表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
228/554

220 香炉

 妹弟達の所に顔を出してから、金山城を後にする。

 爺ちゃんの話では、特に問題も起こっていない様なので、護衛に多羅尾彦市と小姓連中を連れて、久々利に陶工の様子を見に行く。


 先ずは、加藤兄弟の次男の五郎左衛門の

 窯へ行き、出来た茶碗を見せてもらう。

 うん、よく出来てるんじゃないだろうか…知らんけど。


 残る加藤兄弟(瀬戸に残った長男を除いた3人)の窯も回り、それぞれの窯で出来た茶器や花器、香炉など計12点を受け取る。

 自分用に使う物と、プレゼン用に配る物だ。

 4兄弟の茶碗を、俺が1つずつキープするとして、残り8つ。

 殿と親父、千宗易、松永久秀、それに共同出資者の妻木源二郎殿の5人に渡すとして、残り3つはどうしょうかな?


 さて、皆がウチの茶器を気に入ってくれると嬉しいが、茶器はまだまだ唐物が最上級の時代。

 早く唐物から国産に切り替わってくれればいいのだが。



 手に入れたばかりの茶器や香炉を持って、殿のいる岐阜城へと向かう。

 殿には出来上がった茶碗の中で、2番目に良いと思った物を献上しよう。

 1番良い物は、少しでも良い評価がもらえる様に、千宗易に送りつけるつもりだ。

 因みに、俺が自分用に確保した物は4番目だ。

 後からもっと良い物が出来るだろうし。



 城へ向かい、殿への取次ぎを頼むと、いつもなら堀菊千代が出てくる所だが、知らない若者が現れる。

 美少年といっても差し支えない端正な顔立ちの若者だ。

 多分年齢的に、殿の小姓だろうな。


「森傳兵衛殿に御座いますな?某、坂井久蔵と申します」


「お主が久蔵殿か!」


 おお!コイツが坂井久蔵か!

 成る程…殿に気に入られて、これから出世しそうな面構えだな…討ち死にしなければな。


「此度の婚礼の事、骨折り感謝致します」


 久蔵が頭を下げてくるが、突っ掛かっていたのはウチの親父の方だからなぁ。

 しかし、久蔵の方から頭を下げてくるとは、性格も悪くはなさそうだな。

 俺との相性が悪いという訳でもなさそうか…坂井家との仲が悪かったのは、やっぱり親父のせいかな?


「何、其方の御父上の御陰に御座る。森家一同、大変感謝していたと、御父上にお伝えしていただきたい」


 せっかく坂井家と縁が出来るのだから、仲良くしていきたいよね。


「ところで、堀久太郎は如何した?」


 何時もなら久太郎が真っ先に俺の相手をするんだが、出てこないとなると何処かへ出掛けているのかな?


「久太郎殿は、今は殿の命にて京に残っております」


 京に残って仕事をしてたのか…まあ、その為に元服させたんだろうしな。

 頑張って実績を残して、何れ大名にまで出世してもらいたいものだ。


 雑談しならがら久蔵に、殿の元へと案内される。



 殿の周りには小姓連中がいるが、他にも見知らぬ男が控えている。

 武人には見えないので文化人なのかな?

 うん、全く見た事のない人物だな。


「傳兵衛、陶器を持参したとの事だが?」


 殿の言葉に、持ってきた茶碗、花入れ、香炉を差し出す。


「窯を開かせたばかりですが、中々の出来ではないかと。これからの向上も見込めます」


 俺は目利きなんて出来ないが、職人は超一流だから、なんとか良い評価を下さい。

 殿は、茶碗を手に取り眺めている。


「ふむ、良い出来ではないか?隆勝は、如何思う?」


 殿は、側に控えている隆勝という人物に話を振る。

 隆勝は俺の持ってきた香炉を眺めながら、答える。


「ほう、美濃で作られた物に御座いますな。良い出来に御座います」


 そうそう、良い作品なんです。

 それが分かる隆勝さんとやらは出来る人だな。


「うむ、隆勝が良いと言うのならば、間違いはあるまい」


 ほう、流石は隆勝殿だな…で?高名な人なの?


「傳兵衛。この者は建部隆勝と申して、香道の大家よ。この者が、太鼓判を押すならば間違いはあるまい」


 殿の紹介に誰だったかなと思い出そうとする。

 建部隆勝…近江の香道家だったな。

 観音寺城の戦いの後で、織田家に降ったのだろうな。


「傳兵衛殿の話は、よく聞いております。織田家中でも名うての数寄者だとか」


 俺って数寄者で通ってるんだろうか?


「数寄者とは畏れ多い。ただの未熟者に御座います」


「傳兵衛殿は、香を聞かぬのですかな?」


 香道はやらないのかって事だよなぁ。

 茶室に香を焚いたりするので、覚えた方がいいんだろうけど…

 どうせなら三道(華道、茶道、香道or書道)を極めてみようかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 220話で多羅尾彦市が市彦になってます。
[一言] 傳兵衛殿は文化人というか、文化の持つ価値がわかる方ですぞ…… 一を知って十をなす奇才ですが…
[気になる点] 勝家も認める怖い顔の傳兵衛の妹を美少年の嫁に!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ