以外の理由でも考えてみるか…

 流石に三木家の寝返りが確定してから、阿波へ帰ると思うんだけどな。

 負け戦を経験していない俺の考えなんて、甘過ぎて参考にならんし。


 城の兵糧が尽きそうとかは…ないな。

 別所家に従って出陣中だった梶原家の空き城を奪い取ったんだから、流石に兵糧が空という事はないと思う。

 篠原長房が負傷したとか病気だとかの話も聞かないし。


 後はなんだ?

 将や兵に問題があるんじゃなくて、何か理由があって帰らなきゃならなくなったとか?

 この時代、篠原…三好家に何かあったかなぁ?

 篠原長房…三好長治…三好長逸…三好政勝…三好康長…十河存保…安宅信康………足利義栄?

 あれ?足利義栄って、いつ死んだっけ?

 本圀寺の変の前だから、1568年の…何月?

 足利義栄が死んだって事はあるか…


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 三馬鹿はもう手遅れだと思うけど、脳筋に引き取られた虎の方は大丈夫だろうか。 [一言] 柷300話、更新ありがとうございます。 これからの展開も楽しみにしています。
[良い点] 300回おめでとうございます。 [気になる点] 於勝ちゃんの鬼武蔵街道が止まらない・・足軽50の内何人が無傷で済んだのか心配です。
[一言] 高砂城の梶原氏を調べてると家島、沼島を拠点にしていたようで高砂を含めて線で結ぶと淡路島を囲う形になり、淡路水軍の中核は梶原氏だったのではないかと個人的に思っている。 昔は関東でも水軍を率いて…
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