22 初陣?
服部党は、船から降りて、大した抵抗のないまま熱田に近づいている。
このまま引き付け熱田との戦闘が始まった後、攻撃を加える訳だが、戦闘が始まったら、指揮官のいそうな場所へ突撃するのが俺たちの役目だ。
別に倒す必要はない。混乱させられればいいのだ。
さすがに十人程度で突撃する訳もなく、仁右衛門が加藤図書助殿の兵を借りて帰って来たので一緒に突撃することになる。
戦闘が始まると、兵に命令を出していそうな偉そうな奴を探す。
別に服部友貞である必要はないのだが、というか、退却の命令を出せる人は残しておかないと散って野盗になられても困る。
いよいよ初陣(?)か。ワクワクするね。
こんな気持ちになるとは、親父の英才教育に毒されてたか。もう、この時代の人間なんだなと実感する。
「始まりましたな。では、そろそろ参りましょうか」
稲田太郎左衛門が、突撃を促してくる。
それに静かに頷くと、
「突撃!」
短く号令を掛け、指揮官のいそうな場所へ突撃を開始する。
お付きの熱田衆に、それっぽい場所に向かって突撃を命じると、その後ろに付いて馬を駆る。
まず、熱田衆と安食弥太郎、兼松又四郎、加藤喜左衛門が敵に向かって突撃して行く。
って、おい!何で三人も一緒に突撃してんねん!
一番槍じゃないんだから、それほど張り切らなくてもええねんで?
まあいいや。
露払いは熱田衆その他に任せて、その横をすり抜け、まだ混乱していたであろう偉そうな奴に向かって、馬上からの高さを利用して、おもいっきり振り上げた槍を首筋に振り下ろした。
物語の様に名乗りをあげたりはしない。
時代遅れだし、何より今回の目的は、銭を稼ぐことと、初陣死亡フラグをへし折ること。
わざわざ自身を必要以上に危険に晒したりはしないぞ。
なるべく大物狙いで、だが無理はせずに命を大事に。
なんか物凄く軽かったような気がするが、相手はそのまま地面に叩きつけられて動かなくなった。
周りを見渡すと、加藤喜左衛門、安食弥太郎、兼松又四郎の三人は熱田衆と一緒になって槍を振るっているが、稲田太郎左衛門、山田八郎右衛門、増田仁右衛門、堀尾茂助は俺の周りを固めている。
又四郎が初陣で張り切っているのはわかるが、喜左衛門と弥太郎も一緒になって槍を振るってないで、俺の護衛につきなさいな、武功が欲しいのはわかるけど。
山内匠作と森小三次も、突撃しようとしてないで俺の側にいなさい、お前らにはまだ早い。人の事は言えないが。
稲田梶之助は、今、俺が倒した奴の首を取っている。
刀でザクザク頸を切り取っている。正直気持ち悪い。
ありがとう、でもちょっと、気持ち悪いから見せなくていいよ。
興奮しながら見せに来てくれるが、あまり見たくはないのよ、そんな爺さんの首…って、結構なお歳の方なのね。
そんな年齢で、なんで戦場に出てきたの?
取り敢えず年齢的なことからも、、服部左京進ではなさそうだ。
小太郎の手柄にするために戦に参戦させた爺さん、ごめんなさい。(本当は京か長島辺りにいるんじゃないかな?)




