表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討ち死になんて勘弁な  作者: 悠夜
191/554

184 飛翔の地

 永禄十年四月十五日(1567年5月23日)、遂に上洛に向けて南近江へと侵攻する。

 殿は何度も六角家に上洛の協力を求めたが、仮病で使者に会うことすらしなかったので、()む無しだ。

 主力の殿や親父、佐久間半羽介殿、柴田権六殿、徳川家康から派遣された松平信一、浅井長政らが北近江から集結中である。

 当然、俺も親父と共に軍勢を率いて、近江の佐和山城へと入っている。



幾度(いくど)も六角承禎に上洛の助力を願ったが、素気無(そっけな)く断られた。この上は、一刻も早く六角家を下し、左馬頭様を京へ御連れする」


 殿の言葉に、評定に参加している諸将も頷く。


「現在、六角承禎は観音寺城に篭っておりますが、十六ある支城の内、和田山城に兵を集めております。ここを攻めている間に他の城より援軍を出し挟撃するのではないかと思われまする」


 六角家との境付近に領地を持つ浅井軍の高野瀬秀隆という人が、情報を仕入れているのか皆に説明している。


態々(わざわざ)相手の思惑に付き合う事もありますまい。全軍をもって観音寺城を包囲致せば良かろうかと思います」


「それでは此方の被害も大きくなりましょう。此処は和田山、箕作両城を落とした後、観音寺城を攻めた方が宜しいかと存じまする」


 柴田権六殿が支城を無視して観音寺城の包囲を進言すれば、木下藤吉郎が観音寺城に近い支城を先に潰してからの方が良いと反論する。

 このまま放置すれば藤吉郎の作戦が採用されるのだろう。

 藤吉郎が、志賀の陣までに宇佐山城城主になれるかというと正直難しいが、城主候補が沢山いれば、別の誰かが城主となる可能性もあるので、ここは介入せずに藤吉郎の作戦が採用されるようにする。


 果たして、藤吉郎の作戦が採用されて、和田山城を西美濃三人衆が率いる美濃勢が、箕作城は、殿や藤吉郎、佐久間半羽介殿、岩室長門守殿、丹羽五郎左衛門殿、松平信一などが担当する。

 我等森軍は権六殿と共に観音寺城に当たり、援軍を阻止する事となった。

 まあ、長門守殿が生き残っているせいで多少参戦武将が変わったりしているが、概ね史実通りの配置だな。

 あと変わった所があるとすれば、北伊勢の三七様の兵が鈴鹿山脈を越えて、甲賀郡に攻め込む事か。

 勿論、三七様は名目だけで、実際に兵を率いるのは関安芸守殿だが。

 折角、山脈の反対側を調略したのだから、有効に使ってもらわないとな。

 此処が今の時代の琵琶湖か~、感慨深いものがあるなぁ。

 昔、テレビで見た光景とは違うが、あの場所に立っているのだなぁ。


「傳兵衛様は淡海が好きなのですか」


 感慨深げに琵琶湖を眺めていると、谷野大膳がやってくる。


「ああ、この場所より湖を眺めていると、大空へ飛び立ちたくならないか?」


「空に御座いますか?」


 大膳は首を捻っているが、まあ思わないんだろう。


「まあ、よい。大膳、如何であったか?」


「はっ、あまり芳しくは御座いませぬ」


 以前、近江の六角家に仕えていた家に養子に入っていた大膳に、近江の武将を幾人か勧誘してもらったのだが、やはり無理があったか。

 大体思い付く武将が北近江の浅井長政の家臣なので、無理だろうなとは思っていたが、身分の低い者なら何とかならないかなと頼んだのだが…無理か~。


「田中宗政という者は、現在宮部継潤に仕えており気に入られておる様子。調略は難しゅうございますな」


 やっぱり浅井から奪うのは無謀だったよね~。

「小堀正次なる者も磯野丹波守に仕えておるようで、叶いませんでした」


 出家してからの仕官だから、まだ磯野員昌に仕官していないかもと思ったが、駄目だった様だ。


「同様に渡辺、片桐、大谷、石田、藤堂の五家も断られまして御座います。石田家に関しては、子が三人おりましたので頼みましたが、以前に1人亡くしておるようで渋られました」


 うわ~、全滅ですか~。

 後に吉政を名乗る田中宗政、小堀遠州の父である正次、渡辺了の父の右京、片桐且元の父の直貞、大谷吉継の父である吉房、石田三成の父である正継、藤堂高虎の父である虎高。


「うむ、禍根の残らぬ様に取り計らってくれ。それと石田家には、何かあれば必ず戻すと約束して頼み込んでみてくれ。浅井家の家臣には織田家に反目する者も多い故、少しでも縁を結びたいなどと訴えてもよいかもしれぬ」


「はっ、承知致しました」


 駄目ならいいや、仕方ない。

 今後の為に、顔を繋いだと思っておこう。


「ただ、藤堂源助殿は次男ならば、殿に預けても良いと…」


 へ?藤堂源助って藤堂虎高だよな。

 その次男ってことは…藤堂高虎?! よし、召し抱えるに決まってるでしょ!

 高虎が貧乏国人の次男でよかった!裕福だったら、嫡男のスペアとして手放さなかったかもしれない。


「よし、その者を召し抱えよう!まだ幼ければ、小姓としても良い。必ず連れて参れ!」


 キャッホー、胸のドキドキが止まらんね!


「それとお探しの栗太郡長束村の長束、若しくは水口盛里なる者に御座いますが、残念ながら留守に御座いました。家の者に言付けを頼みました故、戦が終われば知らせがありましょう」


 う~ん、流石に浪人なら今回の戦に参戦しているよな。

 まあ、戦が終わった後に、もう一度チャレンジするか。


「それと、甲賀の多羅尾四郎兵衛殿より、上洛がなれば次男を仕えさせると約束を取り付けました」


 よし!甲賀忍者との伝手をゲットしたぜ!!

 これで甲賀衆を使って、俺が知っているこれから起こるはずの戦の裏付けが素早く出来る…よね?

鳥人間コンテスト会場

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] よっし、高虎が仲間になりそう、他にも誰か来てくれるかもしれません。 [一言] 戦国版鳥人間コンテストやってくれたら面白そうです(笑) 結果が良くない場合は大殿からの罰ゲームで皆頑張ると思い…
[良い点] 高虎GETかな?嫡男戦死の前のこの時期じゃないと仕官しなさそうだったから、かなり嬉しい。傳兵衛の気持ちがわかる。 ちゃんと評価して褒めて?目をかければ有能な家臣として仕えてくれるはず。※傳…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ