202 芥川城陥落
前半部分が200話と重複していたので削除し、後半に文章を追加しました。
8/7 18:00
何とか小笠原長時を挑発しまくって小笠原軍を釣り出し、殲滅する事に成功する。
小笠原家の旗を射抜いて怒らせれば、プライドが高いらしい小笠原長時の事、こちらの旗か射手の大島鵜八を攻撃するんじゃないかと思い実行させたのだが、まさか本当に旗を射抜きにくるとは…お陰で鵜八は楽々、隙だらけの小笠原長時を射殺す事が出来た。
ついでに、小笠原長時がウチの旗目掛けて射かけてきた矢を、俺が槍で叩き落とす事が出来たのだが、これは完全に長時の腕のお陰だった。
流石は小笠原長時、正確に旗の中央を射抜きに来た。
長時の腕前が並みだったら、意味もなく空振りした上に旗を射抜かれ、恥ずかしい思いをする所だったが、名人級の腕前のお陰でなんとか打ち払う事が出来た。
射るタイミングと飛んで来る場所が分かれば、多分槍を当てる事は出来るとは思ったのだが、空振りせずに済んで良かったよ。
「流石は鵜八!日の本一の弓の名手よ!見事、小笠原信濃守を射抜いた!」
大声で鵜八の功績を誉めそやす。
よし、これで小笠原家の敵意は、命じた俺ではなく、射殺した鵜八に向かうだろう。
生き残りが復讐するにしても、小笠原流弓術は鵜八の弓の腕に負けた、と喧伝しておけば、俺より先に鵜八を狙うだろうし。
軍勢同士が干戈を交える前に長時が死んだせいで、小笠原軍は大混乱となった。
その混乱を見逃すような親父達ではなく、すかさず敵軍に攻め込み暴れ回る。
小笠原軍は完膚なきまでに粉砕され、長時の弟や息子達も皆、討ち取る事が出来た。
長時の長男の長隆は親父が、三男の貞慶は坂井右近将監殿が、弟の貞種は柴田権六殿が討ち取っている。
次弟の信定は、尾藤源内が説得して降伏させたようだ。
小笠原家の処理をしている間に、芥川城の城主である三好長逸は逃げ去ってしまったが、城を手に入れられたのだから構わないだろう。
この芥川城は三好家の重要拠点の一つで、この城を手に入れた事は大きい。
ここから先は、三好家の残党との戦があったとは聞いた事がないので、あっても小規模なものしかないだろう。
もう、俺のお仕事は終わったも同然!
多少は目立つ事も出来たし、後の残党狩りは脳筋共に任せて、のんびり寛ごうか。
「さて、この後だが、殿の居られる普門寺城へ向かおうと思うが、異論は御座らぬな?」
権六殿が、皆の顔を見回して確認を取る。
正直、もう十分働いたから、暫くのんびりしようよ、とか思っているが、勿論表情には出したりしない。
何せ、親父を始め、全員がまだまだヤル気を漲らせ頷いている。
こんな中で、俺はやりません!などと言えるはずもない。
「では、急ぎ普門寺城へ向かう事とする。で、この芥川城に残る者だが…」
奪った城をそのままには出来ないので、誰かが留守番をしなければならないのだが…と、そこで権六殿と目が合う。
お前、残ってくれるよな?と威圧するような眼光が突き刺さる。
正直、ちょっと怖いぞ…
でもこれは、俺に芥川城へ残れという事だな!
望むところだ!
睨み付ける権六殿に、ぎこちなく笑みを返す。
ちょっと表情が引き攣っているのは勘弁してほしいな。
だって権六殿の眼光が鋭くて、睨み付けられたら流石に怖いし…
権六殿は、一瞬ビクッとすると、表情を和らげる。
「傳兵衛、分かったから、そう怒るな。芥川城には、儂の弟の源吾を置く」
うん?俺、怒ってないよ?
喜んで留守番するよ?
「では、急ぎ普門寺城へ向かうとしよう」
その後、芥川城は権六殿の弟である源吾殿に任せ、我々は織田家本隊がいるはずの普門寺城へと向かう事になった。




