282 何で播磨に居んねん!
自領から呼び寄せた援軍が揃ったので、兵庫津へ向けて出発する。
兵庫津へ着くと、情報収集させていた本多弥八郎と建部伝内が待っていた。
「早速だが、播磨での戦況は如何なっておる?」
早速、二人に戦況を尋ねると、伝内が渋い顔で答える。
「龍野の赤松下野守殿は、小寺家との戦に敗れ、更に赤松左京大夫に合力する備前の浦上与次郎に攻められて、かなり危うい状況に御座います。ただ、浦上家の重臣である宇喜多三郎右衛門が主家を裏切り、此方に合力した事で与次郎の動きも大分鈍くなっております」
「宇喜多…」
あっ、嫌な名前を聞いて思わず呟いてしまった。
「左様に御座います。宇喜多三郎右衛門は浦上家の重臣で、先頃までは松田家と争っておりましたが、此度の事で急ぎ松田家と和睦、主家を裏切り背後より浦上家を脅かしております」
俺の呟きを聞いて、弥八郎が答えてくれる。
やっぱり、宇喜多直家だよなぁ…
妙覚寺の日典から聞いた、宇喜多家と松田家が和睦したという話は、間違いではなかった訳だ。
宇喜多直家とか、暗殺されそうで関わり合いになりたくないわ。
「ほう、松田家と和睦してか。続けてくれ」
伝内に続きを促す。
「敵方の赤松左京大夫は、備前の浦上与次郎と手を組み、龍野の下野守殿を攻め立てておりましたが、西播磨衆と摂津衆の活躍によって、庄山城を始め、北脇城、高砂城など近隣の城を落とされ、置塩城に篭り防戦一方となっておりました」
した?過去形かよ。
「ふむ、何かあったか」
「はい。先日、別所家に降伏したばかりの高砂城に御座いますが、讃岐の篠原家によって攻め落とされました」
「なんと!」
俺がビックリして目を丸くすると、島田弥右衛門殿も大声で驚く。
はっ?えっ?
何で篠原家が播磨での戦に参戦してんねん!
いやいや、落ち着け、俺。
ここには於勝ちゃんも居るんだ。
焦って無様を晒すな。
弥右衛門殿のリアクションのお陰で、俺の様子は目立ってないはず。
「篠原家は、摂津退去後に高砂へやって来たのか?それとも別の兵を送り込んだのか?」
内心の驚きを隠して、さも平然とした態度で質問を投げ掛けて、心を落ち着かせる為の時間を稼ぐ。
「恐らくは、同じ兵に御座いましょう。岫雲斎自ら率いておる様に御座いますれば」
弥八郎が、伝内に代わって答える。
そうか~篠原長房本人が率いているのか~
それに、長房が瓦林家と戦った時に多少兵が減ったとしても、まだ三千以上の兵が残っているんだよなぁ~
もっと減っている可能性はあるけど。
兵三千が守る城なんて、俺の兵だけじゃ攻略出来ないな。
「高砂城の城主は如何した?」
「篠原家の兵が高砂城へ攻め寄せた時、城主の梶原平三兵衛は、別所家に従い小寺家の御着城を攻める途上におりました。高砂城が篠原家に攻められたと知り、急ぎ引き返し一戦行いましたが敗れ、行方が知れませぬ」
うわぁ…可哀相に…
別所家に降伏して、小寺家を攻める為に出陣したら、留守にした城を篠原長房に攻められて、慌てて引き返し戦ったら負けて行方不明とか…
でも、お陰で何とか落ち着いてきた。
「して、岫雲斎の動きは?」
「先日までは高砂城に居りましたが、今どうしておるかまでは…一応高砂城は、彦市に見張らせております」
う~ん、ここに居ても仕方ないし、敵の近くに行かない事には始まらないしなぁ。
「弥右衛門殿、別所家との話は…」
「高砂城へ入る事になっておったのだが…」
弥右衛門殿も予定が狂って困っている。
「それにつきましては、高砂城の手前にある尾上城へ入れるよう、伝内殿が別所家に話を付けて御座います」
おお!さすがは伝内!仕事が早い!
取り敢えず尾上城に入って続報を待ちますか。




