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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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255 上洛土産

 一応今回の戦の論功行賞が終わり、一旦殿の前を辞したが、まだ用事が残っていたので、もう一度御目通りを願う。


「傳兵衛、岩倉の山本家の話だそうだな。奴らは三好家に合力して、京を焼き払ったとか」


「はっ、大樹様は大層お怒りで、攻め滅ぼせとの仰せに御座いますが、洛北衆より寛容な沙汰をと」


 山本家を赦して貰える様に願い出るが、殿は渋い顔をする。


「大樹様を裏切り、危険に晒したのだ。潰されて当然であろう」


 まあ、そうだよね。


「洛北の他三家は皆、山本佐渡守の娘と婚姻を結んでおり、結束が固う御座います。また、吉田右兵衛督殿とも縁があり、右兵衛督殿からも何卒との事に御座いまする。もし洛北四家を攻めれば、また洛中を戦火に見舞わせる事となります。しかし今ならば恩を売り、従わせる事も出来ましょう」


 何とか食い下がってみるが…駄目ですか?


「佐渡守には嫡男の他に、家を継げる者は居るのか?」


「はっ、嫡男の若狭守には子の修理大夫が居りますし、監物と云う弟も居りまする」


「…良かろう。山本家は安堵する。但し、家督は弟の監物に継がせる事とせよ。佐渡守は頭を丸め、嫡男は廃嫡とする事で、大樹様に御赦し頂くよう申し上げる」


 殿は少し考えられてから、OKを出してくれる。


「有難う御座いまする」


 やったね!義昭の説得は殿に任せた!


 さて、殿へ話も終わった事だし…於勝の相手でもするか。

 敵と戦えなくて拗ねているからな。

 俺達がもっと苦戦すると思っていたんだろうが、甘かったな。


 於勝達は、もう京に居る意味もないので、蓮台に返す事になるのだが、このまま尾張へ返そうとしても、駄々を捏ねてうるさいだろうから、何かプレゼントでもして気を逸らすかな。



 宿にしている寺に戻ると、於勝が俺に飛びかかる勢いでやって来る。


「兄上!何でも近々洛北の者共を成敗に向かうという話を耳にしたぞ!」


 戦が出来るかもしれないと、ワクワクしている様だが、残念だな。


「その話は無くなったぞ」


「はぁ?」


「その家の当主は隠居し、嫡男は廃嫡する事で話は付いた」


 俺がそう言うと、於勝のみならず、後で聞いていた九一郞と小次郎までが、ショックを受けていた。


 打ち拉がれる3人を無視し、小姓の孫平次に声をかけてから寺の宿坊へ戻る。


「俺の初陣は、どうなる?!」


 尚も追い縋る於勝…やっぱりしつこいなぁ。


「諦めよ。此度はもう、お主の出番などないわ。大人しく蓮台へ戻れ」


 俺がそう言うと、3人はますます肩を落とす。


「そう、悄気るな。まだ年も明けたばかりだ。次の機会など直ぐにやって来よう」


「本当か!次は必ず初陣を飾らせてもらえるのか!」


 いや、初陣を飾れるかなど知らんよ。

 俺じゃなくて、親父に頼めよ。

 この話題を突っ込まれても困るので、話を変えよう。


「ただまあ、折角上洛したのに何の手土産も持たさず返すのも何だ。お主等に土産を用意した。持って帰るが良い」


 そう言うと九一郞と小次郎に、先程殿の所からの帰り道に買い求めた脇差しを渡す。


「無銘だが、物は良い」


 九一郞が大喜びで受け取り、小次郎も嬉しそうな顔を見せる。


「有難う御座いまする!」


「大切に使わせて頂きます」


 うんうん、刀を与えておけば、不満も収まるだろう。


「兄上、俺には?」


「お主の物は今、孫平次に取りに行かせておる。暫し待て」


 自分は貰えないのかと不安になっている於勝に待つように言うと、直ぐに孫平次が脇差しを持ってやって来る。


「おお!有難う兄上!」


 於勝は自分も脇差しを貰えて喜んでいる。


「山本佐渡守より頂戴した了戒の逸品だ」


「おお!大切に致します、兄上!」


 喜んで貰えて良かった良かった。

 銘入りの脇差しを渡すのは惜しいが、可愛い弟達の為ならば致し方ない。

 …太刀の方はやらんけどな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 於勝殿に孫平次殿、、、この世界では、おせん殿はどうなるのだろうか、、、
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