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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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275 また民部少輔殿が慌ててる

 九月上旬…

 織田軍が攻めている南伊勢の大河内城は、まだ落ちていない。

 でも、そう遠くない内に決着するんじゃないかな?

 播磨を攻める摂津衆も順調に赤松宗家の城を落としているそうだ。


 俺はというと、相も変わらず花押を書く毎日。

 う~ん、物足りない様な…

 いかん、いかん!俺の目的は、自分と親父が討ち死にするのを防ぐ事!

 自ら危険に飛び込んでどうする!

 この年始の六条合戦は、仕方なく参戦したが、もうあんな戦いは二度と御免だ!

 それを物足りないなどと考えるだなんて、大分周りの脳筋共に毒されてきている。

 ここいらで意識を修正しておかないと、史実通りに手筒山城の戦いで深入りして討ち死になんて事になりかねない。


 調子に乗って敵に突っ込まない!苦戦は避ける!強敵は他に押し付ける!楽して出世する!

 三日月よ!降り掛かる七難八苦は、全て山中鹿介へ与え給え!

 本人も欲しがっております!


 山内次郎右衛門が、今年出来上がった茶器を美濃の久々利から運んできてくれたので、その出来映えを皆で鑑賞したり、茶会を開いたりしながら過ごしていると、「傳兵衛殿!」と大きな声が外から聞こえてきて、慌てた様子の村井民部少輔殿がやって来る。

 民部少輔殿が慌ててやって来るとは、敵でもやって来たのかな?

 ちょっとワクワクしながら、民部少輔殿を招き入れる。



「如何なされた、民部少輔殿」


「瓦林城の三河守より、阿波篠原家の岫雲斎怒朴(篠原長房)が、摂津国武庫郡へ攻め込んで来たとの知らせが御座った。越水城を落とし、今は瓦林城を攻めておる。至急、後詰めを送らねばならぬ」


 は?

 今、摂津衆の主力は播磨にいるから、本拠の摂津はがら空きじゃね?

 流石に、がら空きは言い過ぎか…

 しかし…よく落ちるなぁ、越水城。


「して、敵の数は?」


「凡そ三千五百」


「ほう…ならば、慌てる事もありますまい」


 う~ん、これは摂津の領地を奪還出来る様な数じゃないよなぁ。

 となると、今播磨へ出張中の摂津衆への嫌がらせか。

 赤松宗家への援護射撃という事だろうな。

 播磨で赤松宗家を攻めている摂津衆を、本拠の摂津を荒らしまくる事で、退却させたいのだろう。


 でも、全軍で播磨へ向かった訳でもないだろうし、自分達でどうにか出来るんじゃないの?

 最悪、瓦林城が落ちて瓦林三河守が討ち死にしても構わないだろうし。


 それとも、京まで攻め込まれない様に、俺に京への入り口を固めてくれって話かな?


「殿より、傳兵衛殿は兵を率いて瓦林城の敵に当たれ、との事に御座る」


 あれ?瓦林城まで出張るの?


「京が手薄になりますが、宜しいので?」


「幕臣の方々がおられる。それに近江衆が周囲を固める事になっておる」


「此方の兵力は?」


「河内、和泉より畠山左衛門督殿、百五十。三好左京大夫殿、百。松永霜台殿、三百。松浦(まつら)孫八郎殿、百五十。他、摂津衆三千が取り急ぎ出陣致す」


 うん、少なくね?

 敵は三千五百で、味方は京にいる森家の兵三百を加えても四千…


「後程、後詰めを送られるのでありましょうか?些か数が少ないかと…」


 取り急ぎという事は、準備が整い次第、増援を送るという事なんだろうが。


「無論、後詰めを送るまでの間、敵を封じ込めてもらえれば良い」


「承知致しました」


 おお、良かった~。

 此方の援軍が到着すれば、阿波勢は恐らく越水城へ篭るだろうし、越水城に篭る敵を、ほぼ同数の兵で落としてこい、とか言われてるのかと疑ってしまったよ。

 篠原長房も馬鹿ではないから、後詰めが来る前に逃げるかもしれないけどな。


「傳兵衛殿には与力として、赤座七郎右衛門、助六郎、坂井与右衛門、それに大石弾正左衛門を付ける。あと、島田弥右衛門(秀順)と共に尼崎へ向かって頂く」


 うん?尼崎へ行って、後詰めを待つだけなのに、そんなに与力を付けるの?

 しかも、島田弥右衛門殿と一緒に?

 何か怪しくない?


「与力が多う御座いますな。それに弥右衛門殿と共にとは?」


 怪訝な表情で民部少輔に問う。


「傳兵衛殿には、摂津が落ち着き次第、弥右衛門と共に播磨へ向かってもらいたい」


 はぁ?


「播磨に御座いますか?」


「うむ。傳兵衛殿も御存知だとは思うが、摂津へ攻めこんだ岫雲斎怒朴のお陰で、播磨での摂津衆の動きに楔が打ち込まれた訳だが、それとは別に龍野の赤松下野守殿が小寺家に二度戦を仕掛け、二度とも退けられたのだ」


 それは知ってる。

 赤松政秀が、小寺家に挑んで2回とも負けたって…青山・土器山の戦いだったよな。

 政秀は、黒田官兵衛に奇襲を受けて、負けたはずだ。


「下野守殿が危ういと?」


「赤松左京大夫方の援軍である浦上家によって、大分領地を奪われておる。このまま何もせねば、持ち堪える事は出来まい」


 そこは、史実通りの展開なのは変わらないか…


「承知致しました。美濃におる某の兵も呼び寄せた方が宜しいか?」


「叶うならば、その方が宜しかろう」


 この戦いは、俺の知識に無いから、どれだけ危険があるかも分からんし、ちょっとでも戦力は増やしていかないとな。

 それに、美濃で留守番させている家臣達のストレス発散にもなるし。


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― 新着の感想 ―
山中幸盛「他人の七難八苦なぞ御免被る」
[一言] 上月城に助けに行くことになるフラグかな?(大分先です)
[一言] すっかり世紀末の世界にそまっててわろた。 北斗のBGMが頭の中で流れてそう
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