245 援軍到着
薬師寺貞春を討ち、本国寺に戻って入江家との約束を果たす。
後は、平内の頑張り次第だ。
是非とも良い結果を勝ち取ってもらって、森家派閥に加わってもらいたいものだ。
しかし、津田左馬丞が討ち死にしてしまうとは…
津田左馬丞…後の津田盛月は、権六殿の家臣と揉めて、兄で織田家重臣の中川八郎右衛門殿の追放を招いてしまう問題児だ。
それに後に藤吉郎の家臣にもなっている。
どうしたものかと悩んでいたのだが…
討ち死にしたと聞いた時には、笑いを堪えるのが大変だった。
自ら手を下す事なく、恨みも買わずに、将来の敵(?)を排除出来た訳だからな。
肩が震えていたかもしれんが、他の奴等にバレてないよな。
本国寺に戻り、明智光秀と話した後、足利義昭と対面する。
義昭は、薬師寺貞春を討ち取った事を大層喜んで、感状をよこしてきた。
感状…渡す方は字を書くだけで、お金がかからない便利なご褒美。
貰った方は、名誉が与えられ、再就職が便利になる。
俺にとっては、名誉も然程もいらないし、再就職する気もないので、ただの紙切れだが…
まあ、後世になったら歴史的価値は出そうだし、義昭の機嫌を損ねるのもなんだから、有り難そうに貰っておくけど。
入江平内も、義昭の機嫌の良い時に話しかけたからか、色好い返事を貰ったみたいで、平内に感謝された。
感謝大事!俺への感謝の心を忘れないようにな!
その後も、三好家は攻めてきたが、光秀率いる鉄砲隊によって撃退されている。
流石は鉄砲の腕前は一流だな。
大軍を相手に善戦するものだから、籠城している俺達の士気は結構髙い。
そのせいで、足利義昭が調子に乗って敵と斬り合いをしようとするのを皆で必死に止めたりもしたが…
義昭の気を逸らす為に、再び本国寺の僧を派遣して時間を稼ぐ事を提案する。
これ以上戦闘されては、寺が破壊されて堪らんから、義昭には他所へ移ってもらうので、時間を下さいと…
本当に堪らんだろうから、凄く熱心に交渉してくれるだろう。
まあ、三好家にとって僧との交渉は鬱陶しいだけだし、無視されるんじゃないかとは思うけどね。
織田家の活躍、光秀の大筒、本国寺の僧の必死の訴えにより、何とか日没を迎える事が出来た。
日没になると三好家は兵を退いたので、一旦戦は終了する。
夜、篝火を大量に焚き、見張りを立たせて、夜襲をしても無駄だと、三好家に教える。
この夜を凌げば、流石に援軍がやって来るだろう。
夜半、遂に南近江からの援軍が、続々と姿を現す。
山岡家など南近江の国人衆、その数、1500…少ない…
ちょっと心許ないな。
朝になったら増えている事を祈る。
朝になると、更に近江から、朽木家や蒲生家からの援軍も到着する。
それが理由ではないだろうが、三好家は本国寺の包囲を解く。
恐らく、摂津などからも援軍がやって来たのであろう。
挟み撃ちされる事を避けて、先に西からの援軍を対処する事に決めたか。
暫くすると、援軍からの伝令が飛び込んでくる。
「三好左京大夫様、御討ち死に!池田筑後守様は、戦わず兵を退かれました!細川兵部大輔様は行方知れずと!」
おお!池田勝正よ!戦わずに兵を退くとは何事だ!
兵部大輔殿も無事なら良いが…多分だが、生きてはいるだろう。
でも、あれ?桂川の戦いって、こんな負け戦だったかな?
暫くすると、別の伝令が飛び込んでくる。
「伊丹大和守様より、三好家と桂川河畔にて交戦中!」
どうやら伊丹親興の兵が桂川を渡り、三好家の背後を突く事に成功したみたいだ。
それから、三好義継の討ち死には誤報だと知らされる。
細川兵部大輔殿が無事かどうかは、まだ分からない。
…池田勝正の撤退は本当なのか。
ただ、池田勝正は退いたが、池田清貧斎や荒木村重などの家臣団は、まだ残って戦っているらしい。
「急ぎ仕度をせよ!三好家を追撃する!」
伊丹家からの伝令の報告に、大将の野村越中守が皆に追撃を命じると、幕臣も急いで仕度を始める。
俺の兵も、素早く戦仕度を整え、寺を飛び出し桂川へ進軍する。




