20 増やしすぎた
屋敷に帰ると直ぐ、親父から呼び出しを受けたので、急いで会いにいく。
部屋には、親父と家臣の長田又左衛門の他に、数人の男がいた。
「父上、只今戻りました。御呼びと聞伺いましたが」
取り敢えず要件を先に聞いておこう。
「まずはこちら、堀尾中務丞殿だ。此度、我が家を頼って来てくださった」
40代くらいの男が頭を下げ、
「堀尾中務丞泰晴にございます。これにおりますは、兄の民部少輔泰次、弟の修理亮方泰、嫡男の茂助吉晴にございます。此度は、我等の仕官のお誘い誠に忝なく」
守護代の家老から牢人への転落人生だからな、頑張って欲しい。
あとは、子供が二人。
「山内但馬守盛豊が四男、匠作にございます」
あれ?一豊じゃなくて康豊なのか。康豊は織田への仕官を拒んで転々としていたって話があったけど。
「ご家族は如何された?」
「兄は、美濃へと向かいました。他の者も兄に同行しております」
もう、尾張を出た後か。残念だな。
「匠作殿は、当家への仕官よろしいのか?」
すると、少し目を伏せて、
「正直、織田家には多少思うところがございますが、三左衛門様、小太郎様には、戦の前より色々と気にかけて頂きました。某は、小太郎様との歳も近く、ご恩に報いよと兄や母からも言われております。どうか宜しくお願い致します」
手紙作戦は、無駄ではなかったということか。一豊とも、縁を持てたということで。
「最後に、遠縁の者から小太郎と歳の近い者を寄越させた。おぬしに付ける」
最後に、康豊と同じくらいの歳の少年が頭を下げる。
「小三次と申します、宜しくお願い致します」
知らないな、誰だろ?無名の人かな?
年が明けると、柴田権六様の紹介で、安孫子右京進忠頼という人がやって来た。本当に誰だよ。
加藤清正の叔父の喜左衛門清重は、昨年の秋頃にやって来ている。
取り敢えず、もう人数は増やさない!
その後皆が退出した後、話があるからと、親父と二人きりになる。
「些か人を増やし過ぎた。おぬしのお陰で収入も増えたが、それでも多すぎる。なんとか致せ」
丸投げかよ。だが仕方ない、塩水選で米の収穫を増やし、椎茸と酒で儲けたから、余裕があったが、やはり新しい事を考えなければ。
手っ取り早く儲かるものがないかな?
保留していた石鹸を販売する事にするが、あんまり売れないような気がする。
洗濯板をセット販売してみようか。主婦に大人気にならないかな。
なんかいけそうな気がしないでもないような、そんな気がする。
醤油は、どうしようか?溜まりはあるから、要らないと云えば要らないような。
豆腐は、寺で作っているだろうし。
すぐに金になりそうな物は、何かないか。
でも、やっぱり酒が売れるんだろうな。
焼酎にチャレンジしてみようか。
もう九州では、造られていたっけ?
洗濯板がまあまあヒットした。少しは儲けたけど、すぐにコピーされてしまうのだろうな。
次はいよいよ、桶狭間の戦いだ。
余計なことをしなければ、歴史通り勝てるだろう。
戦局を左右するような人物は引き抜いていないはず。
後に話が伝わっているのは、兼松又四郎と安食弥太郎くらいだろうか、安孫子右京進もいた可能性もあるかもしれないが活躍はしていないはず。
親父は参加して、生き残るのはわかっているから、基本放置でいいよね。
と、なんだかんだで、永禄三年五月(1560年6月)、いよいよ今川義元がやって来る。




