209 堺で買い物
三好家の討伐が終わり、代わりの幕臣がやって来た為、俺達は城や津を明け渡して帰路に就く。
だが、折角摂津へとやって来たので、少し寄り道して堺の町へ行ってみたい。
堺の町は摂津と和泉の境目にあるけど…
ウチの最強の飛び道具だった大島鵜八を殿に取られたので、代わりといっては何だが、鉄砲を買っておきたいのだ。
鵜八の代わりとなる人材が見つかればいいのだが、まあ難しいだろうし、鉄砲でも無いよりはマシだろうと。
堀尾茂助、増田仁右衛門等の元服前からの気心の知れたメンバーを引き連れ、堺へと向かう。
橘屋という商人を訪ねて、鉄砲五丁と弾薬を買い付ける。
取り敢えず一丁は、その場で受け取り、残りは後日、水沢城へ持ってきてもらう事になった。
早速試し撃ちさせてもらおう!
だいたい50m程離れた場所にある標的目掛けて撃つ。
5発撃って2発の命中。
うん、こんなものなのかな…
俺も銃の事なんて詳しくないが、ライフリングもされていない鉄砲で、真っ直ぐ目標を撃ち抜くなんて至難の技なのだろう。
弾もまん丸で形が違うし…
勿論、俺はライフリングなんて教えて、鉄砲の性能向上に寄与しようなんて、これっぽっちも思わない。
だって、それで俺が狙われたら敵わんし、於勝ちゃんの死因も鉄砲による狙撃なので、鉄砲の改良なんて冗談じゃない。
取り敢えず家臣にも撃たせてみようと、先ずは堀尾茂助に鉄砲を撃たせる。
5発中5発の命中。
流石は史実でも鉄砲隊を率いていた茂助、鉄砲はこいつに持たせるのが良いだろう。
折角だし、もっと鉄砲の数を増やして鉄砲隊でも作るか。
ちなみに、他の者にも撃たせてみたが、最も命中数が少なかったのは、俺だった…
これは、銃の性能だけじゃなくて、俺に才能が無い可能性が大いに…いや、微レ存…
堺でやりたい事の2番目、千利休…今は千宗易か…を訪ねる事。
森可隆のエピソードと言えば、宗易からの茶匙を送ると書かれた手紙と言っても過言ではない。
宗易に会いたいのは、そのエピソードがあるからではないけどね。
俺が久々利の領地で作らせている茶器の売り込みが一番の理由だ。
宗易の仕事は、茶道具の仲介業。
是非ともウチの茶器を高値で売買してもらいたい。
残念ながら宗易は留守だったので、家人に名前と用件を伝えるだけになった。
今度、久々利の茶器を持って来るので、良い評価を下さいね。
まあ、向こうも茶人とはいえ商人でもあるのだから、折角の織田家との伝手だし連絡くらいくれるだろう。
欲を言えば、他の商人達とも顔を繋いでおきたかったが、今回は時間が無いので次の機会まで我慢しよう。
それにこの時期、堺にはキリスト教の宣教師ルイス・フロイスがいたと思う。
織田家の家臣が堺に来ているとフロイスの耳に入る前に、さっさと町から退散したい。
キリスト教自体に思うところはないが、政治的に巻き込まれたくない。
いつか出会うにしても、上の方針が固まってからにしたいね。
他にも、三河一向一揆の時にスカウトせずにスルーしていた伊奈忠次が、親戚を頼って堺にいるはずだが…
あれから3年、もう土木技術は身につけただろうか?
…流石にまだ無理かなぁ。
徳川家に仕官するのが、長篠の戦いの時に陣借した後だから、まだ8年あるな。
長篠の戦いがあるかどうかは知らんが…
よし、もう少し育ててから収穫しよう。




