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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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217 蒲生家からの納品

 遂に足利義昭が無事に将軍宣下を受け、室町幕府の第十四代征夷大将軍となってしまった。

 義栄くんは、将軍になれず残念でした。


 近隣各地の有力者が、新将軍に挨拶する為に上洛しているが、俺には関係ない話だ。

 俺はというと、六角義治の話し相手になったり、松永久秀主宰の茶会に参加したり、蜂屋兵庫頭殿と歌会に参加したりと遊び…人脈の構築作業に忙しい。

 …史実の佐久間信栄の様に、悪評が立たない様には気を付けているので大丈夫だと思うが。



 将軍宣下の儀式も無事に終わったが、史実通りに殿は、義昭からの管領、副将軍就任の打診を断って美濃へ戻られる。

 それらの職を辞退した代わりと言っては何だが、畠山家の許可を貰って尾張守に任じられてはいたが。

 備後守よりそっちの方が良いのか、さっそく尾張守を名乗っておられた。


 ついでと言ってはなんだが、佐久間半羽介殿も正六位下行右衛門少尉に任じられた。

 流石は筆頭家老…じゃないな、林佐渡守殿がいたわ。


 まだ、三好家が完全に駆逐された訳ではないので、佐久間右衛門尉殿を筆頭に、柴田権六殿、坂井右近将監殿、蜂屋兵庫頭殿と親父の五人が京に残り、政務を担当する事となっている。


 親父は京に残るが、俺は殿が美濃へ戻るのに合わせて、一度美濃金山城へ向かう事になった。


 親父が京に残る為、俺が親父の代わりに美濃の家族や家臣達に色々報告したりしなければならないし、久々利で茶器の出来を確認したりもしないとな。

 勿論、伊勢の領地の開拓とかもしたいのだが、そちらは家臣に任せようかな。


 後、平野右京進は京に残して、親父の手伝いと情報収集をさせよう。


 因みに今回の上洛での織田家臣団への報酬は、予想通り金や太刀などの物品や感状などで、土地は貰えなかった。

 まあ、織田家の土地が大幅に増えた訳ではないので仕方ないね。


 しかし俺は北伊勢攻略時、家臣への報酬を一気には増やさずに(それでも段違いに増やしているが)、少し余裕を残して与えていたので、その貯蓄分を今回家臣の昇給に回してやる事が出来る。

 他家が俸給を出し渋っているのに(予想)、俺は家臣達に十分な俸給を払うのだから、忠誠心アップは間違いない…はず。



 皆が美濃へ戻る支度に忙しい中、俺に来客があった。


「殿、蒲生家の鶴千代様が、殿に御会いしたいと」


 六角義治に押し付けられた家臣の木村又蔵正勝が、蒲生鶴千代がやって来たと知らせてくれる。


「直ぐに御通しせよ」


 いざ俺が美濃へ戻る段階になって、鶴千代君が会いに来るなんて、何かあったのかな?


「日野筒を納めに来られたのでしょう」


 不思議に思ったのが表情に出ていたのか、奥田三右衛門が答える。

 ああ、そういえば鉄砲を頼んでたな。



 直ぐにやって来たのは、鶴千代君と他2人。

 確かに鉄砲も持って来ているな。

 その鉄砲を又蔵が受け取っている。


「鶴千代殿の後ろに控えておる者は誰だ?」


 三右衛門に小声で尋ねると、1人は町野左近という者らしい。

 鶴千代君の傅役らしく、俺は知らなかったが、この前にも来ていたそうだ。

 鶴千代君の傅役ということは、後に3万8千石を与えられる町野繁仍の事だろうな。

 織田家の人質となった時、一緒に岐阜へ行ったらしいから間違い無いだろう。

 もう1人の事は、全く知らないらしいが。



「よく参られた、鶴千代殿」


「お久し振りに御座います」


 鶴千代君が、挨拶してくれるが…うん、半月前に会ったばかりだけどな。


「御父上に代わり、日野筒を納めに参られたか?知らせを下されば、此方から受け取りに参ったものを」


「いえ、それは(ついで)に御座います。実は先日に聞きそびれた、傳兵衛殿の武勇伝を是非とも御聞かせ頂きたく、日野筒の納品に託つけて推参致しました。それと…」


 鶴千代君は、後ろで控えている男の片方に目配せする。


「元六角家家臣、横山喜内と申します。此からの事を蒲生左兵衛大夫殿に相談した所、傳兵衛様が家臣を探しておられると聞き、罷り越しました。どうか御召し抱え頂けますよう、御頼み申し上げまする」


 横山喜内と名乗る男が頭を下げる。

 横山喜内…確か蒲生頼郷の元の名前だったよな?

 六角家没落後、蒲生氏郷に仕えて、蒲生姓を与えられた武将。

 頼郷は、蒲生氏郷の初陣にも参加していたともいわれ、後に1万3千石の知行を得る氏郷の古参家臣なのだが、そんな有能武将を俺に渡していいのかな?

 まあ、蒲生家がそんな話を知らないのは間違いないが…もっとショボイ、無名の武将をくれるのかと思っていた。


「おお、良き方を紹介して頂き感謝致す。しかし某の見た所、この喜内殿は大身と成りうる相が見えるが、当家が召し抱えて本当に宜しいのか?」


 取り敢えず喜内に高い評価を与えて、好感度を稼いでおこう。

 喜内もちょっとニヤついている。


「某の家臣にとの話もあったのですが、やはり約束通り、良き者を傳兵衛殿へと」


 つまり、蒲生家に就職が内定していたけど、俺の方へ回したと。

 う~ん、有能な武将だし、有り難く召し抱えさせてもらうか。

 断るのも勿体無いし、蒲生家とも仲良くなりたいしね。



 あと、鶴千代君は俺の武勇伝を聞きたいらしいけど、俺は初陣してから此の方あんまり大将首を取ってないんだよなぁ…

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませて頂いています。 [一言] 「佐久間半羽助」とありますが、一般的には「佐久間半羽介」じゃないでしょうか?
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