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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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210 セールスマン宗智

 ちょっと寄り道をしてしまったので、少し急いで京へ戻る。

 親父の逗留する寺に入ると、親父からすぐに顔を出すようにとの呼び出しを受けた。

 親父に見せようと買ったばかりの鉄砲を持って向かうと、親父の他にも数人の客が来ていた。


「おお!傳兵衛、戻ったか。遅かったな」


 親父ではなく権六殿に迎えられる。


「傳兵衛殿、摂津での御活躍は伺っておりますぞ」


 あれ?神戸蔵人大夫殿もいるのか。


「活躍と言われる程のものでは御座いませぬが、有り難う御座います」


 御礼を言いつつ室内を見渡すと、蔵人大夫殿の他にも客人が来ていた。

 権六殿がいるのはデフォとして、蔵人大夫殿と知らないオッサンが2人に子供が1人。


「傳兵衛、此方は蒲生左兵衛大夫殿と御父上の快幹軒宗智殿。それに左兵衛大夫殿の御嫡男の鶴千代殿だ」


 おお!蒲生賢秀と…快幹軒宗智?

 父親なら蒲生定秀かな?

 ちっこいのは蒲生氏郷だな!

 一緒にいる神戸蔵人大夫殿と蒲生賢秀は義理の兄弟だったな。

 蒲生賢秀は近江の有力者で、本能寺の変後も明智方には付かず、織田家を守っている。

 ここにはいないが弟の青地茂綱は、親父と共に志賀の陣で討ち死にしている。

 俺の蒲生家への好感度は高い…今、初めて会ったんだけど…


「御初に御目にかかります。三左衛門が嫡男、傳兵衛に御座る」


 蒲生家の三人には印象が良い様に丁寧に接する。

 俺も良い時に帰ってきたな。

 お陰で顔を繋ぐことが出来た。

 話を聞くと、この鶴千代君を人質として殿に差し出す事になったそうだ。

 この後に殿と会った鶴千代君は、殿に気に入られて娘婿になるんだね。

 うん、出世街道驀地(まっしぐら)だな。

 これを期に、是非とも鶴千代君と仲良くなっておきたい。


 しかし鶴千代君は、殿に気に入られて、直ぐに娘婿になるんだよなぁ…

 俺の結婚ってどうなってるんだろう。

 上洛を果たしたのだから、そろそろ決まってもいいんじゃない?

 焦りは無いけど、なにかしら問題でもあるのか不安になる。

 この時代なら、もう俺は結婚してもおかしくない歳だよね。



「ところで傳兵衛殿、その鉄砲は?」


 と、宗智殿が質問してくる。

 宗智殿は、俺が親父に見せようと持ってきて、そのまま脇に置いてあった鉄砲を見ていた。


「堺にて買い求めた物に御座います」


「ほう、傳兵衛殿は鉄砲にも興味がおありか?」


 正直に答えると、左兵衛大夫殿も話に乗ってきた。


「既に戦でも使われております故、ある程度数を揃え、修練せねばなりますまい」


「とかく若い者は槍働きのみに目を向けるもの。いや、若いのに新しい武器を採り入れようとするとは感心な事だ。鶴千代、お主も傳兵衛殿を見習う様にな」


 左兵衛大夫殿が俺を誉めてくれる。

 一瞬、皮肉かな?とも思ったが、どうやら本当に俺が鉄砲に興味を持っている事を感心してくれているみたいだ。

 なんか鶴千代君は、とばっちりを受けた様で申し訳ない。


「まだまだ若輩者故、御指導の程、宜しく御願い致しまする」


 素直に頭を下げておこう。


「ところで傳兵衛殿、堺で鉄砲を買い求められたと?」


 うん?宗智殿は何が言いたいのかな?


「はっ、それが如何致しましたか?」


 何だ?

 流石に鉄砲を寄越せとか言わないだろうし。


「実は儂も以前より領内にて鉄砲を作らせておってな。傳兵衛殿は鉄砲に興味がある御様子。どうかな?日野の鉄砲も試してみる気は御座らぬか?決して日野筒は堺筒にも負けぬと自負しておるのだが」


 宗智殿が、ずずいと身を乗り出してくる。

 セールスかよ!!

 いや、性能があまり変わらんのなら、近い方が輸送費が安くて助かるけどよ!


「興味は御座いますが、何分堺にて中筒を買うたばかり。まだ家臣にも、ろくに鉄砲を扱える者が居りませぬ。扱える者が居らねば、宝の持ち腐れに御座いましょう」


 鉄砲を買って欲しければ、人材も一緒に売ってくれないと困りますなぁ。


「此度の戦で当家を頼って来た者がおります。その者の中には、鉄砲を扱える者が居るやも知れませぬな」


 お?本当に誰か紹介してくれるのかな?

 でも俺の家臣となる条件は厳しいぜ!


「恥ずかしながら某は未々小身故、高名な方々を召し抱える事は叶いませぬ…」


 そう!有能な上、格安!

 俺が一万貫以上の知行を得ているのに、小身だと言っているのを他の奴等に聞かれたら、ぶっ殺されるかも知れないが…

 だが、甲賀でも人探しを頼んでいるので、本当に出せる知行に余裕がない。


「中々に難しい事を申されますな…」


 宗智殿も流石に困ってるな。

 安月給で働いてくれる有能な人物なんているかな?


「では、堺筒と同じく五丁、日野筒を頂きましょう」

 宗智殿が迷ってる間に、さっさと商品購入を決めてしまう。

 もう、鉄砲買う約束したから、良い人材を宜しくお願いします!

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