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討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
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197 京の都をスルーして【地図あり】

 報告を聞いた殿は、直ちに軍を進めるよう指示を出す。

 翌日には琵琶湖を渡り、三井寺に本陣を置き、先手は山科に布陣した。

 その際、舟の手配を見事にこなした元六角家重臣の進藤賢盛は、殿から褒美を貰っていた。

 しかし、足利義昭が来るまでには、まだ時間がかかる。

 だが、それを待っていては、折角大和で足止めを喰らっている三好軍が、戻って来てしまうだろう。

 観音寺城攻めが何の活躍の場もなくあっさりと終わってしまい、欲求不満な脳筋共のストレス解消の場が欲しいところなので、森家的には三好軍に戻って来てもらっても全然構わない。

 布施山城を攻めていた俺の家臣達も、石部郷を攻めていた別働隊も欲求不満が溜まっている様だからな。

 どちらも攻略には成功しているが、三雲家の途中参戦で活躍の場を奪われたと愚痴をこぼしているので、早く次の戦場を用意してやらないと…


 山科に陣を敷き終えると、早速評定が行われる事となった。

 親父もいるし、松永側の情報は松永久秀の家臣である四手井左衛門尉が参加しているのだが、一応俺も出席する。


「権六!三左!兵庫!右近!大和より戻った釣竿斎宗渭(三好政康、政勝)が、西京に陣を敷いたと知らせがあった。お主等は先発し釣竿斎の軍に当たれ。左馬頭様が御越しになるまで儂が着く前に打ち破れたならば、そのまま南の勝龍寺城を攻め落とせ!」


「「「「承知!」」」」


 勝龍寺城攻めは、史実通り親父と柴田権六勝家殿、蜂屋兵庫助頼隆殿、坂井右近将監政尚殿の四人。

 この辺は、史実とあまり変わってないな。



「半羽介!長門!お主等は淀城を攻め落とせ!」


「「はっ、承知致しました!」」


 佐久間半羽介殿と岩室長門守殿が松永久秀の援軍に出るようだ。


「左馬頭様の許しは得ておる故、紀伊殿にも出ていただく」


「はっ、お任せ下され」


 和田紀伊守殿は、織田家家臣ではなく幕臣なのだが、半羽介殿等と淀城へ出陣するようだ。


 当然、俺は親父と共に三好軍が展開する西京へ向かう。

 京で足利義昭を待って留守番とか、公家相手におじゃるおじゃるとか聞くのは勘弁だ。



 山科から鴨川を渡り、南下して東寺に陣を敷き、桂川を挟んで三好軍と対峙する…

 俺の感覚からすれば京都の町を通り抜けてる気がしないでもないが、この時代は洛中には入っていない様だ。

 まあ、公家の屋敷は北側の上京に集中しているので、商区である南側の下京も構わないのかもしれない。


 そんな事より兵数は、此方の総数6000に対して、相手の釣竿斎の兵数は1500と、4倍の兵力差がある。

 攻城戦なら兎も角、野戦なので数で押し切るのが正解だろう。

 相手の戦意も、思ったほど高くはない。

 ここは、何もしなくても楽勝で勝てるだろう。


 森軍、柴田軍、坂井・蜂屋軍の三隊に分かれて桂川を渡り、敵軍目掛けて襲いかかる。

 数時間後、予想通り楽勝で食い荒らすことに成功する。

 しかし、釣竿斎も時間稼ぎが目的だったのか、難なく逃げおおせた様だ。


 本命の戦いは、次の勝竜寺城攻めだ。

 だが史実通りではなく、石成友通は留守で代わりの者が守っているそうだ。

 石成友通は、松永久秀の作戦通りに大和で戦っていて、帰って来る事が出来なかった様だな。

 釣竿斎の時間稼ぎが効いているかは、微妙な所だな。

 史実では、二日間籠城した後、殿の援軍がやって来て開城するのだが、そのまま何もせずにいて良いかな。

 無理に攻城戦をして被害を出す事もないし。


挿絵(By みてみん)

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