204 吹田の戦い
三好家って戦わずに四国へ逃げ出すんとちゃうん?
「おお!殿の言われた通り、三好家との大戦に御座いますな!」
「近江では六角家が逃げ腰にて、あまり槍働きが出来ませなんだが、漸く存分に暴れられますな!」
「流石は殿!今まで兵を温存しておられたのは、この為に御座いますな!」
ウチの脳筋共が、三好家との決戦を前にテンションが上がっている。
「…っ、此処が我等の武勇の見せ所ぞ!存分に敵を蹴散らしてくれるわ!」
内心の動揺を表に出さず、さも予想通りという態度で家臣の殺ル気を煽る。
仕方ない、皆が戦うのに、俺だけ様子見という訳にもいかないしなぁ。
敵のいる吹田城へ向けて兵を進めるか。
吹田城付近にて敵軍と対峙する。
中央に殿や佐久間半羽介殿、西美濃三人衆などが率いる本陣の兵が一万。
左翼に和田紀伊守殿や細川兵部大輔殿を始めとする幕臣や足利家に付いた茨木氏や郡氏などの摂津の国人衆に、松平信一率いる徳川軍等、六千。
そして右翼には親父、権六殿、右近将監殿、兵庫頭殿の四人組(当然俺も)等、四千。
合計、約二万。
対する三好軍の兵数は、中央に三好三人衆の三好長逸や釣竿斎宗渭の六千、右翼に篠原長房の三千、そして俺達と対峙することになる左翼の池田勝正率いる五千の合計約一万四千。
四千対五千か…数の上では少し不利だな。
敵左翼の池田勝正といえば、後に織田家に降伏するが、その力を評価されて摂津三守護筆頭となる実力者。
その後、家臣に裏切られて追放されるけどね…
その配下には、荒木村重や中川清秀など有名人もいるので手強い…かもしれない。
でも和田さん、ここで勝てれば、摂津三守護の筆頭になれるかもしれないよ?
この戦いに策は無い。
調略をしている時間は無かったし、何より俺の知る歴史には無かった戦いなので、どうなるか分からんし…
親父や権六殿に合わせて戦ってればいいんじゃない?
まあ、家臣に任せておけば大丈夫だろう。
親父や権六殿の兵が勝つまで粘っていれば良いだけだろ。
でも、ウチもいつまでも内蔵助(斎藤利三)頼りは不味いかもな…
活躍の舞台も広がる事だし、経験豊富な内蔵助と内匠助(曽根昌世)は控えに回して、他の奴等だけで戦わせてみよう。
そろそろ古参には、指揮も頑張ってもらわないとな。
両軍が突撃すると、ほぼ互角の戦いとなる。
特に俺のいる右翼は、敵に比べて兵数は少ないが、親父や権六殿のお陰で拮抗している。
う~ん、一進一退の攻防とか嫌だなぁ。
もっと楽に戦いたい…
「安田主税之助殿、堀田新右衛門殿、負傷!」
ウチの家臣で初めての負傷者が出たなぁ。
いくら脳筋共が多いとはいえ、腕前には差があるから仕方ないね。
でも、このまま殴りあっていたら、数人ポックリ逝きそうだし、そろそろ打開したい所だな。
しっかし、左翼の幕臣共、頑張れよ~。
お前らは敵の倍の兵力があるんだからさ~。
お前らが敵を潰せば、戦いは終わったも同然なんだから。
「天野加兵衛殿、渡辺新左衛門殿、撤退!森甚之助殿、負傷!」
あれ?被害が大きくない?
しかもマイナー武将から潰されてる。
ウチの兵の被害が大きくても、右翼の働きには大した影響は無いだろうし、親父や権六殿が強いだけで俺だけが押されてる訳でもないが、強力武将を揃えたつもりの俺の家臣達が、その他大勢と同じにされるのは面白くないな。
「少々被害が大きゅう御座いますな」
軍師として側に控えている林助蔵も同じ事を思っている様だな。
「助蔵、一度仕切り直した方が良いか…」
「承知致しました。内蔵助殿、内匠助殿に敵を受け止めさせ、その間に」
一旦、斎藤内蔵助と曽根内匠助に敵を止めてもらって、その間に修正しよう。
二人が敵兵に横槍を入れている間に体勢を立て直す。
う~ん、攻めた方がいいのかなぁ?
家臣に活躍してもらって、箔を付けてもらいたかったのだが、仕方ない。
とは言え俺も、今まで大規模な戦いをした事ってあったっけ?
稲葉山城の戦いでは、別行動してたし…
強いて言うなら郡上郡の畑佐での戦いだが、あれは最初から戦う気が無かったからなぁ。
やはりここは、周りを気にせずガンガン攻めた方がマシかな。
どうやら敵の方が一枚上手みたいだし、周りに合わせても足を引っ張りそうな感じがする。
ガンガン攻めて親父や権六殿についていけるくらいかな?
一息吐いて内蔵助と内匠助の兵を見ると、頑張って支えてくれている。
流石は経験豊富だなぁ、俺も勉強しないとな。
反省も終わったし、そろそろ代わってあげないとな。




