198 勝龍寺城の戦い
「傳兵衛様、六角や三好と戦う事となると思い、気合いを入れておりましたが、敵は逃げるばかりで、あまり面白くは御座いませぬな…」
「左様、張り合いが御座らぬ」
可児才蔵と加治田新助が、物凄く退屈気に話し掛けてくる。
まあ、気持ちは分かるが、気を抜かずに頑張ってくれ。
「次の勝龍寺城では、今少し楽しめよう。くれぐれも油断せぬ様にな」
渡辺半蔵が、二人に釘を刺してくれる。
勝龍寺城の攻略は、殿の本隊が来るまで待ってればいいだけでいい…のかな?
一年早くなってるし、周りの状況も違うし、勝龍寺城に篭っているはずの石成友通は大和国にいる為に不在だし。
取り敢えず、最初は籠城せずに野戦からだったはず…石成友通が不在だから、どうなるか知らんけど。
「半蔵!間もなく敵が出てこよう。暴れ足りぬ者共を率いて噛み潰しに行くぞ!才蔵!新助!勝龍寺城の城主が降伏させてくれと頼み込む程の恐怖を味合わせてやれ!」
脳筋共のストレス解消の場面、半蔵に皆の用意をさせるように指示を出す。
「承知!行くぞ才蔵!新助!皆を呼んで参れ!やっと我等の出番ぞ!」
半蔵等は喜色を浮かべ、早速脳筋共のケツを叩きに行った。
まあ、それは良いとして、一応それ以外の者の意見も聞いておこうか。
「弥八郎、助蔵、お主等なら如何する?」
頭脳担当(?)である本多弥八郎と林助蔵に尋ねる。
「大殿の本隊を待つべきに御座いましょう。無理に攻めて被害を出す事も御座いませぬ」
「弥八郎殿に同意に御座います。手柄は籠城前に野戦の成果で充分に御座いましょう」
まあ、そうだよな…俺も同意見だし。
「内匠助、摂津に物見を出せ。この城が落ちれば、恐らく次は高槻城、普賢寺城、芥川城の何れかであろう。誰が城に入っておるかが分かれば尚良い」
「はっ、承知致しました!」
本隊が来るまで此処から動けそうにないなら、次の目標に対しての情報収集をやってしまおう。
物見を曽根内匠助に命じる。
真田昌幸と共に、武田信玄に両眼と言われる武将だし、何とかしてくれるだろう。
織田方が城に近づくと、勝龍寺城も足軽を出して応戦してくる。
「城主は出ておるか?」
「生憎、城外には見当たりませぬな」
側にいた本多弥八郎に尋ねるが、残念ながら城主は城に篭っている様で、大将首を狙う事は無理みたいだ。
石成友通の代わりに誰が守っているかは知らんが…
仕方ない、さっさと足軽共を蹴散らして勝龍寺城を追い込むとしよう。
「内蔵助!将右衛門!雑魚共を一気に蹴散らせ!一人でも多く討ち取り、主税助に我等の力を示せ!」
「「応!」」
斎藤内蔵助と前野将右衛門に敵の殲滅を命じると、俺も敵に向かって突撃を開始する。
史実通りに足軽同士の戦いから始まった勝龍寺城の戦い。
史実では凡そ五十の首を討ち取ったのだが、八十以上の首を討ち取る成果を上げる事に成功する。
この足軽の損害と直ぐ近くまで織田の本隊が迫っている事で、城主は城外退去を条件に城を明け渡し、摂津の方へ落ち延びていった。
少々呆気ないなぁ。
…あれ?俺ってこの上洛戦で全然槍働きで目立ってなくない?
槍を振るったのも、この戦いと先程の久我だけだし、しかも足軽相手とか…
もうちょっと、活躍しておいた方がいいんじゃないのかな?




